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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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ありがとう......

 遂に来た———


 オニキス・オンラインをログインした私。ベットから飛び出し、向かったのは1階。


 ボルス城は吸血鬼の始祖たるアイリスから譲り受けたお城。権利は完全にユミナのモノとなっている。自分のお城を手に入れた事は非常に嬉しい。が、私以外の思考はどうも違うみたいだ。初めは特に室内の家具の位置を変える程度だった。次第に住人も増え、各々自分の部屋を魔改造していった。そこまでは特に問題はない。なんでだろうか。妙に凝り性のNPCがたまたま多かったのか、お城内部が毎日改造されていくのだった。ちゃんと建築技術を持つNPCを筆頭に改修工事が行われた。第一被害は私の部屋。次に地下となる。


 1階。台所から右側に行けば酒蔵に通じる部屋。左側に行くと行き止まりとなる。レンガ調の壁となっていて端に木箱が置かれている普通の場所。壁をじっくり見ると幾つもの不自然な形がある。


 一つを奥へ押すと——————



 ゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!


 壁が扉へ。壁は左右に開かれ隠し階段が登場。地下の施設へ進む階段。一つ注意が必要となる。壁だった床に横一直線に窪みがある。この先を進めば階段を降りられる。が、誰でも入れる訳ではない。入場許可が必要となる。許可は基本は私が受理する。私の従者に不届者はいない。なので許可申請は割と簡単に終わる。


 でも、従者以外がボルス城にいる時は違う。勘が鋭く隠し階段の存在を発見しても下へ降れない。許可がない者は透明な壁に阻まれ先に進めない。念の為、客人がいる時は私を含む一部の者以外は地下の研究施設———【コスモス】に入場はできない。


 かなり深く長い階段を降りるとガラス張りの自動ドアが現れる。左側には大理石で出来た台座。生体認証の手形装置が設置されている。左手を翳し、本人か判明した時、自動ドアは開かれる。偽装・小細工は出来ない。仮に従者の手を切断。切断した手をかざしても無反応。逆に警備システムが発動。高出力の熱レーザーが不届者を燃やす。


 エントランスホールに到着。ここがゴールではない。歩き出すと奥にエレベーターがある。工場で使われるような搬入用エレベーターサイズとなっている。かなりの重厚感のある扉が開く。


 シャフトに入り、【コスモス】行きのボタンを押す。エレベーターは下に降りず横に移動していく。ある距離まで到着したら、ゆっくりと降下していった。


「魚でも飼おうかな?」


 ガラス張りのエレベーターシャフト。外の景色は地殻ではない。湖だ。ボルス城から見える大きな湖。摩周湖くらいあったはず......


「相変わらずデカい施設」


 降下先、湖中に浮かぶ巨大な建築物。目的の研究施設【コスモス】。


 到着のランプが鳴る。扉が開く。


「び、っくりしたぁ〜」


 レッドカーペットが敷かれ、両端に従者が姿勢を正して待ってくれていた。

 毎回【コスモス】に来るとみんながやってくれている。が、いまだに慣れず、むしろ心臓に悪いまである。


 居住エリア、研究エリアなど様々な区画で分けられている。一度兵器格納庫を覗いた時は、度肝を抜いた。戦闘機とか戦車とか何十台も置かれていた。『今から戦争が始まっても大丈夫なようにメンテナンスはバッチリ!』、とスコーピオンが言った時は『あ、はい』しか言えなかった。


 大ホールに入る。ホールと言うよりかはドームと表現した方が早いかも。よくメディアで〇〇ドーム何個分と換算される時に使われる超有名ドームを会議用に作ったらしい。私が冗談で言ったのに建造するとは......キャンサー恐ろしい子っ!!?


