白銀の主と気高い従龍
頬を抑えるバシャ。立ち上がり臨戦態勢を取る。表情は殴られる前よりも圧倒的に余裕がない笑みだった。
「くっ! な、なんでだァァアアアアア!!!」
無数に展開された魔法弾。
「オレは強いんだ! 貴様などに負ける訳がねぇんだよォォオオオオ!!!!!!!!」
魔法弾の雨へ私は向かう。
裁紅の短剣で弾く。捕食者の影爪を盾として防御する。
回避しつつ、捕食者の影爪に付いている三本の【リッキープレイド】を取り外す。
外された【リッキープレイド】は、30cmサイズの短刀になる。
投げナイフとして魔法弾を消す。
「武器を自ら無くすとは、愚かな」
一発の魔法弾を三枚下ろしする。
復活した鉤爪に驚くバシャ。
「なんのこと?」
ま、知らないのも無理ないか。捕食者の影爪の性能は私とタウロスだけが知っている。捕食者の影爪の内部には【リッキープレイド】が蓄えられている。最大三本を外に出現できる。
投げナイフでも短刀としても扱える。武器だけど、一応消費アイテム扱い。
【リッキープレイド】は消耗品。当然、補充する必要がある。
捕食者の影爪に太陽エネルギーを浴びせることで内部で【リッキープレイド】が生成される。闘技場に来る前に太陽エネルギーを吸収してある。
捕食者の影爪にはもう一つ、能力が備わっている。
確実に前進し、バシャに迫る。
◆
特大の一撃。ユミナに降りる。
周囲が爆風へ。至近距離からの一発。期待していなかったバシャ。
笑みを溢すバシャ。追撃とばかりに霧を発生させる。敵の体を蝕む攻撃。毒霧はフィールドを覆う。
「流石に、ダメージは入るか」
魔法弾の攻撃はユミナは喰らっていた。全損ではない。
煙の奥には人影がある。状態異常:『毒』は全身を侵蝕するまで時間がかかる。
それでも、濃い霧は誰も逃れられない。発生させた自分でも触りたくない瘴気。
観客は煙が吹き飛んだフィールドに釘付けだった。
大地に怒轟が鳴る。地面がうねりながら揺れた。
中心地は、溢れる禍力の抑えが効かず、狂大な威圧感として放出し続けた。
白銀の輝き。雪のように舞う。
『綺麗......』
人々は魅了された。全員が目を奪われる。ユミナから放たれる眩い光。強大な力を持ちながら、優しさも兼ね備えていた。
溢れ出す輝きは、ユミナを祝福していた。毒霧も完全に消失している。状態異常を受けている様子はなかった。
「来なさい」
嘲笑された。血が昇り、怒り顔のバシャ。
バシャの背後に魔法陣。外に飛び出したのは、巨大な人骨と腐ったドラゴン。
一つの骨に見えるが、目を凝らせば人骨が無数に繋がっていた。多くの死者たちを葬り、生まれたと思わせるフォルム。骸骨の姿はガチガチという音を鳴らす。眼は左右縦横、動き回っていた。
もう一体は、見た目そのまま。腐っているドラゴン。肌は灰色と紫色が入り混じる。口からは黒血が吐血していた。肌からは留まることはできず、肉が地面に落ちる。
右を『星刻の錫杖』から『裁紅の短剣』に戻した。
さて、どうするか......。私が二体も殺るのはいいけど。来るかな? 最近、呼んでも召喚に応じないし。
『龍の波動が出たかと思えば......』
私の背後に龍の刻印が入った魔法陣。渋い声と共に、黒銀色のドラゴンが顕現した。
機械と融合したドラゴンは翼を大きく羽ばたかせ、見下していた。
「おい、ユミナ。いつまで遊んでいる」
ユミナと普通に喋っているドラゴン。他プレイヤーは巨大なドラゴンを目撃していない。せいぜいワイバーンやバシャが召喚した朽ち果てたドラゴン。
突如として、現れたドラゴンは紛れもない『力』の権化。しかも、機械の翼を展開した状態に誰もが驚愕した。
「いきなり、現れて。随分、偉そうね......ドラン」
「ふん! ユミナに負けじと修練していただけだ」
「だったら、その修練の成果見せてよ!」
ドランはバシャの方に視線を向けた。
「へいへい......」
明らかにやる気のない返事。
「ねぇ、ドラン。一個、命令を出すわ」
冷たい眼差し、低い声をドランに。私の瞳にドランは目を見開くだけだった。
「本気でやりなさい」
つまらそうな態度はなくなる。真に迫る表情のドラン。
ユミナへの敬意。応じるドラン。
「仰せのままに。我が主」
まったく......
「ごめんなさいね。さぁ、再開しましょうか」
バシャに攻撃を仕掛けるユミナ。ユミナの後ろ姿を見るドラン。
「......良い『女』になったなッ!」
自分が漏らした言葉に反応する者たち。重々しい圧がドランに襲いかかる。
気のせいだと無視した。不敵に嗤うドラン。標的は二体。骸骨と腐ったドラゴン。
巨体全てで相手を威圧する。強烈な迫力、如何なる者に牙をむく戦意。
「主の命だからな。我の全てを出し尽くす! キサマら、十秒は保てよ」
妖しい光と共に、狂わしい咆哮を出す。




