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NPCがわたしを"推す"! VRMMO (あれ? 推してるのわたし!?)  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【1章:アグネス女学園の乙女生活】
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囲まれちゃった

【願き者の源水】の瞳が真っ直ぐ私を凝視する。


 ニヤリッ!


 醜悪な笑みを溢す。


【願き者の源水】に腕が生えた。水で出来た腕は宙を舞う。鞭のように撓る。


 水沫が飛ぶ。サッカーボールくらいあるサイズ。水腕で手に入れた運動エネルギーが乗り、速さも増していた。


 無規則に発射された水飛沫を回避。回避できない水沫は裁紅の短剣(ピュニ・レガ)で弾き返す。


 距離を詰める。


 胴体に切先が当たる。


「こ、こいつ......!!?」


 手応えがない。身体の水分に短剣が通過しただけだった。


 一瞬の内に水鞭が迫っていた。


「がっ!!」


 水鞭は私のお腹に直撃。くっ......重い......オェ!

 自身の身体を液体、固体と自由に切り替えれるのか......分かりにくいのよ!!?

 せめて色を出せ、それか片栗粉入れろ!!?


 勢いよく壁に激突。


 二本目が襲う。


「させるか!」


 裁紅の短剣(ピュニ・レガ)を投擲。頭部に当たる瞬間、【願き者の源水】は身体を曲げ私の攻撃を免れた。


「えぇ!?」


 ある疑問が生まれた。だが、考えるよりも先に———




 水鞭が輪切りになる。もがき苦しむ【願き者の源水】。


「初めからコッチにすれば良かった......」


 双剣:婥約水月剣(プルウィア・カリバー)に装備を切り替え、難を逃れた。


「ついでにパワーアップ成功!」


 双剣が蒼く輝きだす。


 婥約水月剣(プルウィア・カリバー)は斬った対象の水分を奪う。そして水分を吸収することで婥約水月剣(プルウィア・カリバー)の威力も上昇する。


 水浸しの床。婥約水月剣(プルウィア・カリバー)の鋒を浸かられる。


「アンタの選んだ土俵でしょう」


 弱点は判明した。敵が水棲モンスターなら婥約水月剣(プルウィア・カリバー)は覇権武器。


【願き者の源水】が形状変化する。


「さてさて何にな、る......の............かな!? えぇ......嘘でしょう............」


【願き者の源水】は廊下面積いっぱいに身体を膨張させた。ゆっくり移動し、徐々に速度が増す。行動がまるで電車。水力を得た暴走電車型モンスター。


 ヤバい。


 勝利翔(ニケ)を発動。後ろへ振り向き反対方向へ猛ダッシュ。激流に呑み込まれる前にこの場を退散するしかない。廊下の水位が上がる。


 床はもうダメ。壁走りに切り替える。同時に残りの加速スキル、宵明星(イシュタル)嫦娥(じょうが)も発動。激流との距離が広がる。煌めく(シューティング・)流星(スター)よりも劣るが、空を切るレベルの速度は出せる。


 駆け出していると前方から音が聞こえる。カプリコーンと初めに思ったが、意外な組み合わせの二人組だった。




「はぁ!? カステラ!!? クイーン!?!?!?」



「「ユミナ!?」」


 しまった。止まらない......


 トップスピードで移動していた私の身体。スキル解除するまで速度は治まらない。ブレーキはない。



 その結果———


 三人はぶつかり、床に倒れ込む。


 星刻の錫杖(アストロ・ワンド)に武器を替え、『煌めく(シューティング・)流星(スター)』は発動しようと準備するが間に合わなかった。



 ザーザー!


 ドドドッ!


 流れ込んだ波に私たちは呑み込まれた。



「さ゛せ゛る゛か゛!!!」


 激流で満ちた廊下を斬った。

 水は縦に真っ二つ。水が割れ、床に着地する私たち。


「同じ手を喰らう私じゃないわ」


 ......じゃあ真っ先に斬ればよかったじゃん。仕方がないじゃん、波は怖いのよ。自然と逃げる体勢に変わるもの。と、自問自答して自分の行動を正当化した。


「どうして二人が異空間に?」


 カステラが答えた。


「【監督生(プリフェクト)】に誘い込まれたのよ」


「私も強制的に連れてこられた」


 クイーンも経緯は同じらしい。

 話を聞くと、カステラは一年生の【監督生(プリフェクト)】:エリザベス・ラゲナリアに、クイーンはジェニファー・ホリホックとラクエル・クリュザンテーメに詰め寄られ、私と同様に異空間に閉じ込められた。