 超有名ドームを参考しているから、収容数も同じ。私の全従者が余裕で入れる。ドラゴンも居るけど、ミニドラゴンにサイズ変更してくれた。


 アシリアとアリスが遊んでいる。私は二人の元へ向かった。


「遅れてごめん」


「ママッ!!!!」


 ミサイル突撃のアリスをキャッチ。頭を撫でた。


「アシリア、大丈夫?」


 妙にキョロキョロしているアシリア。聖女業が忙しいのもあるけど、【コスモス】に入場したのが今回が初。見るもの全てが新鮮。今の時代を生きるNPCにはSF施設は規格外の代物。摩訶不思議な世界に迷い込んだと錯覚を覚えている。神代時代を生きていた星霊は少し懐かしいなくらいの感想だった。


「凄い場所だと......」


「明日からの作戦会議にもってこいだからね〜」


「迷子になりそうです」


 湖中に浮かぶ施設とは思えない広大さ。迷ってしまうのも気持ちは分かる。


「【コスモス】で迷子になったら大声を出すのはどう? 誰か見つけてくれるかもよ〜」


 少し頬を赤くするアシリア。


「斯くなる上は、恥を捨てるしか......ユミナみたいに」


 オーイ、アシリアさんやぁ〜 まるで私が恥を捨てて堂々と生きているみたいじゃん。失礼しちゃうわ〜

 試しにタウロスに”恥を捨てた女王ユミナ”の言葉入りTシャツでも作って貰おうかな......防御力は素材でどうにかなるけど、きっと魅力値は低いかも。


「ユミナ。明日の準備できていますか?」


「もちろん!!」


 準備と言っても、不足分のアイテムを補充しかしていない。

 とある作戦も了承済みだから、そこまで船旅の準備に本腰入れる必要はない。



 鐘の音がなる。席に着く。ドーム内が暗くなる。一点だけ照らされる。ドームの中央にスコーピオンが登場。【コスモス】の所長に任命した星霊。

 頭上に巨大なスクリーン、3Dホログラフィック・ディスプレイだった。アイドルコンサートが開催する勢いの演出。音楽もテンションが上がる選曲。


 全方位見えるように投映された。立体的な豪華客船。アシリアが行くことになるインペリアル・アペクス号が映し出された。スクリーンには次の聖女候補のパーティーのスケジュールと参加者のプロフィールが列挙されていた。


 突然のサプライズに可笑しくなって私たちは笑った。


「ユミナちゃんが到着したので、始めさせて頂きます!!!!!!!!!」



 デカデカと【アシリア護衛会議】の文字が表示される。


 裾を引っ張るアシリア。


「なんだか......申し訳ない気持ちでいっぱいです」


 豪華客船でのパーティー。開催まで1週間。みんな、色々準備してくれた。楽しいクルージングで終わるなら、ここまで大々的な会議はしない。でも、今回はアシリアの命が掛かっている。精力的にみんなはやってくれた。


 オニキス・オンラインでは一部を除き、NPCは死亡すれば生き返ることはない。


「気を張る事ないよ。ほらー」


 私の指先をなぞるアシリア。視線の先には、みんながアシリアを見ていた。


「え、えっとー」


 もじもじし出すアシリア。頬が赤い。気恥ずかしいのは一目瞭然。


「はい。アシリアちゃん」


 いつの間にか階段に居たスコーピオン。アシリアに渡すのはマイク。


 マイクを手に取り、立ち上がるアシリア。




「皆さん!! ありがとうございます!!!! 明日からよろしくお願いします!!!!!!!」




 精一杯の大声。アシリアの言葉にみんなが応える。



『はーい!!!!!!!!!!!』



「アシリア。みんなはアシリアの家族。家族が困ってたら、助けるのも家族よ!!」


 涙を流し、笑顔のアシリア。


「はいっ!」


「それじゃあ、スケジュールと編成の再確認いきま〜す!」


 スコーピオンが話し始める。

 楽しい!! ずっとこの幸せが続くと良いな〜!!



時は戻らない

それでも、人は歩まないと行けない。

答えを見つける為に

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