対面
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インペリアル・アペクス号、一層。最上層となっている。ここに入れるのは王族・位が高い貴族のみ。しかし今回は聖女アシリアと次の聖女となる候補が入室が許されている。
「あっ!!」
「動きましたね」
ボォ——————ッ!!!!!
船が出航し出した。
(態々、音まで再現するとは......)
螺旋階段を登り引き抜けの階層へ続く。最上階へ着いた。アシリアと私が泊まる部屋を探す。目的の部屋の前で足を止まる。
カードキーをかざす。扉を開けた。
「うわぁ〜 ひろーい!!」
豪華な客室。最上級スイートルームだ。お金の掛け方が他と段違い。
「ふぅ〜」
アシリアはソファに腰掛ける。安堵していた。乗船して数十分。船内では嫌な気配はなかった。でも狙われているアシリアは別。心身ともに疲弊していた。
「アシリア。手だしてくれない」
「えっ!? はい......」
アシリアは自分の手を差し出す。ストレージからアイテムを取り、アシリアにはめた。
「これは?」
「【オフィの指輪】。アシリアを守ってくれる御守り!」
オフィの指輪は装備者が死亡した場合、蘇生できるアクセサリー。蘇生回数は残り1回。
「絶対に外さないこと」
「......はい。分かりました」
「アシリア。ちょっと廊下に出てるね」
「はい......私は少し横になります」
静かな廊下。
「ナターシャ。アシリアの状況は?」
「ここ1週間はずっと仕事に没頭しておりました。ですが———」
「結構参っているわね」
ナターシャが首を縦に振った。
「毅然とした態度だったけど」
「ユミナ様に心配かけまいと、だと思います」
長い廊下を見渡す。幾つもの部屋がある。
「ここの階層には次の聖女候補も滞在してる」
「彼女たちは現在、下の階層におられます」
大きく呼吸した。
「パーティーまで2時間。作戦通り私たち4人が船内を移動する。客室内は予定通りメイド隊を配備」
静かに扉を開ける。中には既に刻獣たちが居る。スイートルームとボルス城を繋げてある。いつでも気軽に従者を呼び込める。他にも乗船乗員に従者を紛れ込ませている。
私、ヴァルゴ、アリエス、カプリコーンは歩き出す。
「アシリアのこと、お願いね」
『了解しました、ユミナ様』
4人のエルフは腰を折ってお辞儀した後、客室へ入っていく。
「さてと、私たちも............?」
階段を上がる音。
対面に現れたのは修道服を着る少女と執事だった。
「はじめまして、ユミナ様」
赤毛のロングヘアーの少女が私に話しかけてきた。
「初めまして......ヴェロニカさん」
笑顔で返した。
資料にあった聖女候補の一人。ヴェロニカ・アーミサ。候補の中でも群を抜いて、最も次の聖女に相応しい実力を持っていると評価されている少女。
で、隣にいる男性は———
視線を執事に向ける前に、既にヴァルゴが前に出て長身執事を見ていた。
(あれ? 珍しい......?)
基本、ヴァルゴが男性を見る目は決まってる。汚物を見る目。表情からは分かりづらいから初対面の人には平然とした目を自分に向けられていると認知されている。実際は真逆だけど......
老紳士の執事はヴァルゴを見るなり、嫌そうな表情だった。
キリッとした佇まいが崩れていく。執事の業務を完全に忘れている顔。演技を辞めたように見える。
「はぁ...ヴェロニカ。予想通りだ」
人前にも関わらず、くだけた口調で少女と話す白髪執事。
「......そうですか」
ヴェロニカもまた、困った顔を浮かべていた。
「お前が執事とは滑稽だな............アガレス」
やれやれ、といった態度を見せる執事。
「一発ですか......」
「相変わらず好きですね、老人姿が」
「私の性分に合っているのでね」
「ねぇ、ヴァルゴ。知り合い?」
「そこの執事は悪魔です。名はアガレス。昔何千回とボコした相手です」
「余計な情報を出さないで欲しいが」
お辞儀する執事。
「女王ユミナ様。初めまして、私はアガレス。以後お見知りおきを」
執事に質問した。
「もしかして......ヴェロニカさんを王にするのですか?」
私の質問への答え。アガレスは首を横に振った。
「ヴァロニカは王になりません。聖女になります。私はヴェロニカの一生を見届ける」
アガレスの決意の言葉。次に口を開いたのはヴェロニカだった。
「ユミナさん。この場で宣言します」
「......?」
「わたしに聖女アシリアと敵対する意思はございません」
「......信用していいの?」
「候補者たちの背後にいる人たちの事はご存知だと思われます。乗船前もわたしに、けしかけるように、と言いました」
「ふ〜ん」
「ですが、ユミナさんと敵対するよりも仲良くする方が得策だと結論づけました」
満面の笑み。
「わたしの相手はあくまで、他の候補者たち。アシリア様ではございません。今後もわたしに、要らぬ情報を送る輩は増えてきます。その時はアガレスが完璧に対処します。そうよね、アガレス」
「はい。お嬢様」
「......分かったわ。一応、信じます。ですが、もしもアシリアの命を狙うようなら覚悟してください」
「ありがとうございます」
後ろを振り向き、去るヴェロニカとアガレス。
再び静かな廊下へ。
「まさか、候補者と悪魔が契約していたとわね」
「誰もが叶えたい願いがある。そこを悪魔が突いたのでしょう」
「本当に信用してもいいのでしょうか?」
「今は、ね。人間なんていつでも、自分の言葉を曲げるから」
「ご主人様も人間ですよね......」
私は胸を張った。
「私はスペシャルな人間なのよ!!!! 一般人と比べられては困るわ!!」
「確かに......ユミナ様は............スペシャルな人ですね」
「ねぇ、アリエス。その残念そうな顔は何?」
「いえ、別に。なんでも御座いませんよ」
「お嬢様。そんなに胸を張っても成長しませんよ」
「あぁ!! 喧嘩売ってるのか?????」
アバターのままだから、一向に胸は成長しない。だが、いつかアバターを変更できる施設とか発見されるかもしれない。そうよ、私はまだ本気になっていないだけ。私はいつだってヴァルゴ並の胸が手に入るんだ!!!
そうだ............涙は流さないっ
私たちは階段を降り、中階層へ移動した。
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2.アガレス→→契約済:人間種:ヴェロニカ・アーミサ
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