178.昔の夢
ここは森の自宅。
今日は雨なのでエルフ達は各自、家に籠っている。
俺ものんびり過ごすことにしよう。
俺は木箱を取り出し、部屋に設置。
そして中に毛皮を敷いて、木箱ベッドの完成だ。
さっそく木箱ベッドに入る。
う~ん、この閉塞感がたまらない。
一応部屋には人間サイズのベッドもあるが、こちらの方が俺には合っている。
体を丸めて眠ることにした。
おやすみなさい。
◇ ◇ ◇ ◇
「源さん、本当にこの漢方、効くんでしょうか?」
「この大建中湯には、ちゃんとしたエビデンスがある。
消化器系の手術の後に用いることで、腸閉塞の予防にも繋がるんだ。
ほら、この論文だ、見てみろ」
俺は医学論文サイトで論文検索をして、PC画面を新入りの研究員に見せてやる。
大学や研究機関は、ある程度の料金を払うことでサイト内の論文のほとんどが読み放題となるのだ。
「英語かぁ……」
「当たり前だろ! ほら、このAbstractだけでも読む!
その論文の要約内容が書かれているからな」
「はーい……」
まったく、研究職だというのに、英語嫌いだと論文が読めなくて困るじゃないか。
これからミッチリと鍛え直してやるからな。
覚悟しておけよ。
◇ ◇ ◇ ◇
懐かしい夢を見た。
薬学部出身のくせに漢方に懐疑的で、なおかつ英語が苦手という困った新入りの世話をしていた時の夢だ。
数年後、あいつが医者と共同研究して出した論文が雑誌に乗って、研究室の全員で祝ってやったなぁ。
「にゃんこさ~ん、暇なので遊びに来ましたよ~」
「バステト様、最近手が強張ってきたので、ちとみて欲しいのじゃが」
ま、過ぎた戻らない過去のことはいいだろう。
大事なのは今を生きることだ。
俺は木箱から出て、シルフ婆さんの手の拘縮を【ヒール】で治し、アウレネと五目並べすることにした。
戦績は9勝3敗。まあまあだな。




