監督生がやってきた
ターボババアのクッション最高!
ゲンガテン、神!!!!
ただ、Tシャツ君。普段のサイズで購入したら圧倒的オーバーサイズだったけど?
情状酌量なし。ちゃんと着るけど!!
オリバー先生との邂逅。あちらからアプローチしてくるのは予想はできていた。しかし——————
カプリコーンが言う。
「何もありませんでしたね」
「ま、変な駆け引きを仕掛けて来なかっただけ収穫かな」
結果から言うと、なんて事のない一コマだった。『生徒を救出してくれてありがとうございました』や『ユミナさんの戦闘は目を見張るモノがあります』、などの感謝やアドバイスの言葉だけを言ってオリバー先生は私たちと別れた。
カプリコーン曰くオリバー・リーディエントは生徒からも他の教師からの信頼の厚い教師。おまけに学外で冒険者兼バレエを仕事にしていた実績もあるので教え方も戦闘指南も上手い。生徒からは良く人生相談を受けているほど信用されている。
赴任してから三年。教師陣の中でも絶対的地位を確立している。数々の優秀な生徒を育てた功績が認められて理事長のレナード・アウロ・ブリジットから学内で魔法使用を許可されている。
「調査書を見る限り、完璧な教師って印象だよね」
「えぇ......裏の無い人物と言えます」
「逆に言えば、裏を徹底的に隠している。人間なんて腹の中では何を考えているか分からない種族だからね〜」
カプリコーンの調査書をペラペラしながら私は言った。
「......ご主人様も人間の一味ですよね」
「”一味”言うな。さて、あちらさんの出方はどうかな〜?」
「オリバー・リーディエントは私たちは教師を怪しんでいるとは予想していないはず。なら攻めるのもアリ、と考えます」
◇◆◇
【1−4】が騒然としていた。
私たちは目を合わせる。何事かと———
「やっと来た! ユミナ!」
教室から出てきたのはミネルだった。
「どうしたの?」
「【監督生】がユミナに会いに来たわ!」
私とカプリコーンは同時に同じ結論に至っていた。
”先に【監督生】か......”、と。
「案外、行方不明の生徒を救出した感謝の言葉を言ってくるかも〜」
「カステラ様のお話では、普通の生徒はお近づきもできない状況。私たちが行方不明の生徒を救出。既に学園内で注目の的になっております。認知してもおかしくないですね」
特定のNPCがプレイヤーの行動が変化するのはゲームの常識。ここは考えをプラスと捉えるべきかもしれない。
しかし楽観視はできない。
「オリバー・リーディエントは生徒会顧問。そして今生徒会と【監督生】は合同で運営している。【監督生】がご主人様に接近してくるのは不思議ではありませんね」
「さ、鬼が出るか蛇が出るか。乗ってみましょうか!」
私たちは【1−4】の教室に入る。
「えぇ!!?」
私の席に居たのは確かに【監督生】だ。それは間違えない。他のNPCよりも制服が魔改造されているからだ。誤算があった。
『貴女がユミナさんですね』
三年生、レイチェル・ライラックだ。
ルビーの瞳で私を認識し、移動する【監督生】。
深い紫色の制服が視界に入る。紫色は昔から高貴な色と称されてきた。
縦ロールを構成している透明感のある黄褐色が揺れる。
私の考えでは同じ一年生の三人。
・ジェニファー・ホリホック
・ラクエル・クリュザンテーメ
・エリザベス・ラゲナリア
この三人が来ると踏んでいた。
「お初にお目にかかります。【1−4】、ユミナです」
片足を斜め後ろに引き、もう片方の膝を軽く曲げる。背筋を伸ばしたままお辞儀を三年の【監督生】でもあるレイチェル・ライラックにした。カーテシーの挨拶。いくら私たちが注目の的でも一介の女子生徒。上級生、しかも【監督生】の代表とも言えるレイチェル・ライラックには礼儀正しい挨拶は必須。
「そんなに畏まる必要はありませんわ」
「......分かりました」
そう言って姿勢を戻した。
なるほど。自称似顔絵を見て、間近でレイチェル先輩を拝見すると納得した。ファンクラブが出来ていてもおかしくない。きっと【3−5】ではヴァルゴとレイチェルが築き上がっているな、と。
片や容姿、声、身のこなし、教養。誰に対しても分け隔てなく紳士的対応をする。見た目からも人間を超越した美女。加えて同世代からは味わえない色気。教師よりも圧倒的経験豊富な雰囲気から人生相談を度々受けるとか。自分で”結婚済”と言ってにも関わらず女子生徒から毎日求められるらしい。
片や何処か近寄りがたいミステリアスな雰囲気を醸し出している。が、三年間磨き上げた実績は本物。淑女としてのレベルも超一流。見た目も同年代の少女よりも至極美人。受け継がれた血もまた確か。家名に恥じない身の振り方。誰もが畏怖と尊敬の念を心に秘めている。
「貴女が......」
少し疑問に満ちた顔を浮かべるレイチェル。
何か粗相したかな〜
何気に初カーテシーだった。リーナに教わったから実践してみたが上手くいかなかったようだ。現にレイチェル先輩は私をマジマジと観察している。
「ユミナさん......」
私に近づくレイチェル。そして言った。
「貴女の従者3名。わたくしに下さらない」




