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転生したら玉虫色の球体でした  作者: 枝節 白草
最終章:神々を喰らう者達
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茶番

「ねえクオン、次はどこに行くのかしら?」


僕の隣に居るのは黒いゴスロリ服の女の子、綺麗な黒髪に小さな山羊の角。邪神シュブニグラスと同化した幼馴染、名はクロ。

毎日がクロとのデートだ。デートが終わったら結婚を迫られるのだからデートを続ける他無い、普通にしてればクロは可愛いのだから苦にはならないのだが結婚はしたくないのだ。正直クロは怖い。


「そうだね、この世界で一番高い場所に行きたいな」

それはほんの気まぐれから出た言葉だった。

「…断崖の町ジズね、…そこは却下」

クロが明らかに不機嫌な顔をする、どうやら選択を間違えたようだ。

「そっか、この世界で一番の景色をクロと一緒に見たかったんだけど、我慢するよ」

クロの機嫌を取りつつ話を切り替えようとしたのだが何やらクロの様子がおかしくなる、頬を染めてまるで普通の女の子の様だった。

「わ、私と一緒に?一番良い景色を?ふ、ふーん、そっか、そっかそっか、うん、そうね、そうよね、ロマンチックよね、ロマンチックだわ」

クロのツボは僕には理解し難かったが機嫌は直ったようだ。

「じゃあ一緒に行く?」

「ちょっと待って、………あら?ショゴスと繋がらないわね、一緒に死んだのかしら」

クロは独り言のように呟いて僕には上手く聞き取れなかった。

「え?今なんて?」

「ううん、なんでも無いわ、気掛かりも亡くなったしジズに向かいましょう」

「気掛かりが無くなったなら問題無いね」

「ええ、亡くなったわ」




取り込んだリヴァイアサンの魔力が体に馴染み僕の時空を操る力は精度が上がっていた。

空間の覗き窓から空間を繋ぐ扉を創るまでに進化している。

断崖の町ジズへはすぐに到着した。


「あら?ここ山の麓じゃない、上まで一気に行っちゃえば良いのに」

山の上まで空間を繋がなかったのはもちろん時間稼ぎだ。

「こういうのは過程も大事なんだよ、クロと一緒に登りたいんだけど、嫌だった?」

「嫌じゃないわ!」

クロは意外とチョロい、「一緒に○○したい」と言えばだいたい納得してくれる。

しかしやり過ぎては感付かれるので町までは能力を使った次第である。



山道まで移動した所で看板が目に入った。

【山を登る方は修道院まで起こしください】

よく山に入る修道士に山の状況を聞いたり、必要な装備を借りたり、山に入った人が戻らない時には捜索してくれたりするらしい。

正直僕とクロには全く必要は無い、必要は無いのだが修道院というのが気になった。確かアリサは協会に拾われたはずだ、どこの協会かは分からないが何か情報は手に入るかもしれない。


「クロ、修道院行ってみようよ。人間の真似事もたまには悪くないと思わない?」

「思わないわね」

「僕たちは人間だった頃にデートとかした事無いし、人間らしいデートもやってみようよ」

「なるほど、…そうね、行きましょう」




修道院に着いて真先に言われたのは入山禁止だった。

なんでも山の天候が今までに無いくらい悪いらしい。

教えてくれたのは恰幅の良いマルタと名乗る修道女。


「お二人さんタイミング悪いねえ、今は私達ですら山に入れないよ」

「どういう状況なの?」

「風が強いのさ、麓にいる分にはそんなに感じないけどねぇ、山に入ると酷いよぉ?つむじ風に拐われた修道士も複数いるんだ」


クロが割って入り僕を押し退けるとマルタの服を掴む。


「茶番は必要無いわ、あなたこちら側の人間でしょう?」

「…なんの事だい?」

「私は黒山羊、あなたからは血の匂いがする」

「……神鳥ジズの加護が無くなった、風が荒れてるのはそれが原因さ。関係があるかどうかは分からないけど変なショゴスを見た、古のものに逆らう固体なんて初めて見たよ」

「そのショゴスなら心当たりがあるわ、一緒に居た女はどうなった?」

「な!あの娘の事知ってるのかい?」

「質問してるのはこっちよ、死にたいのかしら?」

「…ショゴスはアリサを庇って逃げたよ、その後の事までは分からない、古のものに聞けば分かるかもしれないけど今は山に入れないからね、それ以上の情報は持ってないよ」


アリサ?今確かにアリサと聞こえた。

「クロ!?アリサはここに居るの!?」

「どうでも良いじゃない」

「今どこに居るか、クロには分かるはずだよね?」

「ショゴスと連絡が取れない、…その意味分かるわね?」

つまりショゴスはもう居ない、ショゴスはアリサを護衛してたはずだ、護衛が居なくなったアリサはただの人間、生きていると考えるのは少し難しい。


アリサが人質では無くなった以上僕も茶番には付き合えない。

「アリサを探してくる」

「あんな女どうでも良いでしょ?クオンが好きなのは私なんだから」

「ごめん、クロの事は嫌いじゃないけど、…好きでも無いよ」

「なん…ですって?」

「ごめん」

「なんで?どうして?なんでよ!!」


クロの怒号と同時に大きな音をたてて修道院の壁が壊れる、壊したのは長大な触手。

黒い触手がクロから無数に生えて縦横無尽に暴れまわる。

クロの脚は蹄となり床を叩き割った。


飛び散る壁の破片と一緒に肉の塊も宙を舞う、さっきの修道女は逃げ遅れたようだ。



僕は山の上まで続く時空の扉を創造し、暴れるクロを置いて一人で移動した。



これにてクロとのラブラブデートは終了です。文面では短いけどアリサ編の裏で一応デートはしてました(笑)

クオンはモテますねぇ(羨ましくはない)

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