女ボスと密会とか萌えるわ!
ヴェラの部屋は私とアシリアの客室よりは狭い。それでもかなりのグレードが高い部屋となっていた。
「この酒美味いな!」
レオが豪快にお酒の飲み干していた。棚に置かれている上等なお酒が次々とレオの元に運ばれていく。
「こらっ!!? レオ」
「うふふ......! 良いですよ...お姐様もご自由に好きなだけお飲みください!」
「サンキュー!!」
アクエリアスの形相が怖い......
八つ当たりで私の首絞められないように気を配らないと
「それでは本題に入りましょうか」
ヴァラが切り出した。
「先ず、私がインペリアル・アペクス号に乗船した理由から」
「カジノじゃないの?」
「勿論、客船初のカジノルーム開設&運営状況の確認も理由です」
指をピースにするヴェラ。
「もう一つあります。私のもう一つの顔はご存じですか?」
「うん。結構な顔を持ってるね、全然知らなかったよ」
「成り行きです。自ら進んで望んだ道ではございません」
「......そっか。今更だけど、私かなり粗相している気がするけど」
うふふ、と笑うヴェラ。
「今更ですよ。それに恩人でもあるユミナさんに行動を微塵も悪いと思っていませんので、いつも通りで大丈夫です!」
「そう。なら今まで通りで......。それで?」
「実は私の組にもウォーヴァ伯爵から依頼があり......」
ヴェラとアシリアの話で、ウォーヴァ家・ラッテ家・ファリーナ家が今回アシリアの命を狙っている貴族。
アシリアの政策に最後まで反対している貴族がこの三つ。
「ですが......依頼は破棄します」
ヴェラの発言にアシリアは驚く。
私が口を開く。
「良いの?」
「構いません。調査と確認で判断しました」
「”調査”? ”判断”?」
「”調査”は、暗殺対象の情報収集。中々強引に多くの貴族を手中に収めていたようですが、それ以外は良き聖女という報告を受けています」
ヴェラは知る由もないだろうね。アシリアが強行手段を取ったのは私と婚姻を結ぶためと私たちの安全の為なことに。
「ヴェラ、”判断”は?」
「アシリア様がご結婚されているのは周知の事実。当然、裏社会にも知れ渡っています。不思議なことにお相手の情報が多く出回っていないのが腑に落ちませんでした。あれだけ騒がれた聖女の結婚。その相手の手がかりが全く掴めないのが現状......」
「そうなの? アシリア??」
「ある程度、情報統制はしております。具体的に言いますと、記憶操作......」
「ごめん、また後でじっくり聞くよ」
「は、はぁ......分かりました」
うん。聞かなかったことにしよう!! (ゆみな、しらな〜い)
「今日、アシリア様のご主人が乗船する情報を掴み、一度お顔でも拝見しようと」
ヴェラに向かってダブルピースした。
アへ顔はしません......
「真実はユミナちゃんでした!!!」
「ふふっ! えぇ、ユミナさんでした。真実の解明と私の今後の行動も決まりました」
「それが......”アシリアの暗殺を辞める”?」
「はい」
「理由を聞いても?」
「とってもシンプルです」
ヴェラが私を見る。真剣な眼差しだった。
「恩人を無下に出来ません。裏社会にも仁義があります。私の矜持にそぐわない行動は、私自身を格を下げる行い。なので、降ります」
「分かったよ。相手が素直に下がるのは私にも好都合。ただ......」
「もしも、今回の一件で貴族から弾圧される時にはユミナさんを頼ります」
「OK! いつでも頼ってよ!」
「ありがとうございます......」
ヴェラと契約したのはウォーヴァ家。ウォーヴァ家の当主も船に乗っている。今から契約破棄をしてくるとヴェラは言っていた。
「リブラとレオ。それから......アクエリアス、ヴェラについて行って」
「かしこまりました、主様」
「いいゾ〜 もう一瓶くれ〜!!」
「えー!!?」
心底嫌そうな顔を出すアクエリアス。アイドルが人前で出していい面じゃないわね。
「お・ね・が・い!」
頬を染めるアクエリアス。
「わ、分かったわよ。あくまでイモナちゃんの頼みで護衛するだけよ」
「リブラ。ウォーヴァ家が反抗的なら行動不能にしても構わないわ」
「お任せ下さい。良い人財があると有難いのですが......」
対談も終わりに差し掛かる。
「あ! ヴェラ、ミランダは?」
私の質問に不機嫌になるヴェラ。
「姉は、また旅に出ました。何でも嘗ての仲間に挨拶が終わるまでは戻らない、と」
「あはは......ミランダらしいね」
「全くです。ユミナさんのお陰で生還できたのに......」
ヴェラ曰く、ミランダは乗組員を全員倒すと並行して”ブルーハート”と言う昔の大海賊が乗っていたとされる船を探しているとか。ミランダは海賊だし、財宝目当てなのかな〜
ヴェラたちと別れた。カジノエリアはご自由に、グレードを好きに選んで遊んで大丈夫です、と計らってくれた。
残りのラッテ家とファリーナ家はそれぞれ刺客を乗船させている。
特にラッテ家が仕事を依頼したアニモシティ組はヴェラの組と双璧を成す勢力。
「アニモシティ組は完全な武闘派だったね」
「はい。組員全員がやり手です」
「ファリーナ家は?」
「それが......」
ファリーナ家が依頼したのはプレイヤー。それもPKギルドが受けていた。
”良い人財がある”
”良い人財がいる”、じゃないの?
リブラ的には”人財”は、そのまま読まない
ヴェラは敬意を込めて、”さん”付けしている。




