また!!? 早いよ~
「ユミナさん......」
私に近づくレイチェル。そして言った。
「貴女の従者3名。わたくしに下さらない」
「はぁ!?」
ヴァルゴに断られたから主に直接交渉してきたか......そのガッツは認めよう。だが――――――
「何故?」
敢えて聞いた。どうせ碌な答えではないが、一応。
「貴女に相応しくないわ」
「......私が誰を従者にしようと、私の勝手ではないでしょうか?」
「わたくしは過去に様々な貴族と従事する者たちを視てきました。そこから判断した結果、ユミナさん。貴女には三人の従者は分相応だと」
「そうですか......カプリコーン」
振り向くと笑顔のカプリコーンさんが。一気に私の怒りは沈静化されていった。
うわぁ〜 相当怒っているな。昔の星霊なら問答無用で殺していただろうな〜
「カプリコーン。貴女に問います。ユミナかレイチェル先輩、どちらに付きますか?」
邪悪な笑み。
「無礼るなよ、小娘」
熾星の細剣を鞘から抜く。切先はレイチェルへ。
教室に悲鳴が響く。
「何故初めから勝ち目のない戦いを挑んだのか分からないが、私はユミナ様を裏切らない。私がお仕えするお方はユミナ様のみ。貴様の命令を聞く気はない。申し訳ないが、従者集めは他を当たってくれ」
熾星の細剣を仕舞う。カプリコーンに腕組みをされた。
「行きましょう! ユミナ様♡」
教室を出るが――――――他の【監督生】に阻まれた。
「シャリー・エラーブル先輩とテイラー・ブロッサム先輩......!!?」
三年の【監督生】が一年の教室に勢揃い。だが二人の様子が変だった。
「虚な眼、してない?」
「ヤバいですね......これ」
後ろから笑い声。声の主はレイチェル先輩。
「............ひひひひひひひひ!」
「カプリコーンが変な事言うから壊れたよ」
「わ、私のせいですか!!?」
「うふふふふふふふ!」
「ギャハハはははははは!!!!!!!!」
シャリー先輩とテイラー先輩もそれぞれ可笑しな声を出し続けている。歪んだ顔。ひ弱な獲物を弄ぼうと企てる卑劣な輩の笑い声。気狂いな笑い方だった。
周りにいた生徒は三人の奇妙な行動に恐怖する。
自分達に矛先が向かないように距離を取り始める。賢明な判断。予想が正しければ彼女たちの目的は私とカプリコーン。
背中合わせになる。
「ここに来て学園の縛りが効いてくる」
「『清浄なる世界へ』が使えないのは痛いですね」
恐らく三人は洗脳されている。状態異常なら清浄なる世界へで解ける。問題はここがアグネス女学園の内部であること。
「逃げつつ学外に誘き出す」
「了解しました」
足に力を込める。
だが、既に遅かった――――――
天井が割れる。ガラスのように亀裂が走る。亀裂は徐々に大きくなり空間全てに効力を発揮する。
「......はぁ!?」
天井から大量の水。降り注ぐ滝が私とカプリコーンを襲う。
咄嗟にカプリコーンの手を握ようとしたが、荒波に身体の自由が効かず、握れず激流に呑み込まれた。
波に逆らえず水中を流されてから数分後。壁に身体を預けこれ以上動かないようにした。徐々に水位も下がり、やっと息が出来る状況にまで戻った。
「あーしんどかった......っ」
強制ソロプレイのための処置なのか分からないけど、激流は聞いてない。
「まー以前も波に呑み込まれて孤島に移動したっけ」
あの時はパンイチ博士が砂浜にいた女性ばかりを狙う人工波を開発していた。何かと波に縁があるね、私。
床が水浸し。歩く度にピチャピチャと音がする。波紋も広がりを見せる。
「外も真っ黒......」
現在お昼過ぎ。太陽はまだまだ昇っている。が、空間が割れたと同時に外の様子も変化していた。
「異空間に誘われた......か」
取りあえずカプリコーンと合流するのが先決。
「......!!」
ピチャ
ピチャ
ピチャ
私は歩いていない。後ろから聞こえてくる。
振り返ると女子生徒がいた。
「テイラー・ブロッサム先輩......!!?」
元の世界で出会った時と同じく虚ろな目、腰は曲がり身体全体が前に傾いている状況。
『......うっ』
テイラーが下を向く。完全に気を失ったように見えた。テイラーの身体は背中が上のまま浮き出す。
魂が抜けたような謎の物が彼女の背中から。謎の物体は水で構成されたヒモに似た物が生えてきた。ヒモは形を変える。膨らんだ身体。捻れた水紐が身体に纏う。胴体と顔に境目はない。顔部分に赤い球体が一つ、赤い口が水状の身体に産まれた。
赤い球体は開く。瞳がぐるぐる廻る。
「不気味な姿......」
おぞましい怪物には足がない。空中で立位体前屈姿勢のテイラーが代わりになっているからだ。
「【願き者の源水】。こいつが【噴水の悪魔】や【願う噴水】に該当するモンスター」
裁紅の短剣を装備。
「お前を倒せば元の世界に戻れる」
【願き者の源水】の瞳が真っ直ぐ私を凝視する。
ニヤリッ!
醜悪な笑みを溢す。




