幕間〜とある女神の依頼〜
女神のターン。
なんか、ティアの世界、あ、元いた方の世界ね。そっちで四凶が暴れていたという。
四凶の招待は世界を作る時に失敗して罰せられた下級神だ。檮杌と呼ばれたやつは元々は治水が担当の神だったが、仕事しないで現地の魔獣狩りをしていた馬鹿だ。そのお陰で納期に間に合わずに責任を撮らされたやつだ。
ちなみに饕餮は下級神の癖に創造神に文句ばかり言って仕事しないで反発ばかりしてたアホだ。口だけでやらなきゃいけないことほったらかす馬鹿なので処置無しだ。
そういう点で言えば仕事はそれなりにこなしてはいた檮杌の方がマシだったかもしれない。元は二人ともそういう名前じゃなかったと思うけどもうだいぶ前だから忘れちゃった。
いや、違うのよ? 老年性の痴呆じゃないから! 私はまだ若いんだもん、神の中では、ね?
キューのいた方の世界でも同じ様に下級神は居た。まあ、それがいわゆる八家と天子と呼ばれるやつの始祖なんだけど。もう一人居たけどそいつは八洲から外に出したからね。
そう、八洲、というのはあの世界における「出発点」なのです。他の地域にも人は居るけど、全部八洲から流れて行った残りの一人、彼流子という最後の一人の子孫だ。最後の一人なのにどうやって増えたのかって? そりゃああいつが自分で泥から男女を作ったんだよ。ひとりじゃ産めないからね。
で、なんで出ていったかというと失恋。いわゆる鷹月歌と古森沢の二大女神の両方に結婚を申し込んでどっちにも断られてたからなあ。ま、私ほどじゃないにせよ、二人とも美人だったからね。まあ古森沢の方は可愛い系だったけど。
まあ、何をやってるのかは分からないけど、もしかしたら彼流子も何か活動してるのかもしれない。あ、いや、彼流子は自分から引きこもったんだけどさ。
しかし、こうして見るとそれぞれの世界で違いがあるものだなと思う。えっ、第十三世界の神はどうなったか? ええとね、あの世界の神は核の炎に焼かれて跡形も残ってないよ。というか放射能の吹き荒れる中で神すらも蝕んでいったからね。もしかしたらAIがそうなるように仕組んだのかもしれない。
私は改めてセリオースを見る。この子はあの劣悪な十三世界から発掘してきたやつだ。まあ正確には私じゃなくて調和神先輩がやったんだけど。そりゃあまあ、私だけだと管理に手間取ってましたけど、そんなフォローは必要なかったんだけどなあ。まあ淹れてくれるお茶は美味しいし、お菓子も美味だからいいか。
二人は変わらずに楽しんでくれているみたい。二人が生きていれば生きているほどに、この第十三世界の跡地に流れ込むエネルギーも多くなる。だからこのまま平穏に長生きして欲しいと思うんだけど、なんでそんなに事件に巻き込まれてるかな?
いや、分からなくもない。私だけでなく調和神先輩とも接触したのだ。それなりに神のマーキングみたいな残滓があるのだろう。嗅覚が良い奴はそれを嗅ぎつける。とまあ魔力のない世界で魔力を持ってたり、魔力のある世界なのに魔力を持たなかったりしてたらそりゃあ目立つだろうね。
「ねえ、二人とも、今の生活はどう?」
「周りの人に恵まれているから楽しい」
「それは私も同じね。正直なんでこんなに、と思うくらいに恵まれてると思うわ」
キューちゃんは実験体として研究所で薬と訓練漬けの日々だったし、ティアちゃんは貴族の家で酷い目に合わされて、物のように扱われていた。世界が違えばこんなにも変わるものだとびっくりはした。
周りの人がいい感じになる様に、とは私は祝福とかは掛けていない。純粋に二人の出会い運というやつだろう。神である私が運がどうとか言うのはどうかと思うが、紛れもなく事実である。運命を操れるのは至高神でも無理だ。おそらくは最高神じゃないと出来ないのだろう。なんとなくの誘導くらいなら調和神先輩辺りでもやってそうだけど。
「そんな二人にお願いがあるんだけど」
「断ります」
「嫌よ」
二人が言ってる言葉は違えど揃って拒否の言葉を吐いた。酷くない!? 私の話を聞いてからでも良くない?
「いや、だって、あなたの仕事を押し付けようとしてるんでしょ?」
「そう、仕事は自分でやるべき」
身も蓋もない。でも、でもね? 私も仕事を押し付けようとしてる訳じゃなくて、そう、委託! 現地民への委託なの!
「あ、あのね、四凶の話を聞いて少しまずいかなっ思うんだけど、他にもそういうイレギュラーがないかを調べて貰えないかなって」
「報酬は?」
「ぇ!?」
「そうね。何らかの見返りがあるなら協力してもいいわよ?」
あ、足元を見られてる。これは、見返りを提供しなければ調和神先輩に報告されたりとかするのかもしれない。いや、報告ってどうやってされるのか。
「私もアイテムボックス欲しいなー」
「なるほど。私は魔力は特に要らないけど何か欲しい」
ティアちゃんはアイテムボックスが欲しいらしい。いや、あなたそんなものあっても人前で使えないでしょうが。それにキューちゃんは「何か」って曖昧過ぎる!
「ううん、困ったなあ。アイテムボックスはティアちゃんのいる世界ではシステム的に作ってないのよ」
「それって私のいた元の世界には使える人居たってこと?」
「そうよ。使える人は秘密にしてるのかもしれないけど、間違いなく居るわ」
これは嘘をついてない。というかそもそも女神が嘘をつく訳が無い。……ごめんなさい、仕事サボるのに嘘は使います。
「だから、ええと、そうね、出来る範囲であなたたちに加護をあげるからそれで我慢してちょうだい」
「ええ、加護とか役に立つの?」
「なんかご利益なさそう」
余計なお世話だ! つべこべ言うのが鬱陶しかったので、問答無用で加護を与えて二人を覚醒させた。はよ元の世界に戻りなさい! あ、協力はしてよね!




