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第二百五十四話 手筈

アンヌと大鷲便のマテウスさんの仲は良好な様です。

 無闇に転移テレポートを使うのもどうかと思う(今更だけど)ので、ゴンドザの街まで馬車を使うことに。なんか一ヶ月くらい掛かるらしい。そんなに遠かったのか。


 馬車は公爵家謹製の私用の馬車なんだって。いや、私にもそれなりの馬車はいるだろうって馬込みでくれるって話だったんだけど、作り上げた段階で私が転移もアイテムボックスも使えるから馬車の意味がないって気付いたんだと。いやいや、ほら、人とか家畜とか運ぶのには必要なんだよ!


「それじゃあ一ヶ月よろしくね。出発するよ。あ、時々私は馬車からいなくなるかもしれないけど夜には戻ってくるからね!」


 私が居なくなるというのを聞いて不安そうな顔をしていたがわかってくれたみたい。ジェニーちゃんが一緒に行ければ精神的な支えになると思うんだけど……いや、ビリー君の腕に自分の胸(そこそこ大きい)を押し付けてるのを見たら何も言えません。子どもが産まれたら見に来るからね!


 さて、メンバーの紹介だ。まず、十歳組。まあいわゆるお姉さん的な役割を期待してる。グリッシーニちゃんとパニーニちゃん。グリッシーニちゃんがしっかり者でパニーニちゃんがのんびり屋だ。


 続いて八歳の二人。パンドーロちゃんとコロンバちゃん。パンドーロちゃんは頭良さそう。目付きもキリッとしてる。コロンバちゃんは料理に興味があるらしく、食堂のおばちゃんに隠し味なんかを聞いていた。


 最後は万紅叢中緑一点。唯一の男の子であるネロ君御歳五歳だ。うん、まあ名前が名前だけど芸術に興味もなければ、でかいぶち犬を連れてる訳でもない。恐らく教会に行ってルーベ〇スの宗教画を見ても何とも思わないだろう。ちなみにパニーニちゃんの弟らしい。なるほどね。


 さて、馬車の旅だけど、とても揺れる。公爵家の馬車だから揺れは少ないと思っていたのだが、そんな事もなかった。これはすぐにおしりが痛くなる。というかこの世界で長旅が流行らないのは間違いなくこれだよね。アンダーゲート行きの馬車の時は道が舗装されてたからあれでもマシだったんだなあ。


 しかぁし! こんなこともあろうか、私は密かにクッションを作っていた訳です。おしりの下に敷くんだよ。クッションを取り出したら物欲しそうな目で見られた。子どもたちが痛い思いをしてるのに私一人が逃げる訳には!


 私は転移でエッジに戻り、布団を買って子どもたちに配りました。煎餅布団じゃないぞ。とても寝心地の良い羽毛布団だ。何の羽なのかは分からないけど!


 そのまま馬車は進み、日が暮れようかという辺りで開けた場所に着いた。ここをキャンプ地とする!


 そうと決まれば食事の準備と寝泊まりの支度だ。馬車は大きくて子どもたちは小さいのでテントを使わずに馬車の中で寝泊まりする。羽毛布団もあるしね!


 となれば後は食事だ。枯れ木を集めて火を熾すのはスラムでもやってたみたいで手馴れていた。まあ火は私が熾したけど。発火パイロキネシスの火力は上がってるんだよね。あ、応用で火を熾さなくても光を出したり、辺りをあっためたりとか出来るようになりました。これで寒い夜も安心!


 馬車の中を暖かくするのは大事なことです。まあその前にご飯だ。パンはアイテムボックスに入れて持って来たからそのまま出してあげる。


 後はスープだけど、お肉が食べたいというので狩りをしてきました。うさぎが居たので二匹ほど捕まえました。角は生えてないよ。なんか異世界のうさぎは角が生えてるみたいな事を聞いたことがあるんでね。


 血抜きをして(私じゃなくてコロンバちゃんがとても手馴れた様子でやってくれました)鍋に肉を入れて、グツグツ煮込む。塩とか出してあげたら喜んで使ってた。ついでに胡椒も出したら「そんな高級なもの使えません!」って怒られた。百円くらいで買えるから高いと思ってなかったよ。


 コロンバちゃんの味付けのスープはとても美味でした。何時でもお嫁に行けるよ! 私は行かないけどね。……料理が好きじゃないからじゃないもん!


 みんなが馬車の中に入ったら周りに障壁バリアを張ってお休みなさい。今のうちに転移で屋敷に戻っておこう。


 転移したらベッキーが居た。私が突然現れたことに多少驚いていたが、「おかえりなさいませ、キュー様!」と笑顔で出迎えてくれた。


「ただいまベッキー。あ、ちょっと話があるからみんな集めてくれる?」

「分かりました!」


 そう言ってドアの外に出たと思ったらバタバタ遠ざかる音が聞こえた。それから五分もしないうちに三人分のバタバタが聞こえてベッキーと一緒にラヴィアとアンヌが一緒に飛び込んで来た。


「おかえりなさい、キュー様!」


 飛び付いて来ることはなかったけど三人とも嬉しそうだ。あんまり帰らなくてごめんね。


「キュー様、決裁していただきたい書類がいくつもあるんですが」


 ごめんなさい、ラヴィア。任せっぱなしで。うん、とりあえずどんな内容なのかは後から確認させて。


「三人に集まって貰ったのは他でもない。新しく従業員というか使用人を雇うことになりました!」


 三人は「はぁ」とため息をついた。えっ、何で? 勝手に決めたから呆れられてる?


「そうですか。長い様で短い間でしたが堪能出来ましたからね。後進に道を譲るべきでしょう」

「とても残念。色々作りたかった」

「そんなぁ。ここを追い出されたらどこに行けばいいか」


 あれ? なんか三人とも勘違いしてない?


「待って待って!? 三人に辞めてもらう訳じゃないよ! この屋敷に新しい仲間が加わりますって話!」

「この屋敷、もう人要らないですけど」


 確かに今まで三人で回してたもんね。でも聞いて! これには深い事情が。


「ライバル望ましくない」

「アンヌ、ちょっとちゃんと話聞いて」


 私は三人に懇切丁寧にどうして子どもたちを雇うことになったのかという経緯を説明した。というか子どもたちというのに反応して年齢を聞かれたので一番年長でも十歳というとあからさまにホッとした顔をしていた。特にアンヌ。

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