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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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スキルを盗む怪盗紳士は師匠を探している その17

サブタイのサブタイ

そのスキルを使うな

廃教会付近の森。一本の木の幹に着地した。ユミナの目の前にナイフが飛んできた。寸前で回避し、別の木に。標的を見失ったナイフは一直線に木の幹へ。


「最悪......」


ナイフが刺さった木はドロドロに溶けた。

【腐敗】付着するスキルか。


こちらに考える時間を与えない。今度はナイフの壁が飛び出してきた。


「っ!!」


すんでのところで躱わす。


「なんで怪盗に追われないといけないのよ」


ファントムはナイフを構えたまま飛びかかってきた。

咄嗟に飛び退く。が、ファントムはニヤリと笑顔を向ける。


後方に刺さっていたナイフ、全て爆発。爆発の衝撃を背中に直撃。爆風で前へ吹っ飛ぶ。待ち構えていたファントムに右腕を斬られた。


「くっ」


地面に転がり込む。追撃とばかりに数本のナイフ。迫る攻撃を躱し、森の奥へ走る。


「僕に言わせれば、君の方が泥棒だけどね」


木々を走り抜ける私たち。


「アンタ、ナイフ技術あるならサーカスに入団しなさいよ!!!」


木の幹に全て刺さるナイフ。

正確な投擲。私の頭、心臓に当たる命中率。木の幹が無ければ串刺し状態だった。


「いたよ、何百年も」


並列で駆けている私たち。ファントムの方向が変更。私に向かって斬り掛かる。


「君こそ入団したら、曲芸枠で......」


背中を抑えるファントム。同時に後ろを取った私。


ナイフは当たらない。後ろからの攻撃。身体の向きを変えたが、猛スピードでの走り。足が追い付かずバランスを崩した。崩しても攻撃をやめないだろう。なら利用するまで。大きく背中を反らして完全に敵からの攻撃を回避。地面に背面着地する前に左腕に装備している怒龍の籠手(レイジング・ブースト)で地面を叩いた。思っ切り殴り、発生した衝撃波で低空位置よりも少し上の空へ。身体を回転し、怒龍の籠手(レイジング・ブースト)をファントムの背中に叩き込むことに成功した。


「ヘェ〜 こういう表記なんだ」


妙な画面が私の前に表示された。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


      憤怒(レイジ):+1


        00:00:05


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


憤怒(レイジ)】数と時間経過を表すタイマー。画面の右側。【憤怒(レイジ)者】なる項目がある。タップすると誰が【憤怒(レイジ)】付着しているか確認できる。しかもミニチュアサイズのおまけ付き。ミニチュアサイズの状態異常に掛かった者の下にも時間が刻まれていた。複数人が同時に【憤怒(レイジ)】を付着されれば時間も同じだけ経過する。もしも1秒違った場合でも分かりやすく差分表示してくれる親切設計なのだろう。



10秒経過。試してみましょう!


「もう、貴方のお師匠様は私にゾッコンだから!」


眉をひそめるファントム。一瞬の隙。拳を放った。

拳が当たる寸前でファントムの身体は消え去り、後ろにある木に拳が当たった。


「1人分でこの威力ですか〜」


威力の検証をしてる時間はなかった。ぶっつけ本番での実戦投入。怒龍の籠手(レイジング・ブースト)に触れた木、後ろに生えている木10本くらい、粉々に吹っ飛んでいた。茂みも無くなり、地面が露出した、抉れた地形へ変貌を遂げた。


「あ〜あ〜 自慢の服が汚れたよ」


白色のタキシードに付着したゴミを払うファントム。それ以外は目立ったダメージはない。


「気になっていたけど、貴方、服の色変わったのね」


フッと笑うファントム。大袈裟な素振りをする。


「本来の僕の服装さぁ! 黒の怪盗服とトランプ能力は悪魔と出会った時に手に入れた物でね」


ただのトランプにスキル強奪の能力が備わったのは悪魔のおかげなのか......


師匠(せんせい)に会いたい、この願いは完了した。相性が良いのか、僕はヴァレフォールを気に入った。引き続き協力関係を結んだのさぁ!」


「【契約】してたんだ、さっきの悪魔と......」


「ヴァレフォールが君じゃなくて、あの二人を引き受けたのも怪盗としての素質を見抜いた結果だろうね」


「そっか〜 私に泥棒は相応しくないのか〜 地味にショック〜」


ファントムの手から突如出現したトランプ。


「いつの間に......」


「機動性と器用さが無いと。頂いたよ、君の能力」


拳から放出された威力に唖然していた時に奪ったのか。

奪われたスキル名が表示されていて、驚く。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ※以下のスキルは使用不可となりました。

 

 《【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】:使用不可》

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ユミナちゃん、君は本当に可笑しい子だね。こんなスキルを所持しているなんて......一個人が扱っていい代物じゃない」


ファントムは自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)()()を知ったからこそ、私にそのような言葉を投げかけたのだろう。


「君は()()()にでもなるのかな」



「必要なら、破壊者だってなってやる———私の大切な人たちに危険が迫るならね」



奇想天外の則(サーストン)】を青白い孤月(ペイル・ムーン)に吸収したファントム。青白い孤月(ペイル・ムーン)は擬似星刻の錫杖(アストロ・ワンド)に形を変えていた。


他にも擬態系スキルがあったのか......


トランプを星刻の錫杖(アストロ・ワンド)に刺そうとしていた。


「忠告しましょうか?」


「その手には乗らないよ」


「策はありませんよ。...私の言葉がダメなら、私の前任者からのお言葉でもお伝えしましょう」


ファントムに言った。


「『自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)は誰にも制御できない』。前任者でもあり貴方の師匠(せんせい)のお言葉」


擬似星刻の錫杖(アストロ・ワンド)に吸収された【自我が消滅した(ルナティック・)静かなる殺戮者(オーバーロード)】。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!!!!!!」


ファントムが絶叫する。もがき苦しむ。

意識はない。だが、身体は動き出す。条件不達成。正しい手順を踏まなかった。

今、目の前の敵を襲う殺戮者に成り変わった。


「結局、こうなるのね...」

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