想像デング熱
日本でデング熱が見つかって騒ぎになっていたけど、僕が今住んでいる中国広東省広州ではデング熱が猛威を振るい数千人が罹患した。僕の携帯電話には広東省の衛生当局からの注意喚起のショートメールが何度も届いた。蚊取線香を焚いて蚊を駆除しましょうだとか、蚊に刺されないように長袖長ズボンを着用しましょうだとか書いてある。
ゆうべマンションの部屋へ帰ると、蚊専用の殺虫剤の小さな箱が扉の前に置いてあった。隣の部屋の前にも置いてある。衛生当局なのか地区の委員会なのかわからないけど誰かが配ったようだ。
殺虫剤は碁石くらいの錠剤で火をつけて煙を焚くタイプのものだった。説明書には火をつけたらすぐに部屋を出て三十分くらいしたら部屋へ戻りなさいと書いてある。それで部屋のなかの蚊を全部殺してしまうらしい。蚊取線香の強力版といったところだろうか。
デング熱は蚊が媒介する。最初に罹った時は病院へ行って点滴を打ってもらえば治るけど、二度目に罹ってしまうとひどい合併症を起こして死に至るケースも比較的多い。気を付けないといけない病気だ。僕は普通の蚊取線香をなるべく焚くようにしている。誰かが配った強力版の蚊取りを焚いても、隙間から蚊がまた入ってきてしまうだろうし。
ところで先日の朝、事務所へ行くと、新人の若い男の子が真っ青な顔をしていた。
「怎么了? 你不舒服吗? (どうしたんだ? 気分が悪いのか?)」
僕が訊くと、
「蚊に刺されました」
と彼は腕の蚊に刺された痕を見せ、
「それで体温を測ると三十九度ありました」
と言いながら体温計を僕に見せる。体温計はたしかに三十九度を指していた。
「それってデング熱じゃないか。仕事はいいから、早く病院へ行きなさい」
僕は目が点になった。
デング熱だったらどうしようとはらはらしたのだけど、どうやら彼の早とちりのようで、たんに風邪でリンパ腺が腫れて高熱が出ただけのようだ。
まったくほんとにびっくりさせるんだから。デング熱じゃなくてよかったけどさ。




