45話 秘密基地お披露目
隕石の衝突にそなえ、食糧を備蓄することにした。
日持ちのしそうな缶詰めなんかを中心にカートに入れていく。
ここは車で一時間ほどの業務スーパー。まとめ買いにとっても便利だ。
ピッピッピッ。
セルフレジで商品をスキャンする。会計はもちろんクレジットカード。
これならワンチャン、いやツーチャンもスリーチャンも払わなくていい可能性があるのだ。
銀行だってカード会社だって、木っ端みじんになるかもしれないからな。
うんしょ、うんしょ。
買った商品を車に積み込んでいく。
クッソ重い。
とくにダンボ-ルにギッチリと詰められたミネラルウォーターが、ガチで重い。
これを何往復もしなきゃいけないのか。
必要なことだろうが、気が滅入るな。
積み込みが終わると、ブロロンと車を走らせる。
これらを秘密基地に置いたら、次は日用品だ。
ティッシュに歯ブラシ、歯磨き粉。シャンプーに石鹸、ハサミに鉛筆。そして着替え。
あと防寒着もいるか。
どれぐらいあればいいかなあ?
俺とマイちゃんとその家族。それが十年分ぐらい。
……どえらい量にならねえ?
服はなんとかなるかもしれんが、問題は食料だな。
十年分の食糧なんてとても買い置きできそうもない。
特に水だ。
飲み水だけでなく、洗濯に風呂にお手洗い。買うだけでは絶対にまかなえないだろう。
どうすっかなあ。
予備の電源も買わなきゃならないし、照明器具も家電もいる。
金はそれなりに稼いだけど、足りるかなあ?
ガソリンどれぐらいいるんだ?
氷河期ならそれこそ一日中暖房つけとかなきゃいけなくないか?
う~ん。
秘密基地に籠るのは、隕石の衝突の瞬間だけってのが現実的か?
ちょっと考え方を変えた方がいいかも。
俺の利点はなんだ?
隕石の衝突を事前に知っている、それだけか?
いや、ショーグンだ。ちょっとだけ賢くなったメカと、その品種改良能力。
このあたりをうまく活用できないだろうか?
家に帰ったら、ショーグンと相談してみるか。
いまさらながらに、話し合いに考えがおよぶ俺なのであった。
――――――
「お~い、ショーグン」
「あ、ちょうど良かった。旦那様。ご報告が」
話し合いをしようと秘密基地に向かったら、中から出てくるショーグンとバッタリ会った。
いいタイミングだな。それに、なにやら報告があるという。
まずは聞いてみるか。
「どした?」
「ちょっと見てもらいたいものがあるんですけど」
なんスか?
土器でも出土したのか?
「なんだよ、見てもらいたいものって?」
「え~と、それがですね、なんと言えばいいのか……」
なんだよもったいぶるなよ。
「とりあえず言ってみろって」
「いや、見てもらったほうが早いんですよ」
そう言ってショーグンは俺の背をグイグイと押す。
やめろ、押すなって。
「まさか、おまえ俺を生き埋めにする気じゃ……」
「やめてください! そんなことするわけないじゃないですか!!」
ショーグンは否定するが、分かるもんか。
奥に入ったとたん「騙されたな。死ねい!!」みたいな感じで豹変する可能性だってある。
「じゃあ、前歩けよ。俺、後ろからついていくから」
「もう、信用がないなあ」
信用してないワケじゃないけどね。
でも、いちおう警戒ぐらいはしておかないと。
なにせ状況が一気に変化したからな。
隕石衝突をふくめ、なにが真実かすぐには判断できなくなってきてる。
秘密基地の奥へと入っていく。
入口の木材で補強された通路を抜けると、部屋のように広がった空間へと出た。
天井には照明。まだ電気はきていないから薄暗い。
「暗いな」
「ええ、ですから発電機が早く欲しいんですよ」
そうだった、そうだった。
それで発電機を買いに行ったとこで隕石の衝突を知ったんだった。
いっぱいありすぎて忘れていた。
たしか発電機がくるのは明後日か。
業者が搬入してくれるはず。
じゃあ置き場所も考えとかないとな。
中に置くべきか、外に置くべきか。
排気ガスとか考えると、外の方がいいのかな?
そのへんも調べなきゃいけないな。
カチリ。
ショーグンがランタンのスイッチを入れた。
電池式のキャンプでつかうような、ちょっとオシャレなランタンだ。
部屋の全体像が見えてきた。けっこう広い。
しかも、正面と左に、まだ奥へと続く通路みたいなものも見える。
「部屋、何個もあんの?」
「ええ、用途に応じて、たくさん部屋を作ろうと思いまして」
スゲーな。そこまでやんのかよ。
それによくここまで掘れたな。重機とはいえ、この空間を掘るのはかなりの重労働だぞ。
「左は交配部屋です」
ショーグンは左の通路を指さして言った。
ベッドルームね。
だから交配って言うんじゃねえよ。
「おまえ、まさか見せたかったのって、その部屋のことか?」
豪華なベッドをデコレーションしたとか。
コイツならやりかねん。
「違いますよ。見せたかったのは正面の方です」
そう言ってショーグンはさらに奥へと歩いていった。
あ、違うの?
じゃあ、なんだろ?
この先になにがあるんだ?
ショーグンの後に続き、通路の奥へ。
「え? なんだこれ!?」
ビックリして声が出た。




