【後日談8】2話 売れ残りチョコレート
バレンタインデーが終わり、翌日。
雑貨屋クローバーにて。
「猫さん、チョコレートが大量に売れ残りました」
赤髪の異世界転生者、ヨツバは不満げに頬を膨らませている。
俺はレジのカウンターに置いてある座布団の上で、腹を上にして転がっている。
「にゃー(この都市の人間は、あんまり興味なさそうだったな)」
チョコレートはネコ科魔獣には毒なので、ネコ科魔獣が買うことはないし買おうとすると止められる。
なので人間限定の商品なのだが。
「やっぱりパッケージがダメなんですよ。
このドクロマーク! これが全部台無しにしています!」
「にゃー(ネコ科魔獣には毒であることが、このマークから分かるからな)」
魔獣都市マタタビでは、ネコ科魔獣に毒である食品にはこのドクロマークを付けることが義務づけられている。
なお、マークにはネコ科魔獣の嫌いな柑橘系なニオイもついている。
「チョコレートを買った女性から、クレームもきています。
告白にチョコレートを渡したら、お互いの主人のネコ科魔獣が「みゃああ(毒だー!?)」と騒がしかったと」
「にゃー(そうか)」
自分の奴隷の人間が毒を渡したり貰おうとしていたら、そりゃ騒ぐか。
人間は奴隷ではあるが、何だかんだネコ科魔獣からは大事に思われているのだ。
「にゃー(でも、普段の食べ物でもネコ科魔獣に毒なものはあるけれどな。どうしてチョコレートに限って)」
「普段と違う特別感のある包装が、より怪しかったのだと言ってました、火車が」
「にゃー(魔獣幹部なのに特定の商品のネガキャンしてんじゃねーよ)」
人間大の茶トラ白のネコ科魔獣幹部、火車。
魔獣幹部とは、この都市のトップの立場で、他に4体ほど居る。
なお、俺はただの茶トラ猫。立場上は、他の平民なネコ科魔獣と一緒だ。
「どうします? この売れ残り」
「にゃー(雑貨屋クローバーの、中央都市チザン支店に押し付けよう)」
あそこには色んな魔獣が居る。
ヴァンパイアなんかのヒト属魔獣なら、チョコレートを食べても大丈夫だろうよ。
「ではトラックを手配します」
ヨツバは電話を使わずに、腕時計の魔道具をポチポチして、運送トラックを手配したようだ。今時の若者だなー。
俺は前世の癖が抜け切らずにいまだに取引はメールやテレビ電話がベースだが。
そしてヨツバが何の脈絡もなく俺の腹を触ろうとしてきたので、スッとかわして腕を掴んでキックする。
「痛たたたたたた!!?」
「にゃー(このスケベ)」
「スケベなんですか!?」
人のデリケートな場所を触ろうとするのがスケベでなくて何だというのだ。人じゃなくて猫だが。




