硬化(episode17)
ガトリングガンの衝撃は魔法の力で吸収されました。
「これが伽藍堂の答えか。さすがは脳筋だね」
「脳筋じゃねえ! 暴力の伽藍堂だ!」
「解決方法が脳筋そのものじゃないか。八家の誇りは無いのかい?」
「そんなもん、犬にでも食わせろよ。伽藍堂で成り上がるには暴力しかねえんだよ!」
まあさっきは自分で端くれって言ってたもんね。成り上がりたいのか。まあ向上心は大切だよね。
「オレはこの廃ホテルから成り上がる! あんなボロい工場なんか知るかよ!」
どうやら実家の工場を継ぐつもりはないみたいだ。でも、そこの地位もそのボロい工場から武器を出して手に入れたものではないのだろうか?
「はあ、やれやれ。なら君の家が潰れても構わないってことだね?」
「知るかよ! 今てめえをぶっ殺せば済む話だろうがよ!」
どうやら話し合いの余地はなさそうである。しかし、灯りが眩しいなあ。そうだ。
「土よ土よ、御身の力を遍く及ぼし、地に陥穽をもたらしたまえ。土門 〈大陥穽〉」
私の力ある言葉に大地が応える。範囲は私たちの周り。そこから光がある所まで。突如として大地に空いた大穴。深さは三メートル程だろうか。メートル法は便利だね。向こうではだいたいこれくらいぐらいしか言ってなかったよ。あと、人一人分とか馬一頭分とか。
「なっ、なんだこりゃあ!?」
「なんで突然地面が」
「おい、上がる場所ねえぞ!」
口々に何かを叫んでる。タケルが私に言った。
「この中に水を流し込める?」
「あ、うん。これくらいの量なら楽勝だね。水門 〈貯水流〉」
貯水流はため池とかを水で満たす魔法だ。それこそ大魔法使いなら直ぐに満杯になるだろうけど、私はせいぜい水で足元を満たすくらいしか出来ない。
「これでいい?」
「上等! 喰らえ、スタンガン!」
なんか射出する様な感じの棒を出して、中のものを下に向かって撃ち出す。水面に何かが触れると同時に中にいる人たちが一斉にバタバタ倒れた。あれ? 歩きにくいのかな?
「タケル、あんた」
「いや、スタンガン持ち歩いてて良かったよ」
「てめえ、タケル、何しやがった!」
「見たらわかるだろ? それとも伽藍堂には見ても分からないのか?」
「そうじゃねえ。なんでいきなり地面に大穴が空いて、そこに水が出て来るんだよ!」
そういえばこの世界には魔法なんてないんだっけ。そりゃあ不思議に思うよね。でもいちいち説明するのもなあ。
「お前には一生分からんよ。さあ、観念しろよ」
「ぐ、ち、ちくしょう!」
そう言うとセイヤは何かを下から取り出した。なんか重そうな武器なのか分からないけどそこから届くの?
「なっ、ガトリングガン!? そんなものまで持ってたのかよ!」
「工場の機械を売って手に入れた品だよ。虎の子だったが、てめえをぶっ殺せるんなら惜しくないぜ!」
目がもう正気じゃなさそうなんだけど。大丈夫なの?
「ちょっと、そんなの撃ったら私たちまで死んじゃうじゃない!」
凪沙が抗弁する。でもタケルは死んでもいいの? なんかいざとなったらお墓参りでもしてあげるみたいな感じ?
「関係あるかよ! オレのものにならねえんだったら全部全部ぶっ壊してやる!」
どうやら起きてることに理解が追いつかなくて思考がおかしくなってしまったみたいだ。正気に戻す魔法は接触しないと効かないからどうしようもない。あそこまで辿り着ければ或いは。
「タケル、あそこまで走れる?」
「……ぼくに肉体労働を強要するのはやめて欲しい」
まあタケルはそうだね。ひょろいもん。
「私なら走れると思うけど、どうするの?」
「あそこまで橋をかけるから真っ直ぐ突っ込んで欲しい」
私の言葉に凪沙が返事して、続けた言葉にタケルがびっくりした。
「なっ!? 確かに意表はつけるけど、あの銃は危ないんだよ!」
「多分硬質化で何とかなると思う」
「えっ、肉体を硬質化するの!?」
「あ、違う違う。あれ」
私の指差した先には地面に落ちている看板が。まあ板である事には代わりがない。
「そっか。私、ティアちゃんを信じるよ」
凪沙はすっくと立ち上がってその板を持ってきた。ガトリングガンとかいうやつはここまで届かない。なんであいつは撃ち続けてるんだろう。
「じゃあお願いね。金門 〈硬質化〉」
私の魔法で看板は鉄の板よりも硬くなった。そして、重さは変わらない。凪沙なら軽々と片手で持てる重さだ。
「これなら」
「じゃあ道を作るよ。そのまま真っ直ぐ進んでね」
「大丈夫。私に任せて!」
私は続けて地面に手を当てる。
「土門 〈地盤隆起〉」
私のイメージ通りに地面が隆起し、向こうのホテルの二階までの道が出来る。なんか向こうからものすごいびっくりした声が聞こえる。
「行って!」
「よっしゃ!」
凪沙が地面を踏み締めて走り出す。看板を手に持ち、前が見えないだろうに、進んでいく。ちゃんと幅は広めに取ったから少しくらい横にズレても走れると思う。凪沙は平衡感覚もすごいしね。
「くっ、来るなあ!?」
大声で悲鳴のようなものを叫びながらガトリングガンを発射している。奇しくもその音と衝撃が凪沙に位置を教えているのだ。
恐らくガトリングガンで看板を削ろうとでも思っていたのかもしれないが、魔法での強化なんだから魔法の武器でないと削れないのは当たり前だ。もちろん、衝撃なんかも関係なく防いでる。
「くたばれぇ!」
「ぐぼぉ!?」
凪沙が看板のまま突っ込んでセイヤにぶち当たる。セイヤは悲鳴をあげながら手に持ってるものを手放し、そのままもつれるように倒れ込む。あれ? 大丈夫かな?
やがて凪沙がおーい、とこっちに向かって手を振ってきた。どうやら制圧は無事に出来た様だ。私はタケルを引っ張ってそっちに向かっていく。
土の橋は登りにくかったみたいで、タケルはおっかなびっくり登っていた。いや、落ちないからね。はあ、やれやれ、これで一件落着かなあ。




