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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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スキルを盗む怪盗紳士は師匠を探している その18

サブタイのサブタイ

触れてはいけないパンドラの箱

◇◆◇


NPC:ファントム。本名:デュオ。天使の父と人間の母の間に生まれた存在。


彼は今、無の世界にいた。誰も存在しない。自分が何処に立っている、はたまた浮いているのか分からない。感覚がない。身体は動かない。顔も口も動かすことはできない。両目は開きっぱなしで閉じる事は許されていない。


ヒールの鳴る音が響く。デュオに近づく一人に女性。自分は無の世界で何もできないのに対して歩いている女性は苦労せず、ただ普通に、いつも通り、呼吸に対して意識をしていないと同様に無の世界を歩いていた。


『ワタシ、貴方を許可した覚えがないんだけど』


彼女の言葉は全てを魅了した。一瞬にして虜になる。抗う術がない。

同時に恐怖がデュオを襲う。先程まで感覚がない身体。後から身体に恐怖を与えるように許可されたかのようにデュオの身体をドス黒いモヤが侵入していく。目の前の女性から発せられる凶悪な圧。誰もが進撃を諦める。


『星刻の錫杖を擬似とは言え、模倣できる術を【表の世界】に残してしまったワタシのミスだけど』


デュオの身体に彼女の手が入る。掻き回される感覚はデュオには許可されていない。

暫くして彼女の手は抜けた。同時に身体から排出された物もあった。トランプカード。


『奪われたのはユミナちゃんの落ち度。必ず取り返すし安心して宇宙から観測してたけど......』


彼女が持っているのは2枚のトランプカード。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


星なる領域(スターリースカイ)Lv.10】

自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『使用までは許していない』


抵抗できない。デュオは黙って凶悪な圧に晒されていた。


『中でも【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】はダメよ〜!!』


手でバツ印。愉悦の笑み。


『選ばれてもいない部外者の貴方は体験したでしょう???? 【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】は()()で良いの〜!!』



デュオは思い出す。【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】なるスキルを使用すれば誰にも負けない。屈しない。世界だって支配できる。が、同時に達成感がないのに気づき、恐怖した。()()だけはずっと観ていた。自分の身体がどのような惨状を巻き起こしたのかを......


『惑星:オニキスを護る【星霜の女王】に相応しくない能力よね〜!! でも、ワタシは敢えて【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】の能力を()()で創ったのよ。ワタシね! 人間の感情が大大大大大好きなのよ!!! 人は感情で動く。感情によって能力値も爆発的に上がる。でも、ね!! 一定値を超えると急激に上昇するけど、下落することもあるから欠陥品なのよ〜!! しくしく......』


彼女は語る。神が施した力を。


『感情は万能じゃない。理性が、自我が、抑制しちゃう。抑制せずにいると人の身では必ず限界値を迎えるのよ!!!』


無から有。出現した風船が割れた。限界値を超えた者は例外なく死ぬ、と表現したのだろう。


『選ばれた【星霜の女王】も然し。貴方の師匠(せんせい)でもあるクラス。あーラキと言い換えれば良いのかしら???? なんでも知っているわよ、貴方たちの関係も軌跡も。ユミナちゃんの前任でもあるラキも【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】は躊躇った。それもそうよね!!!!!!』


狂気の眼。邪悪な笑み。逃げれない意識。


『昂った感情100%の状態の身体から意識と身体を切り離したら、どうなっちゃうのかな??? 正解(答え)は残った身体は周りにある全てを敵と認識し破壊の限りを尽くす。あ!!? 安心してね!!! 自我は切り離されても消失したわけじゃないから!!! ちゃんと隔離して、【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】が主導権を手に入れた身体を第三者目線で眺める事ができるのよ!!!!!!!!!』


彼女は頬を膨らませる。会話がないのがお気に召さなかったようだ。

口だけ、喋る許可を得たデュオ。


「どうして...」


愉快な顔は無表情の真顔になる。そして、発した。


『世界を救済か破壊か。どちらかを選ぶ権利を持つのは【星霜の女王】だけ。宇宙を創り、惑星:オニキスを生み出したワタシが許可した」


彼女は胸を張る。


「でも、ね! ワタシも心を入れ替えました!!!!」


偉いでしょう! と言いたげな誇らしげな表情だった。


「オニキスに元から棲んでる生命体には【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】を手懐ける事が出来なかった。だから別の惑星からワタシが調整した人間を送り込んだ。彼等の内誰かが制御出来るかも、と淡い期待をしているのよ〜!!! 現にユミナちゃんは全てを終わらす力を持つ魔法、『星の力を受け継ぎし、(クイーン・オブ)君臨する女王(・ノヴァ)』を変化させた。それだけでワタシは調整人間の可能性を信じた!!! だから!!!!!!!!!!』


彼女の真っ白の手が蠢く。おどろおどろしい獣の手。デュオの身体を掴む。


『ワタシの計画を邪魔しないでね♡』


リリスの手によってファントムの身体は握り潰される。内部の骨や内臓は粉々になっている事だろう。身体はポイ捨ての如く放り投げられた。暗黒が迫ってくる。両目が閉じていく。自分の意思とは関係なく——————

リリス様が好きなのは、あくまで、人間の感情だけ


昔、人間を使ってあらゆる人体実験を行い、【星霜の女王】専用スキル・魔法は実験で得た研究結果を元に創られた。


人間の中でも、お気に入りの個体は少しいる

選ばれただけで超絶レアな出来事


選ばれていない人間の評価が0だとすると、個体そのものが好きで、目をかけている人間の評価は、1000くらい


次話で【 スキルを盗む怪盗紳士は師匠を探している】が終わります

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