システム障害=記憶障害。その4
サブタイのサブタイ
『泣いたっていい』
2025年3月6日、6時投稿します!
机に突っ伏ししている私の上から本が落下した。
脳天に強打された痛み。悶絶し始める私を見て、苦言するオフィ。
「全くだらしないわね」
「うるさい......。痛ッ」
後頭部に手を置き、着地した見開きの本を睨む。
本が自由落下しただけ。大したダメージは発生しない。でも、本自体に意志があると状況は変わってくる。
自分の加減で本の落下速度を上げる、下げるのも容易だ。生きた本とも呼べる。私が不甲斐ないから意地悪な本さんは速度を上げて私を叩き起こしたのだ。
ボルス城を出た私は、行くあてもないままヴィクトール魔法学園に到着した。魔法学園に常駐してあるダンジョンから帰ってきたカレッタと遭遇して事情を説明した。でも、結果はヴァルゴたちと同じ。私のことは覚えていない。私とは”初めまして”の関係になっていた。
失意のまま大図書館に入った。大図書館の扉は正常に稼働。私が入る動きを見せても攻撃してこなかった。
しばらくは机でふて寝。使い魔を全て召喚して。せめてもの慰めとして。一人でいるのは怖かった。
目が覚めた時には私の周りに使い魔たち。みんな熟睡している。
少し頭が冷静になった私。色々確認へ移った。
使い魔は私のことを主人と認識している。だから、問題ない。
星霊はみんなダメだった。カレッタ同様、”初めまして”。実際に体験したから間違えない。
(アリエスのビンタ......まだヒリヒリする)
無意識に頬を触る。
介抱した人が自分の仲間を殺した。誰だって手を上げる。私だって同じことをする。
あの状況でハッキリした。みんなも私と過ごした記憶がない。石化前、星霊が組織として活動していた時代の記憶しか残っていないと予想される。この予想なら私との思い出がないのも裏付けれる。
星霊だけではなく、私の従者全員も例外なく記憶がなかった。
ボルス城を去る者や現状把握と次なる行動のために城に残る者に分かれた。
アシリアを探したけど、城内にはいなかった。カレッタの状況からもおおよそは検討がつく。でも............
「最後は......」
エヴィリオン・ヴィクトールとオフィュキュースの本。本は普通に開け閉めできる。中から登場する半透明の人物たち。彼女たちはちゃんと私との記憶を保持していた。
ケンバーは黙り込む。考えているのだろう。で、オフィは。
「怒ってるの?」
燃えるような怒りの瞳が私に刺さる。
「別に......」
鋭い声。
「ユミナちゃんが自発的に好感度を下げる行いはしない。ならこれ以上、ユミナちゃんを追い詰める行為もしない」
星霊との好感度はゼロになってる。
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・乙女座:好感度:0
・牡羊座:好感度:0
・牡牛座:好感度:0
・双子座:好感度:0
・山羊座:好感度:0
・獅子座:好感度:0
・水瓶座:好感度:0
・蟹 座:好感度:0
・射手座:好感度:0
・蠍 座:好感度:0
・天秤座:好感度:0
・魚 座:好感度:0
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好感度がゼロ。これによって、【星霜の女王】の専用スキル・魔法が使用不可になってる。
星刻の錫杖はただの魔法使いの杖になってしまった。
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スキル:星なる領域→使用不可
仲絆の力→使用不可
簡易の偽月→使用不可
煌めく流星→使用不可
自我が消滅した静かなる殺戮者→使用不可
新時代の万有引力→使用不可
魔法:清浄なる世界へ→使用不可
月光からの愛→使用不可
無限と夢幻→使用不可
輝を射抜け、真なる青よ→使用不可
十三人の禁断協調→使用不可
宇宙最大の大いなる意志→使用不可
未来の世界は有終の美→使用不可
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「......ありがとう」
「ハァ......————————。情けないわね」
「私の記憶がない星霊を初めて、見た」
ダメだ。ここは耐えないと。私がしっかりしないと。だから......
「泣いたっていいじゃない」
「えっ!!?」
オフィは振り返る。背中を見せる。オフィからは哀愁の雰囲気が漂っていた。
「この場所にはアンタ以外、人はいないんだから」
視界がにじむ。ずるいよ。ずっと我慢していたのに......
