湯話(episode88)
お風呂シーン多いな、この小説
巨大ホテルの大浴場はとても快適で豪華だった。せいぜいがでかい湯船だけかと思ってたら天然の総ヒノキ風呂とか大理石の露天風呂とかなんか有名な焼き物のの壺風呂とか。
見た目よりも泉質に気を使って欲しいんだけど。お湯? うん、確かに悪くない泉質ではあるんだけど、源泉から引っ張ってきたんじゃないみたい。なんでも軟水機とかいう柔らかい水のお風呂にしてるんだって。いや、それってあんまり栄養行かないよね? まあ気持ちいいのは間違いないんだけど。
「ティア様」
私と一緒にお風呂場に入ってきたのは黒峰さんだ。スタイルいいなあ。おっぱいもそこそこ大きいし。私や凪沙程じゃないけど。その代わり、足。足が綺麗なの。スラッとしてて。私は肉付きいいもんね。というか筋肉で太くなってるんだよ、悪いか!
「この度は引き受けて下さってありがとうございました」
「あ、うん、それはいいんだけど、今、一緒じゃなくていいの?」
「はい。今は自室に籠って誰も近付けない様にしてますから。私が戻るまで部屋の鍵は開かないようになってます」
まあ鍵をこじ開ける方法なんていくらでもありそうだけど。本人がいいならいいか。
「黒峰さんは裕也さんとは恋人同士ではないんですね?」
「ええ、そうですね。坊っちゃまの世話をさせていただいてはいますが、恋愛感情というよりかは弟に対する親愛の情といったところでしょうか」
「あー、私がタケルに感じてるようなものか」
「そうなのですか? 失礼ですが、凪沙様がいらっしゃるとはいえ、タケル様はなかなかの好物件では?」
「あー、うん、筋肉が足りないんだよね。私の好みからはかけ離れてるかなあ」
私の答えを聞いて黒峰さんは吹き出してしまった。もしかして、私、裕也さんに近付く害虫として警戒されてた?
「もちろん裕也さんもですね。もっと筋肉つけたらいいのに。胸板が厚くないと性的魅力に欠けると思いませんか?」
「あ、あはは、そ、そうですね」
言葉では賛同してるが、内心ではそんなこと思ってないな。いやまあ賛同が得られるとは思ってない。というか私の好みは純粋に前の世界で生存の確率を高める為の伴侶の選び方が基準なのだ。魔力がない以上は筋肉に解決してもらうしかない。銃? 知らんがな。あんなもの魔法で防げるし。
「黒峰さんの好みはどの様な?」
「私は、その、もっと、歳を召した方の方が好きですね」
「ええと、つまり年上好きだと?」
「そうですね。年齢を経て人生の苦味とか味わった雰囲気のある方が好きです。シワとか生えてたらもっといいですね」
「……そうですか」
うん、理解出来ない。確かに年季によって経験は増していくけど、加齢に伴い地力は落ちていくはずだ。これがこの世界の価値観なんだろうか。いやまあ人の好みは多種多様という事だろう。あまり深く議論してもいいことはないだろう。
「あの、メアリー様というのはどの様な方ですか?」
「ああ、とても素敵な方ですよ。天真爛漫で、それでいて小悪魔の様な。ちょっぴりおしゃまなレディですね」
「なんか聞いてるよりも幼いような。あの、現在何歳なんですか?」
「言ってませんでしたか? 学年で言えば五年生ですね」
あれ? 確か裕也さんってタケルと同い歳位だったよね? 私よりちょっと年上の二十歳は超えてるくらい。で、結婚相手が五年生……お巡りさん、こっちです! あ、いや、アメリカだからもしもし、ポリスメン? かな? 犯罪だ、犯罪者だよ!
「あの、誤解のないように言っておきますけど政略結婚の意味合いが強いんですよ。特にアメリカ連邦は小学校を卒業すれば結婚出来ますから」
つまり、卒業を待って結婚するという話。なるほど、政略結婚ってそうだもんね。近く本朝を伺ってみても、清少納言の主人である定子様は十四歳、紫式部の主人の彰子様に至っては十二歳での入内だったという。えっ、一条天皇がロリコンだっただけの話? いや、定子の方が四歳くらい上だよ? 彰子とは八歳差だったかな? なんで知っるかっていうとそういうゲームがあったからとしか。
「いえ、その辺のお家の事情は私の関与するところじゃあありませんので」
私はそういうのには理解があるよ。だって貴族だってそういうことしてたもん。私たちの世界の場合は十五歳が成人だったから、デビュタントして結婚相手を見つける、というのが割と一般的だったのだ。
じゃあなんで私はこの歳まで結婚してないのか、というと、私の嫁ぎ先が大してなかったからだ。魔力が弱かったからね。いい結婚先に恵まれるかは内包魔力量によって決まる。私は大してなかった。そう、なかったんだよ、この世界に来るまでは。なんでか力がみなぎってくるんだよね。今度、女神様に聞いてみようかな?
黒峰さんと一緒にお風呂から上がり、裕也さんの部屋に行く。裕也さんの部屋はホテルの最上階から少ししたのワンフロア丸々部屋になってるところだ。他の客が来ることもない。ここに来るにはエレベーターに専用のキーを差し込まないといけない。
つまり、関係者しか来れない。他の階のキーでは別の階に立ち寄ることも出来ないからそういうやり方で乗り込むのも不可能だ。なるほど、テクノロジーってすごいね。
「やあ、お姉さん方、お風呂は快適だったかい?」
「お陰様で。で、私はどこに寝れば?」
「ん? ここでいいよ。というかこの部屋内でないとダメだ」
「えーと、男女が同じ部屋でいいんですか?」
「そうですね。おそらくは大丈夫だとは思いますが、万一の場合がありますので同じ部屋でお願いします」
黒峰さんも裕也さんも譲らない。いやまあ確かに同じ部屋じゃないと護衛は出来ないけど。あ、でもこの部屋、ワンフロア分の広さがあるんだった。つまり、同じ部屋という括りでも離れて眠れば別部屋くらいの距離はあるのか。まあ元々冒険者になるなら雑魚寝でも大丈夫な様にはして来たしね。では、おやすみなさい。




