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第二百六十六話 倒木

この道は通行止めだ。他を当たれ(〇グナー司令)

 屋敷に戻って色んな書類を片付ける。ついでに到着が遅れそうなの 事も伝えておこう。


「えー、こっち帰るの遅くなっちゃうんですか?」


 ベッキーが心底残念そうに言う。そんなに子どもたちに早く会いたいのかと思ったら、「掃除の手伝いとかさせるつもりだったのにー」などという事を言ってた。


 ちなみにベッキーはお掃除の才能があってしかも好きみたいで楽しそうにしながらも念入りにやってくれる。ビジュアル的にも掃除機とかモップが似合うよね。どっちもないけど。お洗濯もベッキーの仕事。仕事が早いし体力もある。


 なので先程の言葉も額面通りではなくて、「新しい新入りたちと仲良くやりたい」という気持ちの表れだろう。


「仕事しなくて給料貰えたら最高なのになー」


 気持ちの表れ、だよね? それはまあいいや。ラヴィアは微動だにせず、メガネをクイッとした。ちなみに伊達メガネだ。だって似合うと思ったんだもん。実際似合ってるし。


「私も、色々仕込みたいところですね。不意の不在とか、お使いとかやらせることもあるでしょうし。それよりキュー様、こちらを」


 書類の山が一山追加された。びっくりしてるとラヴィアは事も無げに言う。


「到着が遅れるとの事でしたので、遅れる予想の日付の分まで持って参りました。早めのご決裁をお願いいたします」


 頭痛生理痛情緒不安定悲しくないのに涙が出ちゃう。だって女の子だもん。うん、とりあえず書類片付けて……ん? 祭りの許可?


「ああ、はい。春告の祭りですね。雪解けを祝い、みんなで今年も頑張ろうと山の神に感謝する祭りです」


 あー、まあそういう類のやつね。この世界の宗教は主に「真教」。これは不思議なことに元の世界と同じ名前なんだよねえ。これ、絶対どこぞの創造神様が関わってるでしょ?


 山の神というのはそういうのとは違って、山とか大河とか森とか、そういう人知の及ばないところには神のような存在がいるという信仰だ。まあ一種のアニミズムというやつですよ。


 当然ながら山岳地帯だと山岳信仰とかがある訳で。高い山とかは霊峰とか崇められたりする。まあこの辺りはそういう霊峰とかじゃなくて、「恵をもたらしてくれる山」を神格化したものだろう。まあ、とにかく山に感謝!ってやつ。


 当然ながらそういうのに祭祀はつきもので、村をあげて祭りを行い、山の神を祀る。まあこんなことくらいでヤキモチ妬く程あの創造神様も暇じゃないよね。というか多分決算とか近いんじゃないかな? 今度は私ら呼ばないで欲しい。


「なんかうちから提供するものあるの?」

「そうですね。ゴンドザの街である程度仕入れるための資金が必要と思います」


 やはり世の中お金である。まあそれなりに報酬も貯まってきてるし、そもそも私一人だと使い切れないからね。ここは村のために拠出させてもらおう。ということでラヴィアに任せた! まあラヴィアなら中抜きとかそういうこすい真似はしないだろうしね。それやったら次に働くところがないからだよ! まあラヴィアだけでなく三人には好かれてるって自負もあるけど。手とか振っちゃえ。あ、ニッコリ笑われた。でもなんだろう。寒気がする。仕事に戻ろ。


「夜食、差し入れ」


 アンヌがお夜食を持ってきてくれた。寝ててよかったのに私が起きてるから頑張って起きて作ってくれたんだって。愛の味がするよ。あ、このご飯持って帰っていい?


「構わない、けど、同行してる、商人は?」


 あ、言われるまで気づかなかった。朝ごはんにいいかなって思ったんだけど。まあしょうがないか。でもアイテムボックスには入れておこう。


 とりあえずベッドで仮眠してから馬車に戻る。戻ったらタオが起きてた。


「おはよ」

「あ、うん、おはよう」

「どこ行ってたの?」

「自分の屋敷。書類仕事やらされてた」

「大変だね。というかさ、そういうのが出来るなら転移で屋敷まで行けばいいんじゃないの?」

「子どもらに旅を経験させるのも大事なんだよ」

「なるほどねえ」


 今回は私が連れて行くことが出来るけど、もし、何かの弾みで私がこの世界から消えてしまったりしたら子どもたちは自分の力で生きていかなきゃいけなくなる。いやまあ元がストリートチルドレンだからあんまり心配はしてないんだけど、それでも旅をするという経験は大事だ。


「という訳で日中は寝てるからなんかあったら起こして」

「はいはい。まあ私がいれば大丈夫だし、向こうの冒険者たちもそこそこの腕前だから。多分銀シルバーでしょ」


 まあ商人が護衛にカッパー以下を雇うわきゃないわな。いやまあ中にはお得な銅級冒険者もいるんだけど。えっ、ゴールド雇わないのか? いやいや、個人で金雇おうと思ったら莫大な金が必要になりますよ? タオは志願して着いてきただけだから雇ってるわけじゃないし。だから私から命令したりすることもない。今みたいにお願いはしたりするけど、その、と、友達なんだから別にいいよねっ!


 馬車でゴロゴロしながら旅程は進んでいく。途中で何度かモンスターの襲撃はあったが散発的なものだったらしく、商人さんの冒険者で事足りた。……まあ、その冒険者たちは私たちに不満そうだったけど。まあそりゃあそうだよね。傍から見たら寄生してるみたいだもん。


 私たちがやったのは川を渡すために簡易的な橋を作ったこと。これは冒険者だとどれ程の離れ業なのかは分かりづらいだろう。だって冒険者は倒すのが仕事だからそういう生産系の苦労はそこまでしてない。というか熟練の職人でさえ、平気で見下すやつがいるくらいだ。


 そんな奴がシルバーになれるのかと言えば、なれる。もっと言えば実力さえあれば人格関係なくゴールドにだってなれるだろう。……まあゴールドなんて性格破綻者ばっかりな気がするけど。あ、タオはマシな方だからね!


 おや、前の道が倒木で塞がれてる。これはアクシデントで倒れたものじゃないなあ。斧で斬った跡がある。ということは道を塞ぐためにわざと倒してあるやつだ。

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