「私......ごめん、ごめん。ほんとうに......ごめんなさい」
嗚咽が漏れる。
使い魔たちが私に触れる。
「みんなが私を知らない人と認識してて、私を知る人は誰もいなくて......」
身が震える。
「私が何かしたってずっと、ずっと考えちゃって」
顔を手で覆う。
「星霊だけじゃない。従者になった多種族のみんなや知り合った人々が......」
身を丸め、うめく。
「冷たい態度ならどんなに良かったか。少なくとも私に原因がある。でも......何もない。みんな初めから私を知らない態度だった」
悲しかった。辛かった。自分がおかしくなったと錯覚してしまう感覚だった。
「状況打破しようとがんばった。でも、うまくいかなかった。一つも......」
頬をつたう涙。
隠さないと。拭うけど、消えない本音。
流れ落ちる涙は止まない。
使い魔たちの私を抱きしめる力が強い。強いけど優しかった。
心配してくれる。どんなに心が安らぐか。
ポロポロと泣きながら、オフィを見る。
「オフィ、ごめん。」
「ワタシに謝ることがあるの?」
「貴女の意志を台無しにして......」
オフィはため息を吐く。やれやれと首を横に振る。
「ワタシの計画はほぼ完成してる。今更、路線変更があっても」
私のおでこへ猛スピードで向かってくる。
本とぶつかる。クリティカルヒットしてのけぞる。
「ユミナなら、なんとかいけるでしょう!」
笑顔だった。いつもの作り笑顔ではない。心の底からの本当のオフィの笑み。
キュンとした。見惚れていた自分がいる。
眼を逸らす。
オフィにドキドキするなんて、一生の不覚。
「バ、ババアが色気付かないでよ」
「ふ〜〜ん。ま〜〜ぁ。ユミナちゃんの貴重な泣き顔を見れたから良しッとしましょう!!」
「ちょっと!!? 悪巧み、考えていないでしょうね」
「さぁ〜〜 ユミナちゃんの態度次第かな〜」
「こっちが下手に出ていれば......」
「ユミナちゃんのイジり材料が尽きてきたタイミングだったから良かったわ!!!」
「はぁ〜 もういいや。絡むだけ疲れるし。ありがとう、オフィ」
「永遠に感謝しなさい」
悲しみの涙は洗い流される。新しい涙は温かい本音だった。
私とオフィの笑いを皮切りに使い魔全員が嬉しそうなる。
メッセージウィンドウが展開。クイーンからだった。
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サングリエに集合できないか
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オフィやケンバーはあくまで本に宿っているだけの残留思念体。NPCのカテゴリーではなくアイテムのカテゴリーに分類される。魔術本から召喚される使い魔たちも同様。あくまで本アイテムに分類されている。
星霊の好感度はゼロ(記憶がないのでリセット)加えて【星霜の女王】の専用スキル・魔法が使用不可。ユミナちゃんは【星霜の女王】になれない。同時に【魔導龍王】はユミナちゃんがドランと契約したことで取得したジョブ。契約モンスターも”モンスター”と明記されているが分類上NPC扱い。契約前はプレイヤーに立ちはだかるモンスターである。契約したことで他のモンスターとは一線を画す存在になる。よってユニークNPC扱いになる。ドランもユミナとの記憶がリセットされたことで【魔導龍王】は機能しない。
今のユミナちゃんの最強ジョブは【魔導剣士】。次に【魔術師】となる。
本来のゲームシナリオでは星刻の錫杖をゲットしたプレイヤーはスラカイト大陸とリリクロス大陸をくまなく探索して、偶然発見した星霊たちと邂逅する。一人一人と親交を深め好感度を上げる。一人が一定以上の好感度に達したことでユニークジョブ【星霜の女王】が手に入る。
しかしオフィの暗躍で石化された星霊たち。星刻の錫杖の魔法で幾年(約数千年〜数万年)の石化から解放された星霊たちは衰弱&減退状態。誰も知り合いがいない・心細いなどの精神・身体がおかしくなる。なので解呪をしてくれた星刻の錫杖を持つプレイヤーに対して一種の依存状態になる。




