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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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ゲーム、しましょうか!

 スコーピオンは手摺りに体を預けていた。中間層は吹き抜け構造となっているので上下階層の景色が見える。


「ハァ〜 思い出したら、気持ち悪くなったわ」


 吐きそう......


 先週、ユミナが作った、魚介とホイップクリームが融合したクリーム入りシュークリームを食べて死ぬ思いをしたばかりだ。強烈な生臭さと甘さの合わせ技。女王として君臨していた時や星霊として活動していた時、長く生きてきたが、未開の味だった。研究者として研究材料にする好奇心はあったが、あまりに刺激的な味で研究は断念してしまった。


「癒されるわね〜」


 スコーピオンは周囲の人々を()()()()


「......私に何かご用かしら?」


 後ろを振り向くと一人の男が立っていた。ポンチョを着た愉快な顔をしていた。

 名は、フーセッツ。PKギルド【断抹魔(だんまつま)】に所属するプレイヤー。


 ニヤつきながら喋り始めるフーセッツ。


「いや〜〜オレは運が良いぜ〜〜〜!」


「豪華な客船に乗れたことかしら」


貴女(アンタ)に会えたことだよ」


「初対面でいきなりナンパ? 身なりを整えてから出直したら?」


「アンタ程じゃないぜ。少し前まで奴隷だった分際じゃねぇか〜」



 スコーピオンはため息を吐く。


「そう言えば、そんな時期もあったかしら。生憎ここ1ヶ月ほど刺激的な毎日を送ってたから記憶から消えていたわ」


ユミナ(あんな女)よりも俺の方が、もっと刺激的な日常を贈らせてヤるぜ」



「............ヘェ〜」


 目がまったく笑っていないスコーピオンが口を開く。


「わーい。嬉しいわー......ここじゃ周りの迷惑になるわ。人気のない場所に移動しましょう」








「へぇー 中間層にこんな場所があるなんてねー シラナカッタワー」


「俺は気に入ってる」


 商人たちの倉庫として活用されている区画。広大なエリアに搬入された物資が整理整頓で保管されている。


「ねぇ、アナタの名前、なんでしたっけ?」


「フーセッツだ」


「そうだったわ、フーセッツね。で、フーセッツ......私とゲームしない」


「ゲームだぁ?」


「ルールはシンプル。私に勝ったら、アナタの(オンナ)になってあげるわ!」



 豪華客船、インペリアル・アペクス号は全域戦闘可能だ。海の上を移動しているだけの箱。例え船内で戦争が起きても、ゲーム内の仕様である。


「良いぜ、来いよ!」


 武器を構え、臨戦態勢のフーセッツ。


「はい、ブーッ!」


 手でバッテンの構えを取ったスコーピオン。予想外の行動に呆気に取られたフーセッツ。


「誰が戦闘するわよ、と言ったかしら?」


「はぁ!!? じゃあ、どうすんだ」


「私がアナタに一発、攻撃する。攻撃を受けた後、立ってることが出来たらアナタの勝ち。立ち上がれなかったら私の勝ち」


「俺は黙って攻撃を受けるのか......」


「一発攻撃を受けるだけで私が手に入るのよ〜 安いと思わない?」


 フーセッツはスコーピオンを見詰める。褐色美人。白衣に扇情的な服装。そして種族:【星霊】。意外なプレイヤー同士の対決で暴露された新たな種族。全員が容姿に優れ、能力面も優秀なNPCと周知されてしまった。対決したプレイヤーたちの会話から、恐らく星座をモチーフにした種族だと考察されていった。黄道十二星座の内、11人が判明された。フーセッツが所属する【断抹魔(だんまつま)】と同じPKギルド【ゴースト】のリーダー、バシャも星霊を所持していた。一度だけ戦闘を見たが、星霊が1人いるだけで【オニキス・オンライン】でトッププレイヤーに君臨し続けれる破格の性能キャラ。のも関わらず11人の星霊全て1人のプレイヤーが従者にしているのが現状。見つかっていない残りの1人を探すべく躍起になるプレイヤーも多い。


「そうね〜 アナタの(オンナ)になったら、()()()()()()()()()()


「な、ナンでも......」


()()()()()()()()()()()わ」


 興奮した笑み。


「OKだ。お前の攻撃、耐えて見せるぜ」


「男気あって、大変よろしい」


 スコーピオンはフーセッツに手を差し出す。


「攻撃するに当たって、アナタの武器を貸して」

「俺の......武器?」


「私の試練で必要なのは武器。素手の攻撃は不可」


 そう言って、スコーピオンは自身の専用武器、万物の蛇蝎星鞭(ラー)を取り出す。蛇腹剣を鞭へ改造した専用武器。先端は鋭い蠍の尻尾、脊髄のような形状とムカデと蛇の身体を模した武器となっていた。


「どうして俺の武器が? 自分の武器を使えば良いじゃねぇか......」


「だって嫌でしょう? 仮に私が勝っても『武器の性能が良かったんだ』とか色々難癖付けてくる可能性が高いわ。なら、相手の武器を借りれば、例え相手が負けても納得するでしょう」


「相手は自分の武器に負けた、か。なるほどな......」


「武器種は何でもいいわ! 一応全ての武器種は扱えるから」


 フーセッツは自身のステータス画面から武器欄を選択。スクロールして目当ての武器を顕現させた。

 そして、武器をスコーピオンに投げた。


「鞭ね......それも初心者が使う粗悪な鞭」


「何なら別の武器に替えても良いんだぜ!」


「良いわ。これにする」


 お互い少し間を空ける。スコーピオンは白衣のポケットからコインを一枚出す。


「このコインが地面に着いたら、攻撃するわ」


 スコーピオンの親指を強く上に向けて、コインをはじく。コインは回転しながら上へ昇る。一定距離まで飛んだコインは次第に威力がなくなり、ゆっくりと落ちていく。お互いの体を抜ける。


 コインが地上に触れた——————

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