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第六十六話&episode66 径路

調和神様、コンパ帰り()

『まあ、その辺の事情については考慮しましょう』


 その女神様、調和神様はゆったりとした口調で言った。というか言葉が頭の中に直接に入って来る。


「あの、頭の中に声が聞こえるんですが」

『当然です。私たち神が言葉を発するというのはとても世界に影響が出るのです』


 言葉は力ということらしい。力のある神様というのもなかなかに大変そうだ。


「あれ? じゃああの創造神ポンコツ様は? 声発してたけど?」

『あの者はそこまで世界への影響力はありませんし、何より自分の作った世界ですから』


 どうやら神様としての格が違うみたいです。さもありなん。


『そう言えば先程の問い、キューさんの世界の人間がなぜ魔法を使えたのか。という話ですが』

「はい。私、気になります!」

『まず、基本的にキューさんがいた第十四世界は魔法がありません』


 これは予想通りの答えだ。というかむしろそうでないとおかしい。キューに魔力がなくて魔法が使えないのは世界が原因であろう。一方でティアか魔法を使えるのは世界ではなく個人が原因だろう。となれば魔法を使う要因は個人にあると思われる。


『正確には魔力を活性化出来る因子が存在しないと言うべきでしょうね』

「魔力自体はあるんですか?」

『もちろん無いわよ。魔力は全て体内で作られるものだから』


 これにはティアはびっくりしていた。なぜならティアが学んだのは「世界には魔力の源たるマナが溢れている」と習ったからだ。それが「世界の常識」なのだ。もちろんティアが居た第十二世界の常識なのたが。


「あ、あの、じゃあ私のいた世界の魔力はどこから?」

『魔物の身体から、そして様々な植物から染み出たものよ』


 今明かされる真実。魔物の身体からは魔力が常に放出されているらしい。そしてその魔力は大気に溶けて世界に広がるのだという。魔力の濃い地域、薄い地域は魔物の個体数の差らしい。森が多くて砂漠は少ないというのはそういうことなのだろう。


「じゃ、じゃあ、今私が居る世界にある魔力は?」

『あなたの身体の中で生成された魔力ね』


 つまり、ティアが魔力の供給源であるらしい。だからティアのそばでは魔力が使えるし、ティアと接触してる時間が長ければその分の魔力が染み付いて残滓として残ってるんだって。


「私に魔力が無いのはなんで? それで言うと世界の魔力は使えるはずでは?」

『あなたの場合は少し違うのです』

「違う? やはり生まれが関係してるのですか?」

『生まれは関係ありません。異世界転移した事に関係があります』


 キューの生まれになんか関係があるのかと思いきや、異世界転移した事らしい。生まれは関係ないんだって。


『あなたが異世界転移した時に、魔力溢れる世界に降り立ち、魔力が流れ込みそうになりました。それで受け入れてしまうと魔物化してしまいますが、抗体を作る事で魔物化を免れました。そして、抗体が出来た理由ですが……』


 調和神様はティアに向き直った。


『ティアさん、あなたが転移した事に繋がります』


 キューの魔力がないのはティアのせい!? 何を言ってるのか分からないので大人しくそのまま聞いておくことにした。


『ティアさんが魔法のない世界で生活するために、魔力回路がそのまま移殖されました。というか魔力がなければ生命活動が出来ないのです』


 ティアがびっくりした。という事は下手したらキューもティアも世界を渡った時に死んでいたかもしれないという事だ。


『幸運だったのはお互いがそれぞれ同じ存在だったということです』


 同一存在。創造神ポンコツの女神もそう言っていた。遺伝子的にも同じ存在。まあおっぱいの大きさはそれぞれの理由で違うんだけど。


『異世界転移のタイミングで二人の間にパスが繋がり、キューさんの中に注ぎ込まれるはずの魔力が全てティアさんの中に入ったのです。これでお互いに破滅を免れました。ティアさんは魔力枯渇症になる事もなく、キューさんは魔物化する事もなくなった』


 二人は本当に異世界転移というのは危険なものなのだと改めて認識した。


『そして、そのパスは違う形で今も続いています。キューさんの身体に流れ込む魔力は全てティアさんの方に流れ込んでいるのです』


 つまりは、世界に魔力がなくとも、ティアには元の世界からの魔力が絶えず流れ込んでいるということらしい。


「よく分からないんですが、という事はもしかして、どちらかが死んだら」

『そうですね。ティアさんが亡くなれば、キューさんは魔力を逃がせなくなり、魔物化しますね。一方でキューさんが亡くなれば魔力枯渇でティアさんが干からびます』


 二人は沈黙した。つまり、正しく一蓮托生である。そしてお互いがお互いを守り合うことも出来ない。先程、ティアはヤクザと、キューは教団とことを構えている事がわかったばかりである。


『まあ余程危ないことしない限りは大丈夫さ』


 その危ない状況なのだが。


「あの、創造神様はどちらに?」

『今は至高神じゅうやくに呼ばれてサボりの罰を受けているところです』


 どうやら前の焼き芋の件らしい。まあ世界の私物化とか言うのになるのかな? でもこの白い部屋も世界として復旧させるというんだし、ちょっとは多めに見てもいいんじゃないかな?


『……まあ被害者のあなた方が言うなら罰を軽くするように言っておきましょう』


 そう言うと調和神様は私たちの頭を撫でて頑張りなさい、と声を掛けてくれた。なんか能力をオマケしてくれたりしないんだろうか? いや、別に欲しい訳じゃないけど、記念にとか。


 調和神様はお忙しいようでそのままフェードアウトされた。というか逃げた。ティアとキューはお互いの状況をそれぞれ報告し合い、お茶を飲みながらこれからの動き方について相談し合うのであった。


 メイドロボ、いや、対有機生命体奉仕用ヒューマノイドインターフェースであるところのセリオースは黙々とお茶とお菓子を用意し続けていた。


 やがて二人とも眠気が襲ってきてそのまま意識が途切れていくのであった。

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