恋人の武器は超兵器!!?
襲いかかる【願き者の源水】。リーナとカステラが応戦。
無数の触手が雨のように降り注ぐ。私に向かう触手はリーナが彼の物語を紡ぐ朱呪で斬り刻んだ。
「お先にどうぞ、ユミナ様」
水触手から蒸気が立ち込む。カステラの攻撃が成功していた証拠だ。
『無の理想郷』を肩に置き私を見るカステラ。
「ボスは譲るよ」
「ありがとう!」
駆ける私に立ちはだかる【花嫁】。
「ッ!?」
茨の触手がぶつ斬りになる。
私の前に着地したクイーン。クイーンは大太刀:金始刀【閃】を構える。
「一緒に倒すよ、ユミナ」
うなづく。
裁紅の短剣を装備した。
二人同時に体勢を変え、走り出す。行手には自分の触手を斬られたことで怒りに近い奇声を発する【花嫁】。
ウェディングドレスが開く。内部は以前と同じ、茨の身体。頭上に数字が浮いていない所から透過能力は与えられていない。
並列に走っていた私たち。しかし徐々にクイーンとの距離が離れる。私が前へ、クイーンは三歩ほど後ろを走っている。状態異常で走行にデバフが掛かっているわけではない。自発的にクイーンが走る速度を下げていた。
「X:変型機............発動」
クイーンの声に反応する金始刀【閃】。機械音と黄金色の光が放出される。大太刀の持ち手が斜めに傾く。長い刀身の半分は後方に回る。折り畳まれた刀身は収納され、メカメカしい銃器の武器へ可変した。
超電磁砲:耀金妃叛銃。破王双藍同様クイーンが入手し、オニキス・オンラインがリリースしてから初登場したSF武器。武器の存在が公になっても誰も詳しい内容を知らない。仲が良いギルマスは武器の存在と性能を知っているが、入手したユニーククエストの概要は存じていない。クイーンが一切内容を明かしていない。
耀金妃叛銃はMP消費で放てる連射エネルギー弾、HP消費で放てる大砲エネルギー弾の二種類がある。
クイーンが持ち手に出現したトリガーを弾く。発射されるエネルギー弾。弾丸は連射され【花嫁】へ。
銃弾の軌道には一人と一体がいる。
ユミナと【花嫁】が激しい動きを見せる。この状態では狙いが定まらず、射つのは躊躇う。だが、クイーンはユミナを信じている。
「流石、私のユミナね!」
背後から迫る銃弾を全て回避するユミナ。黄緑色のエネルギー弾は【花嫁】に全弾命中。エネルギー弾がヒットした【花嫁】は硬直し始めた。すかさずユミナが肉薄し、【花嫁】の首を切断する。頭部と胴体に分離した【花嫁】は崩れ落ち、散った。
1体目の【花嫁】が討伐された。クイーンの視線は耀金妃叛銃へ。耀金妃叛銃付近に浮かんでいるウィンドウ。必殺技発動に必要なエネルギーチャージ量を示す画面だ。
30/100
大太刀:金始刀【閃】での斬撃攻撃、超電磁砲:耀金妃叛銃のエネルギー弾攻撃。敵にヒットすることでエネルギーがチャージされる。エネルギーが満タンになれば魔魂封醒:【壮速燦絆】が発動できる。
【花嫁】がユミナに目もくれずクイーンへ。【花嫁】のヘイトが全てクイーン1人に向けられていた。
「......後3体。私が貰いますか」
もっと一緒に戦いたかったが、ユミナは振り向かない。倒すべき相手に集中していた。少しボスに嫉妬するが、表に出さず込み上がるものを静かに下した。
怒りは目の前の【花嫁】達で晴らす。そう決め、クイーンは再度X:変型機を発動した。
耀金妃叛銃が可変する。銃器が自動的に形を変える。銃器から太刀へ。
刀身が長い性質上、パーティーメンバーが近くにいれば金始刀【閃】の斬撃を喰らってしまう。大振りで攻撃モーションを繰り出す以上、勿論隙だらけになる。
なのでクイーンが金始刀【閃】と破王双藍を装備する時は敵の情報が集めてから。
敵の攻撃モーション、予備動作、特殊モーションなど。攻略情報を参考に自身の行動で生まれるであろう隙を考え、出来るだけ隙を突かれない立ち回りを実施してきた。
敢えて隙を突かれる素振りを見えてからの裏をかく戦法も頭には入れている。
クイーンのビルドは怪盗を彷彿とさせる能力値にしている。金始刀【閃】と破王双藍を入手後に必要なステータスは怪盗ビルドにしていたお陰でステータスをやり直す必要はなかった。せいぜい筋力値を上げる苦労だけだった。
「コイツら位ならフォームチェンジしなくて良いわね」
金始刀【閃】と破王双藍。実は二種類の武器には専用防具が存在する。
ギルマス以外誰も知られていない特殊防具。情報が拡散されるリスクはある。が、問題なのは特殊防具の装備条件と耐久値にある。
装備条件が厳しくここぞって時に装備する奥の手。スラカイト大陸最後の街、【サングリエ】に常駐してるNPCの鍛治師には門前払い。隠れユニークNPCが大勢いる可能性が高い生産職の楽園、【ムートン】。【ムートン】にいるNPC鍛治師に特殊防具を見せても結果は【サングリエ】と同じ返しだった。
いくら特殊防具であっても耐久値が存在する。ゼロになれば消滅する。扱える鍛治師を発見できるまでは特殊防具を頻繁に装備するのは躊躇っている。色々な事情がある特殊防具を今回クイーンは初め使用と考えていたが、敵のレベル、受けたダメージ量を鑑みて、まだ使う場面ではない。そう結論付けた。
金始刀【閃】を横に構える。不動。じっと敵が近づくのを待っていた。
息を長い吐く。
【花嫁】は獲物を捕えるために行動を開始する。
「ふふん! 貴方たちの命、頂きます」




