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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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そうだ! プレイヤーキラーを狩ろう!!

 ヴァルゴは船内を駆けていた。船内に飛び交う魔法弾。それら全てを回避していた。


「アシリア。少しスピード上げます」


 ヴァルゴの腕の中で縮こまってるアシリア。彼女はお姫様抱っこされていた。しっかりとヴァルゴにしがみつく。


「お、お願いします......」


 床を蹴り、光速で上がる走り。床を、壁を、天井を、縦横無尽に船内を駆け回る。


 二人を襲うのはPK集団。一人、二人と増え続ける黒ローブの集団。数分で40人近く集まっていた。

 アシリアは少し開いた瞼で前を見る。前方に見える夜空とガラス張りの壁。他に道はない。完全な行き止まりだった。だが、アシリアは直感した。自分を運んでいる女の行動を———


 慌てるアシリア。


「ま、待ってください!?!?!」


 更に加速する。


「遅いです」


 ヴァルゴはガラスを割り、外へ跳んだ。



 満月を背に、宙を舞う悪魔。着地したのは船首デッキ。


「ぞろぞろと......ずいぶん暇な方々のようですね」


 デッキに居た人々は逃げ惑い、代わりに静かに侵入してきた集団。


「聖女を殺して、意味があるのですか? こんな虫も殺せぬ()を」


 アシリアを下ろし、ヴァルゴは剣を抜く。


 集団の頭たる存在の男が現れた。


「資料にあった......サタン、でしたか」


 一切の乱れのない黒髪は固めているプレイヤー:サタン。


「こちらもクエスト(仕事)なので」


 爽やかな声で笑うプレイヤー:サタン。


「初めて名を聞いた時は耳を疑いましたよ」


 歪んだ笑みを浮かべるヴァルゴ。


「アイツも舐められているな、と」


()()()?」


「お前たち旅人がお熱の悪魔の事情。気にしないでくれ」


「情報では、貴方も悪魔でしたね」


「『元』ですが。それが?」


 プレイヤー:サタンが手を伸ばす。


「聖女を見逃す代わりに、僕の悪魔になれ」


「え、無理」


 予想はしていたが、即答には少し動揺していたプレイヤー:サタン。


「生憎、私はお嬢様の永遠の悪魔。お前如きに仕える必要性も費やす時間も見出せない」


 優に百を超える【断抹魔(だんまつま)】のプレイヤー。全員が武器を構えていた。


「この数、勝てると思うなよ」


 怪しい笑顔。大気を震わせる濃密な黒くて赤い威圧。


「勝てますよ......ですが」


 上を見るヴァルゴ。喜んでいた。


「お早いですね!」


 月明かりに照らされた獣。口から放たれた台風。巻き込まれ、散っていくプレイヤー。


『ベス!』


 魔術本から召喚された厄災。煉獄猟犬戦争【魔術本:No.3】。地獄の番犬、ケルベロス。全てを焼き尽くす黒き炎は3頭から発射されたものだった。プレイヤーは焼かれ断末魔が夜を奏でる。


 降り立った獣は雄々しく、敵へ鋭い眼光を放つフェンリルとケルベロス。


 ウルウルから降りると、ヴァルゴが跪いていた。


「お待ちしておりました......」


 タウロスに耐久値全快してもらった品々を装備。ウルウルでグロッキー状態のタウロスを船首の床に下ろした。


「だらしないですよ、タウロス」


 ヴァルゴが倒れ込んでいるタウロスを叱る。


「気分......悪い」


「後ろでアシリアを守りなさい」


「それくらい、お安いご用......うぅ......吐きそう!」


 炎神の星槌(ヒノカグツチ)を持つタウロス。顔は今だに青白しかった。


「ウルウル、ベス。タウロスと一緒にアシリアを守ってね!」


 遠吠えが鳴る。雄叫びを上げる2匹の獣。向かう敵を惨殺する準備は出来ている。


 星刻の錫杖を装備。満月の下、より一層輝きを魅せる。


「君だけ星霊も、聖女も独占。目障りなんだよ!!」


 本音を漏らすプレイヤー:サタン。


「上手くいかないから八つ当たりはやめてくれない」


 怒り始めるプレイヤー:サタン。


「じゃあ、証明してよ......星霊って、強い奴に靡くの。お前たちが私を倒せば、好感度上がるんじゃない」


 星刻の錫杖をプレイヤーたちに向けた。


「雑魚に構っているほど、暇じゃないのよ」


断抹魔(だんまつま)】のプレイヤーたちは口を開くのをやめた。代わりに各々武器を再び持ち構えた。私とヴァルゴに狙いを定めていた。


「私は、更に上を目指してるのよ。平凡、眼中なし!」


「行け! お前ら! コイツらを殺せ!!」


「お嬢様、行きます!」


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