第二百五十三話 就活
ジェニー「ち、違うんだもん! 別にビリーのそばに居たいから冒険者ギルド選んだ訳じゃなくて……そう! エレノアさんが素敵だから選んだのよ! 勘違いしないでよね!」
「あのね、ジェニーお姉ちゃんはね、いつも食べ物分けてくれる、優しいお姉ちゃんなの!」
「いや、それはビリーが先に分けてくれてたからで」
「ジェニーの方が先だったろ?」
「ビリーよ」
「ジェニーだ」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんはとっても仲良しなの!」
あー、うん、よくわかったよ。たしかにこれは「仲良し」だね。幼馴染レベルかなり高いやつ。なが一個多くなったり、今日から始めたり、おさげ髪がボブカットになって垢抜けちゃったりするやつだ。幼馴染って負けヒロインが多い印象だけど、この二人は違うみたいよね。ワクワク。
「もう何の騒ぎ?」
そう言いながらエレノアさんが奥から出て来た。私を見るとにっこり微笑んでくれた。
「それで今度はどんな厄介事を持ち込んでくれたのかしら?」
あれ? エレノアさん、怒ってる? 怒ってますか? あの、その、売られそうな子どもたちを人身売買組織から取り返して来ただけですよ?
「はあ、まあいいわ。魔の森の教団の要塞潰してくれたんだもんね。で、お風呂とご飯?」
「はい、お願いします。お金は払いますので」
「もう、気にしなくていいわよ。〈洗浄〉してもいいけど、お風呂の方が心が休まるものね」
「あ、材料ならここにありますから使ってください」
私はアイテムボックスの中から大鷲便で届けられたものの、消費しきれなくて困ってたやつを古いものからアイテムボックスに放り込んでいるのだ。いやだってもったいないじゃん?
「まあまあいいお野菜ね。それじゃあ腕を振るって貰おうかしら」
食堂の方でおばちゃんが腕まくりしていた。お世話になります。
「ビリーたちも一緒に食事にしなさい。彼女たちから話を聞いておいてね」
つまり、休憩ではなく仕事の一環として食事しろってことだ。なんでもビリー君は一生懸命仕事しようとするあまりにご飯を抜いちゃうことがあるんだと。それは身体の成長に悪いからなあ。しかもそういう場合、リリィちゃんも頑張って我慢するそうな。アウト、アウトだよ!
ビリー君とリリィちゃんとジェニーちゃんは同じテーブルに他のテーブルにも三人ずつくらいに分かれて着席し、プレートに盛り付けられたご飯を提供されていた。作るのが早いって? いや、元から出来てた仕込み中だったのを出してくれたみたい。私の持ってきたのは夕食の仕込みに使うんだって。
牢に囚われて、馬車で搬送される状態ではまともなご飯が出なかった、いや、まともでないご飯すら出なかったのかもしれない。ご飯が出てくるや否や、みんなが貪るようにして食事を始めた。
ただし、ジェニーちゃんを除く。ジェニーちゃんはゆっくりと噛み締めるようにご飯を食べていた。がっつきたかったけど、ビリー君が見ていたからか、それとも胃が受け付けなくなるのを知っているからなのか。
見た感じジェニーちゃんが一番歳上みたいな感じだった。もしかしたら、少ない食べ物をジェニーちゃんは小さい子たちに分けていたのかもしれない。長男じゃなくても耐えられたんだろう。
「あの、ありがとうございました」
ジェニーちゃんが含羞みながら私にお礼を言った。なんでもストリートチルドレンの行方不明案件が増えていて、ジェニーちゃんはそれを調べていたらしい。でも、調べてるところを逆に捕らえられたんだってさ。
「ジェニー、ばっかでー」
「何よ! 元はと言えばあんたらが何も言わずに居なくなるから!」
「わ、悪かったよ。冒険者ギルドの仕事が忙しくてさ」
ビリー君は冒険者ギルドの職員として、いや、もしかしたら将来的には冒険者になりたいとかかもしれない。身の軽さとか考えたら斥候向きだ。
ジェニーちゃんはビリー君たちが同じ様に誘拐されて売り飛ばされたとか思ってたのかもしれない。まあリリィちゃんも一緒にいなくなったからね。衛兵たちに殺されてたら死体が残るからそれはないだろうと思ってたとか。そういう判別方法もどうかと思うけど。
「お前の前に居たヤツらとかは?」
「分からない。私が捕まった時には牢は空っぽだったから多分先に売られてたんだと思う。私たちが初めての誘拐って訳じゃないと思うし」
「そっか。頑張ったんだな」
ビリー君はジェニーちゃんの隣に行くと優しく頭を撫でてやった。おい、なんてイケメンムーブだよ!
「私、私……うわぁーん、怖かった、怖かった、怖かったの!」
ジェニーちゃんはその手の温かさかそれともビリー君に会えたと実感出来たからか、ビリー君にしがみついて泣いてしまった。あーあ、涙腺崩壊しちゃったかあ。
「お、おい、やめろよ。オレが泣かせたみたいじゃん。ほら、泣きやめよぉ、ああ、もう、困ったなあ」
そう言いながらも頭を撫でる手をやめない。しがみついて泣いてるのを引き剥がそうとしない。それどころかもう一方の手を背中に添えてポンポンとしてやってる。こやつ、出来る!
一頻り泣いた後に恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして俯くジェニーちゃん。とりあえずはこれからどうすかを話し合いたいんだけど。
このままストリートに返す、というのは一番取りたくない選択肢だ。確かに全ての子どもを救うことなんて出来ないが、多少なりと縁ができた子どもたちは保護されるべきだと思う。
六人程度なんで私の館に連れて行ってメイドとかやらせてもいいんだけど。あー、でもリンクマイヤーの人が嫌がるかなあ? いや、ある意味、自領の不始末から出てきたものだから文句は言わせない。それでもダメなら私が直接給金を払うよ!
あー、そうなると冒険者よりも商売を早く何とかして軌道に乗せたいというかまだ発進すらしてない状態を何とかしたいところなんだが。
さすがにコンビニのものをこの世界で売るのは宜しくないだろう。文明レベルが違いすぎる。うん、とりあえず商会の従業員として何人か雇いたいところだ。
そんな話を全員にしたらジェニーちゃん以外の全員が私の方に来ると言ってくれた。ジェニーちゃんは冒険者ギルドで受付嬢として働くんだそうな。あー、うんうん。それがいいよね!




