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日帰り異世界は夢の向こう  作者: 扶桑かつみ


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113「宝探し(1)」

「さあ、これからが冒険の一番重要な事だよ!」


 一通り騒ぎ終えたボクっ娘が、振り向きざまに近寄ってきたオレに呼びかけてきた。


「まだ何かあったっけ? って、死者の埋葬と沢山のアンデッドじゃなくて、この国の人達込みの鎮魂しないとな」


「うん。鎮魂はボクには無理だけど、死者の埋葬とお宝集めね。それが終わってから勝利の凱旋と大宴会。最後まで全部しないと、冒険は終わらないんだからね。知らないの?」


「言いたいことは分からんでもないけど、今回のは冒険なのか? それにレナって冒険にこだわりあるのか?」


「ウン、そうだよ。冒険にこだわるのは、ボクのアイデンティティー!」


 そう言って、無い胸を反らす。

 お約束な仕草に忠実なのは、むしろ有り難い。


「はーっ、そうなんだ。じゃあ、そのキャラ作りとかもか?」


「まあ、かなりね。伊達にこの格好はしてないよ」


 アニメやゲームっぽい格好に突っ込みを入れると、ストレートな返答があった。

 けど口調に反して、意外という以上に真剣な眼差しがオレに向けて注がれた。

 が、それも一瞬だった。


「で・も、流石にミニスカは色々危険なんで諦めたけどね。わざとパンツ見せる痴女趣味も無いし。

 そんなことより、これからが忙しいよ。ショウはまずはアクセルさんと合流。奥に何かないか探してきてね。ボクたちは、念のためこの部屋の捜索。それと、上で倒れた人たちの埋葬も絶対忘れちゃいけないよ」


「おう。埋葬ね。そういえば、オレは最初に人を倒した時めっちゃ凹んだけど、レナはそういうのは大丈夫なのか?」


 思わず言わなくて良い事を差し挟んでしまったが、レナは怒る素振りすらなかった。


「ボクは最初が空中戦だったから、意外に平気だったかな。それとね強い者は、強いこと、強さに必要以上におごらないこと、相手を倒すこと、倒した者を無駄なく糧にすること、全部当たり前に受け止めないといけないんだよ。

