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王宮侍女アンナの日常  作者: 腹黒兎


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37.王宮侍女は女子会を楽しむ


オルランド王国の王宮は、権威の塊の様な尖塔を持つ王城を中心に左右に宮殿が建っている。

鳥が羽を広げた姿に似ている事から“白鳥宮“や神の使いとされる神鳥の名前から“エウリケ宮“とも呼ばれる。

そんな偉そうな名前を持つ王宮は無駄に広い。王城と各宮殿だけでも広いのに、庭園だの温室だの湖だの、兵舎だの訓練場だの馬場だのと、とにかくだだっ広い。

なので、働く使用人は有に千人を越える。通いの者もいるが半数以上は王宮の敷地内に居を構えている為、使用人の部屋は目立たないようにあちこちに点在している。


王宮内で私に与えられた部屋は、侍女が住む棟の一つで、ベッドと衣装タンスと机がある程度の1人部屋だった。手狭だが、ほぼ寝て起きるだけの部屋なので特に問題はない。

問題があるとすれば、エレンを含めた侍女仲間が押しかけてきたこの状況だろう。


「見たいの。ねーねー、アンナちゃん。お願い」


その上目遣いは男には効果的なんだろうが、生憎と女の私には効かないと学習しろ。


「ケチケチしなくなってたっていいじゃない」

「そうそう。見たら帰るからさ」


エレンを筆頭に押しかけてきたのは、そこそこ仲良くしているダリアとルネ。

3人が興奮している原因は私が手にしている箱にある。

綺麗なリボンがかかった箱には“ダラパール“の優美な文字が描かれている。優美過ぎて柄と同化してる気がする。


「あのルカリオ・ガルシアン卿からのプレゼントでしょ?どこで引っ掛けてきたのよ」

「ホント。いつのまにあんな大物捕まえたのよ。アンナのくせに、生意気」

「アンナちゃん恋バナなんて聞いてないよぉ。聞きたいっ聞ーきーたーいー!」


散々な言い様だが、気が置けない友人の軽い弄りなので口調は明るい。

似た様な事を見知らぬ女に何度か言われた事があるが、あっちはささくれどころか鋭い棘がビシバシついてた。刺さらない棘でもは気分は悪いので、何かの時にはお返しをしてあげようと、名前と特徴をメモしてある。

一応、ね、一応。てへ。


ルカリオさんと知り合ったきっかけが女装だとは言えないので、曖昧に濁しておく。幸い、親しくさせてもらったのは仕事場を移動してからなので変に勘繰られる事もなかった。

代わりに早く開けろと催促されるのが鬱陶しくて、早々にリボンを外して開封する。


入っていたのは上品なワンピース。

深紅の上半身部分は同色の刺繍とレースで彩られ、ウエスト部分は濃い茶色。様々な茶系のシフォン生地が綺麗なグラデーションを生み出しているスカートは軽やかだ。

色的には夜会のようだが、レースや軽やかなシフォンが日中に合うように作られている。

しかも、ワンピースに合わせた靴、バッグ、帽子まで一式全部揃っている。

さすがメイド バイ ダラパール。地味な色合いなのに華やかで上品。

これ、絶対に高いやつだ。

騒いでいたエレンたちも一瞬だけ黙った後に再び騒ぎだした。


一番上に置かれていたカードには、今度のデートを楽しみにしているというメッセージが書かれている。

……え?これを着ていけと?

恐ろしい。

総額いくらするの。私の給金何年分なの。

持つ手が震える。

いくら豪華なドレスを手に取る事が多かろうが、自分用じゃないし、仕事なら多少の緊張で済むのよ。

しかし!これは私宛のプレゼント。

一体、何を要求されるんだろう。それとも何かの口止め?

