31話 本当に、出会えてよかった。
31話 本当に、出会えてよかった。
一撃で沈められたレンド。
それを見下ろしながら、
ノコは、ヒキーレに、
「悪いけれど、このバカを拘束して、どこかに閉じ込めておいてくれない?」
「生かしておくんですか?」
「……コレをどうするかは、センに任せようと思うわ」
それを聞いたヒキーレは、
言われた通り、レンドを魔法で拘束しながら、
「……ノコ様、もうしわけありません」
ふいに、ボソっと、そう謝った。
「なにが?」
「私もレンドと変わりありません。あなたについて何も知らなかった。『特殊な才能で疫病を治していた』ということ以外はほとんど知らず……あなたが、国や民のために、『疫病が流行る前』から頑張っていたことは知りませんでした。本当に申し訳ありません」
「知ってほしいと思っていなかったから別にいいわ。喝采や賛美が欲しくてやっていたわけじゃない。あたしは、ただ、気分の悪いことが嫌いなだけ。そこに関しては、誰だってそうでしょ?」
「……まあ、そうですね。気分が悪いことは……私も嫌いです」
「気分のわるいことを全部排除した『みんなが幸せに生きていけるだけの世界』……みたいなことを、子供のころはずっと夢見ていたわ。けど、大人になるにつれて、それは無理だってことが分かってきた。だって、この世界はバカとクズばっかりなんですもの」
ノコは、そう言ってから、天を仰いで、
「バカなだけなら、まだ我慢できたけれど、本当にクズが多すぎるのよ。どいつも、こいつも、自分より弱いものをイジメて搾取するだけのクズばかり。……『まともな人』も、もちろん、何人かいるわ。あなたたちもその中の一人。けど、洗脳されたり、家族を人質にとられたりして、クズに飲み込まれてしまった。それがこの世界の現状。どうしようもなく腐った、社会の現実」
そこで、ノコは、
センのことを想い出しながら、
「そんな世界で、たった一人……この『不条理だらけの地獄みたいな世界』と、本気で向き合っている男がいた。才能も家柄も、何もないくせに、狂的な努力と根性だけで、ついには世界最強の存在にまでなってしまった、あたしのヒーロー」
センのことを考えている時だけは、
いつもよりも数段優しい顔になるノコ。
「センが『独りで頑張っていた10000年間のこと』は知らないけれど、出会ってから数年のことは全部知っているわ。ずっと一緒にいたからね。……頭おかしいんじゃないかって心配になるくらい、ほんとうに、センは頑張っていた」
『ノコに病気を治してもらったセン』は、
『その恩を返したい』とノコのナイトになった。
それまでもセンは、
『この世界から理不尽をなくそう』と、
必死に自分を磨いていたが、
ノコのナイトになってからというもの、
その努力量は度を越していった。
『……【みんなが幸せに生きていけるだけの世界】……俺も、ずっと、その世界が欲しいと思っていました。ノコ様、あなたが夢見る世界を実現するために、俺は死ぬまで【あなたを守る剣】で在り続けると誓います』
「……まさか、『同じ夢を見ながら、隣を歩いてくれる人』がいるなんて、思ってもみなかった。センがいてくれたおかげで、あたしは独りじゃなかった。センがいてくれたから、あたしは、ずっと、救われていた。出会えてよかったと、心から思った」
この不条理だらけの世界で、
ノコが折れずにまっすぐ生きていられたのは、
いつもセンが隣にいてくれたから。
だから、ノコはセンを愛している。
ずっと、ずっと、一緒にいたいと心から思っている。
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