34.結界()
「私の目的は、この森を西に拡大しつつ、エルフの結界を張ることです~」
「にゃー(あっそう)」
「にゃんこさんも一緒に頑張りましょ~!
えいえいお~!」
金髪エルフ少女のアウレネが拳を天に掲げる。
俺は協力するなんて一言も言ってないぞ。
「手始めに、この掘りの周りに結界を張りますよ~。
『精霊よ、脅威から我らを守りたまへ。サンクチュアリ』」
サンクチュアリって日本語訳したら聖域だろ?
結界とはニュアンスが違うんじゃないか?
俺がそう思っていると、アウレネの唱えた呪文により、掘りの外に薄い膜みたいなものが張られる。
ほう、これが結界か?
俺は膜に近付き、触ってみる。
パチン! 膜は破れた。
「あ~! にゃんこさん、何してくれてるんですか~!」
『こんな脆い膜で結界とは笑わせてくれる』と木の板に書く。
「結界魔法は、10年に1度しか使えないんですよ~!」
『知らん。というか人の家の周りに勝手に結界を張るな』と書く。
「にゃんこさんにとっても有用なハズだったのに、酷いです~!」
アウレネは、結界について詳しく解説してくれた。
結界を張っているところには、身内や認められた者しか侵入できなくなる。
エルフ族は里の周りに結界を張って生活しているらしい。
結界の維持には魔石とかいう宝石が必要で、それはごくまれに魔獣の体に埋まっているらしい。
大きな結界ほど大量の魔石を消費するから、とりあえず俺の家の周りだけ結界を張ったのだとか。
俺はバジリスクの心臓に埋まっていた石を取り出す。
綺麗な石だなーと思ってたが、アウレネに見せるとこれが魔石らしい。
この魔石は魔力を溜めたり放出したりすることの出来る石で、大きい物ほど高く売れるそうだ。
残念ながら俺は猫だから、商人に売る手段を持ち合わせていないが。
魔石は魔道具と呼ばれる生活用品に使われるらしい。
宿屋でも火打石みたいなのが使われていた。
ちなみに加工は、熟練の者が行わなければ大爆発を起こすとか。
おっかねぇ。