だめだ、思いつかん。


「せっかくだから着てみようよ。ね?ね?」

「サイズが合うか着てみないとね」

「似合うかどうか見てあげるからさ」

「分かった!分かったから剥かないでっ」


まるで追い剥ぎにあった気分で服を脱がされ、新しいワンピースに袖を通す。

ちょっと前にジュディちゃんに剥かれたからサイズがバレてんだろうなぁ。

嫌味なほどピッタリ。主に胸の部分が。

ピッタリすぎて詰め物が出来ぬ。ちっ。

揃いのボレロがあるから絶壁はあまり目立たないからいいけどさぁ。


「やだ、似合う、似合う。絶望的な絶壁が分からないわよ。アンナのくせに、ちゃんと女の子してるじゃない」

「化粧と髪もちゃんとしないとね。上げる?編んじゃう?」

「はいはーい。私髪留め持ってるー」

「え?え?ちょっ、まっ…」

「やるならとことんよ。任せなさい」

「これでも一通り出来るんだから。って、やだ、また化粧品増えてんじゃない?あ、これ使うわよ?」

「はい。座って、座って〜」


エレンとダリアが髪を触り、ルネが私の化粧道具を手にする。

なぜやる気を出してんの。

仕事もご飯も終えて、後は寝るだけなのに。どうしてそんな元気が有り余ってんの。

みんな、明日も仕事あるんだよ?

私の疑問は無視され、変に気合いが入ったエレンたちが満足するまで付き合わされた挙句、当日は準備してあげるから!と約束までさせられた。

なんでそこまで?と思ったが、去り際に「ガルシアン卿のお友達を紹介してくれるだけでいいからね〜」と言われて納得した。

確約はしないが、努力はしてあげよう。これも友情。決して面倒くさいからではない。




そして芸術祭が始まった。


初日はリンデルさんがお休み。

旦那様と久々のデートだと張り切っていたのが可愛かった。

今日と明日、貴賓室を使用する方は2組で、1組は午前までの休憩でもう1組は芸術祭に出掛けている。なんて楽。

余った時間にのんびりと雑務をしたりミレーヌさんから芸術祭の話を聞いて過ごした。


翌日はミレーヌさんがお休み。

婚約者とお出かけするらしい。オーレン商会の新店舗『ミュゼ』がプレオープンするので視察もしてくるらしい。明日来てね、と招待状をもらってるので行ってみようと思う。


リンデルさん夫婦は昨日、国王たちと同じ回のオペラを観劇したらしい。

末っ子の第三王女と護衛にリリアン様もいたと聞いて、思わず吹き出しそうになった。

なにそれ。見たい。

どんな三角関係。いや、四角?面白すぎる。

しかも演目が『ミステリア』とか笑う。ドロドロの愛憎劇じゃん。浮気した妻が真実の愛の為に夫を殺すやつじゃん。

ウケる。

もう、オペラよりも国王たちの貴賓席を見ていたいわ。どんな顔して見てたんだろ。オペラよりも複雑かつ泥沼な面子じゃん。

国王様、肝が据わってるのか、鈍感なのか。いやー、凄いわ。



そして、無事に2日目も終わり、芸術祭最終日。

いつもより早い時間に叩き起こされ、エレンたちに化粧だヘアセットだと弄られまくる事2時間。

待ち合わせ時間にわずかな余裕を持って身支度が完成した。

………疲れた。

このままベッドに入って惰眠を貪りたい。


「なに疲れた顔してんのよ。これからでしょ!」

「お礼はイイ男の紹介でいいからね」

「大丈夫?忘れ物ない?下着の替えは持った?」


ダリアに背中を叩かれ、ルネがひらひらと手を振る。

エレン、その忠告はどうかと思う。漏らすような赤児でも老人でもない。


どうせ3人ともルカリオさんのお友達狙いなんだろうけど、朝早くから身支度を手伝ってくれた事は有難い。それが半強制だったとしても。


「じゃ、行ってきます」


さぁ、行きますか。



遅くなりました。その上、次話ももう少しお時間かかります。

すみません。

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[良い点] 下着の替えの意味がwww
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