 異空間でもアグネス女学園と構造は一緒と見抜いた二人はそれぞれ逃げ回り、合流したらしい。


「で、極め付けは......」


 クイーンとカステラがやってきた道から三人の【監督生(プリフェクト)】が【願き者の源水】へと変貌を遂げ登場した。


「一年生も洗脳済みか」


 もしかしたらここにいない残りの【監督生(プリフェクト)】も餌食になっているはず。私たちの前に現れていないのは別の獲物と交戦していると推測できる。


「私の敵さんも登場ですか...」


 前からはテイラー・ブロッサム先輩の【願き者の源水】。


 てか、何故【監督生(プリフェクト)】全員が【願き者の源水】に身体を乗っ取られたのか。考えられるのは噂話。【噴水の悪魔】と【願う噴水】。【噴水の悪魔】の内容は、アグネス女学園の中庭に置かれている噴水に対価を入れ、”お助けください”と懇求すれば悪魔が召喚される。そして召喚された悪魔に願いを伝えれば、外の世界に出られる。


これが【噴水の悪魔】の内容。カステラが入手した【願う噴水】の噂話も【噴水の悪魔】と同じだろう。


「カステラ。【願う噴水】の内容教えて」


「えーっと、確か......」


 カステラ曰く【願う噴水】の噂話は大体が【噴水の悪魔】と同じ。問題はその後。


「願いを叶えるために対価を支払った者に宿る、だったかな」


 なるほど。噂話は所詮噂話。広まる内に徐々におヒレが付き内容も誤差が生じてしまった。そして【監督生(プリフェクト)】が操られているのはカステラの【願う噴水】が元になってる。


監督生(プリフェクト)】は噴水に願いを叶えようと行動を起こした。


「でも......何故。願いを......」


「恐らく、ユミナたちが生徒を救出したからだね」


「クイーン。どう言うこと?」


「心が耐えれなくなった」


 自分たちは学園と生徒を守る選ばれた生徒なのに、結果を出せなかった。なのに転校したての生徒が自分たちよりも生徒救出してしまった。今学園内では【監督生(プリフェクト)】も【生徒会】、両方は使えない人たちの集まりと考えているだろうね。


 選ばれた生徒と言ってもまだ十代半ばの少女。重圧は計り知れない。解放されるために噴水に願いを込めた、と言うのがクイーンの考え。


「そこをつけ込まれたか」


 ここに引き摺り込まれた者は噂話を知り、尚且つ事件を解決しようと動き出している生徒。噂話が無ければ自分たちがこんな屈辱的な扱いを受けることもなかった。噴水に頼んだ願いは『噂話を無くして』。


 願いは『噂話を知っている者を排除すれば無くなる』と解釈されただろう。結果、私たちは操られた【監督生(プリフェクト)】に狙われた。


 クイーンはクエストを受注していないのに【監督生(プリフェクト)】に目をつけられたのは、私たちの会話を一番近くで聞いていたから。


「二人とも準備はいい」


 異空間から脱出するには噂話が形となって出現したモンスターを倒す。


 婥約水月剣(プルウィア・カリバー)を構える。


 クイーンは義賊の短剣(アルセーヌ)大怪盗の短剣(ラウール)を装備する。

 カステラは白っぽい灰色の鎚矛。メイスだった。霧っぽいエフェクトが武器から放出されていた。


「カステラの武器、初めて見た」


「これは『無の理想郷(ユートピア)』」


「二人とも聞いて。あのモンスター、【願き者の源水】は全身が水で構成されている。私たちの物理攻撃は水に呑み込まれて無効化される。逆に【願き者の源水】の攻撃は必中」


「無敵じゃん!?」


「弱点はある。一つ目は私の婥約水月剣(プルウィア・カリバー)。簡単に言うと斬った者の水分を奪う」


「えげつないな。その双剣なら水属性の【願き者の源水】にダメージが入る」


「正解。で、もう二つ目。【願き者の源水】が攻撃する時、攻撃する部位に水エネルギーが集中する。集中した部位以外は極端にステータスが低くなっているはず」


「つまり、その瞬間は攻撃無効化も発動しない」


「無効化する分のエネルギーは、その瞬間だけ捻出できない」


「私はテイラー・ブロッサム先輩の【願き者の源水】を倒すから、二人で協力して残りの【願き者の源水】食い止めて。もしくは討伐」


 クイーンとカステラが目を合わす。


「「えぇっ!!?」」


「うんじゃよろしく!」


 私は駆け出した。


 二人残された現場。ジリジリと近づく三体の【願き者の源水】。


 カステラはため息を吐く。


「ハァ〜 仕方がない。アイツらを倒すわよ」


「情報は渡さないわ」


「いらない。あれから考えたのよ。きっとリリクロスにはもっと貴重なモノが転がっている。ユミナが証明してくれた。なら、ここでクイーンの武器性能を入手するよりもリリクロスで高性能の武具を製作すればいい」


 クイーンは口角を上げる。


「なら、一緒に倒すか」


 二人は行動を開始した。
















 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そこは隔離された空間だった。


「不思議な空間ですね」


「気に入ってくれて何よりよ♪」

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