 これ、師匠の受け売りだけど、ショウも自覚しなきゃダメだよ」


「お、オウ。レナのこと少し誤解してたかも」


 オレの態度までが、上位モードから対等モードになってしまっていた。

 それに、ニカっと大きな笑みを浮かべたボクっ娘が答えた。


「誤解も見直しもいらないよ。ボクはボクだからね。それよりも、さっさと動く」


 そう答えるボクっ娘の顔は、確かにこの世界で生きている者の顔だった。

 そんなボクっ娘に命じられるまま、ゴーレムがやってきた地下の奥へと進む。


 先にアクセルさんが様子を見に行っているし、特に物音等も聞こえてこないので危険はないはずだ。

 それに暗がりの奥に、アクセルさんが持っている魔力で光る石を入れたランタンが揺らめきながらゆっくり移動しているのが見えている。



「アクセルさーん、何かありましたかー?」


「何かありそうだよー」


 中はゴーレムが歩いてきただけに広く、廊下のような空間を30メートルほど進むと、恐らくゴーレムが鎮座していたであろう大広間の半分ほどの広い空間に出る。


 それほど華美な場所ではなく、壁などの彫り物や装飾も多少見られる程度だ。

 ゴーレムは本来ここを守るための守護者だったのか、それともゴーレム自体を保管しておく場所だったのか、判断のつきかねる場所だ。

 それに手持ちの明かりでは、全貌を照らすこともできていない。


「何か光っていたり、色々話していたみたいだけど、どうなったのか聞いてもいいのかな?」


「妙なことになりました。百聞は一見に如かずなので、後で話します。それより何かって?」


「どうやらここは、古代の貴重な物を保管する場所のようだね」


「推定ってことは、まだ何も見つけてないんですね」


 しかしアクセルさんは首を横に振る。


「魔導器に関する場所だと思うよ。もしかしたらゴーレムを動かすための部屋だったのかもしれない。ホラあっち、おそらく昔は通路か扉があったんだ」


 ランタンで照らした先は、通路か門の形に作られた後に塞がれたように石の壁が作られていた。確かに言う通りだ。


「なるほどー。けど、あのゴーレム以外は何もなかったって事ですか?」


「そうでもないよ。ゴーレムを動かすためだろうけど、そこらに魔石が転がっている。

 使い捨ては全部壊れていたけれど、蓄える型もあるから使えると思うよ」


 アクセルさんの手には、すでに3つの魔石があった。


「おぉ、いい感じですね。じゃあ、探してみましょうか」


「だね。他にも何か見つかるかもしれない」


 そしてかなりの広さがあるので、二人で探しているとそれなりに時間が経っていたらしい。

 女性組も奥へと入ってきた。

 そしてハルカさんとシズさんが、それぞれ明かりの魔法で周囲を照らす。

 それでようやく空間の全貌を見る事ができた。


 思った以上に大きな空間だけど、二つの空間を繋ぐ通路の方はゴーレムが歩くにはギリギリといった感じだ。

 そしてその場は、かつては半ダースほどのゴーレムを安置ないしは格納する場所のような感じを受けた。

 しかしそれぞれの場所に、ゴーレムの姿はない。



「何かあったー?」


「チャージタイプの魔石くらいだな。広間は警戒してなくて大丈夫か?」


「上位の感知魔法にも敵性のものは感知してないから大丈夫だ。それより魔石?」


「あのゴーレムのエネルギー供給源だったらしくて、そこらじゅうに設置してあったり、落っこちてます。ホラ、こんなに」


「おーっ、大漁だ! チャージタイプならけっこうな金額になるね」


 オレがジャラジャラと見せると、ボクっ娘がすぐ側までジャンプして覗き込んできた。

 他の二人は、それほど感心は高くなさそうだ。


「一回きりのやつはだいたい壊れてるから、これはチャージタイプだ。アクセルさんも同じくらい持ってるぞ」


「そりゃ、ひと財産だね。ボクも探そうっと」


 ボクっ娘は、そう言って明るくなったおかげで探しやすくなった空間を小走りに探しに行った。

 オレはいちおうシズさんに用があった。


「魔女になっていた方のシズさんが使ってたみたいですけど、ここって初見ですか?」


「ああ、調べる予定のあった場所だが、これほどの空間がまだあったとはな」


「魔石とかは、この国のものですか?」


 そう言うと、オレの手元の魔石をのぞきこむ。


「印字や刻印があればそうだが、違うな。しかも古そうだ」


「なら、こちらも見て……えっと、何があったのかな?」


 そう言って近づいてきたアクセルさんが固まった。

 オレたちの方を見ているが、見ているのは実体化したシズさんの頭に生えている獣耳だろう。

 尻尾も見えているかもしれない。

 もっとも、簡単に説明すると意外に納得してくれた。


「なるほどね。今も獣人の国はあるけど、随分昔に大陸中原で獣人が隆盛した記録がある。その頃にも魔物が増えて、それを獣人達が鎮めたという話も。この遺跡も、もとはその時代のものだったのかな」


「どうだろうか。遺跡を見る限り、獣人族を思わせるレリーフや彫刻は見られないが」


「そんなの後回しでいいでしょー。それより手伝ってよー、そこら中に落ちてるよ。ショウもアクセルさんもどこ見てたのー!」


 離れた場所からのボクっ娘の声で、しばらく手分けして魔石探しと他に何かないかを調べた。

 けど、大量の充填型の魔石以上のものは見つからなかった。

 文字や魔法の模様なども、ゴーレム起動のものが若干見つかった程度で他は見当たらなかった。


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