お金がないと子供にしょっちゅう言ってはいけない
ある時、上海人の義母がフェイスタイムで奥さんのお姉さんを叱っていた。上海語で話しているのでよくわからなかったのだが、後で聞いてみると、
「あの子は子供にお金がないって言い過ぎるのよ。お金がないなんて繰り返し言ったら、子供は自信が持てなくなるでしょ。だから、きつく怒っておいたの」
とのことだった。
育ち盛りの子供がいる家庭は、家計のやり繰りが大変だ。いくらお金があっても足りない。いつもお金の心配をしなくてはならない。ついつい子供に愚痴りたくなるものだろう。
だが、上海人の義母は、「お金がない」ということは子供にそう言い聞かせなくてはならない時に言えばいいことであって、毎日のように言う事ではないと言う。そんなことをすれば子供の心が萎縮してしまい卑屈になってしまうと。
逆に経済的に余裕がある時でも子供に「うちにはお金がある」と言ってはいけないと言う。お金があると言ってしまえば、子供は慢心して怠けてしまうからとのことだった。
僕自身はといえば、自分の母親からしょっちゅう「お金がない」と言われて育った。確かに、お金が足りないというのは子供心にも不安を覚えた。今から思えば、それは「お金が足りない」というよりも「夫の愛情が足りない」という嘆きの声だったのかもしれないが。
お義母さんは、中国がもっとも貧しかった時代に娘を三人育てた。物資は配給制度だったため、自由に食料や生活必需品を買うことができなかった。それこそ、りんご一つを家族で分け合って食べたような時代だ。そんな時でも子供に「お金が足りない」というようなことは、本当に必要な時以外は言ったことがないそうだ。貧しかったからこそ、子供の自尊心を適切に育むことに気を遣ったのかもしれない。子育ての知恵だなと感心した。




