聖女系統クエスト
ユミナはため息をついた。現在空気となっているヴェロニカに視線を送る。
「周りにアホどもはほっといて、ヴェロニカが訪問した理由を聞いても良いですか?」
「ほへぇ!!? あーそうでした」
ラグったみたいな挙動をするヴェロニカ。無理もない。朝から性の欲望がダダ漏れの空間に生娘が放置状態。悲劇だろうな〜
「実は、この状況で言うのは心苦しい内容なのですが」
「良いよ。私で解決できる内容なら、ドンと来なさい」
少し元気を取り戻したヴェロニカ。深呼吸した後、ユミナに話した。
「ユミナさんのオンナにしてください!」
私の従者NPCと関わると、他のNPCもバカになるのは運命かもしれない。
沈黙が続く。私は黙ってメニュー画面を操作していた。
やはり、無いか。従者NPCを解雇するコマンドとか。
全員の好感度をゼロにしたら、離れるよね......
これも望み薄だな。みんな、私への好感度値、下落しないのよね〜
一通り、調べが終わり、ヴェロニカを見た。
風紀員風の容姿のヴェロニカ。風紀にうるさいのに、自分が一番の風紀だったパターンか。
「一応、聞くね。どうして?」
「すみません。言葉足らずでした。このパーティー中の偽恋人をお願いしたく」
「『偽恋人』?」
「他の候補者と貴族たちへの牽制です」
「私、嫁も恋人もいるけど?」
「1人増えても、問題ないかと」
まるで私が節操なしの甲斐性なしなオンナ見たいじゃん.......あれ? 今更か......???
「昨日の会場での光景を見ました。ユミナさんは裏社会の大物とも太い繋がりがあると」
「繋がりって程じゃないけど。ヴェラは友達だし」
「ユミナさんが、”友人”と仰っても、あの場にいた貴族たちはどうでしょうか?」
「あのオンナ、ヤベェーとか思っているのかな〜」
「当たらずも遠からず、です。それとそのヴェラさんに関しての新情報があります」
「どんな内容?」
「ヴェラさんに依頼したウォーヴァ伯爵が自首するそうです」
「ほ、ほ———へぇ———」
「しかも、ウォーヴァ伯爵には手練の私兵が多くいたそうです」
「は、は———あ」
「ですが、私兵は誰も消息が分からずじまいです。実に不思議な事件です」
「主に愛想尽きて、船から逃げ出したんじゃない」
「ユミナさんのご存じのはずです。今私たちがいる海域がどういった場所か」
「スラカイト大陸とリリクロス大陸の間の海。基本はリリクロスの海モンスターが生息してる。極めて凶暴で巨大生物なのに俊敏がデフォ。人間は餌になる一択だね!」
「どうして笑顔なのか、ここでは問いません」
えぇ!? そりゃあ、何百と戦ってきた仲だからね! リリクロスの水棲モンスターたちは。
時に丸呑みされ、時に齧られ、身体が上下真っ二つに分離したりもあったな〜 懐かしい思い出。
「今回、インペリアル・アペクス号に多くの旅人さんを乗船させた理由。海中から飛び出すモンスターの迎撃の為に乗船が許可されています」
そう言えば、そんなクエストあったな〜 確か発生条件は、レベル上限イベントをクリアと一度でもリリクロスに上陸したプレイヤーだった。私は無条件でインペリアル・アペクス号に乗船できるからパスした。フレンドの何人かはこのモンスター討伐クエストで乗船したとメッセージが届いていた。
「恐ろしい海に飛び込むなど、自殺行為に等しいです」
「じゃあ......キツい言い方になるけど、全員殺されたんでしょうね。死体は海の藻屑になったとか」
「それなら、良いのですが。跡形もなく消えるのがどうにも摩訶不思議な現象で」
まぁ、ヴェロニカにも申し訳ないけど私は知っている。リブラがホクホク顔なのが証拠。
結構な人財を手に入れたんだろうね〜
ウォーヴァ伯爵の私兵全員、リブラの監獄に収容されてしまっている。言わばリブラの所有物になってしまった。ここで真実を話すと混乱するから、知らないフリを貫こう。
「すみません。話を戻します」
「つまり、私と船内デートを他の人に見せつけ、自分の優位性を確立させたい、と」
「......はい。私のバックにはユミナさんがいるぞ、と」
最優先事項は——————
「良いよ! 引き受けるよ」
晴れた笑顔のヴェロニカ。
「はい! よろしくお願いします!」
握手した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
聖女系統クエスト
・《聖女候補ヴェロニカ・アーミサとの船内デート》
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私の前にクエスト画面が表示された。
《はい・いいえ》の決定ボタンが出現。特に迷うことなく《はい》を押した。
(聖女系統って......結構多いのかな〜)
「で、早速デートだけどお昼からで大丈夫?」
急に挙動不審になるヴェロニカ。
「だ、大丈夫です......大丈夫です」
「どうかした? 熱があるなら、デート止める?」
「い、いえ!?!?!? か、身体が問題ありません。はい。お昼頃からで大丈夫です」
「ユミナ様」
アガレスが私とヴェロニカの間に入る。
「こちら、先払い報酬となります」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2.アガレス
悪魔の欲板
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アガレスの悪魔の欲板か。悪魔の蒐集棚を出現させ、ケース内にアガレスの悪魔の欲板を飾る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2.アガレス:悪魔の欲板:交渉中
6.ヴァレフォール:悪魔の護謨:提案中
25.グラシャラボラス:悪魔の欲板:交渉中
56.グレモリー:悪魔の彫像:契約済
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
良いペースかもしれない。けど、悪魔と関係を持って何が起きるんだろう?
「契約はできないの?」
アガレスが私に近づき、耳打ちする。
「もう少し、幼かったら考えていました。ヴェロニカ様には内緒ですよ!」
ダンディーな老執事はニヤリと笑みを溢した。
「あ———はい。分かりました」
ヴェロニカとアガレスは退室した。
「ねぇ、アシリア」
「はい?」
「今回の聖女候補者たちの年齢って......」
「大体6歳から14歳くらいですね。ヴェロニカさんは今年で12歳だったはずです」
悪魔の欲望、怖ッ!!
「ヴァルゴがまだ、マトモに見える」
「私の欲望は”お嬢様”です。他に目移りする気は起きません」
あ、そうですね......




