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168.今すぐ死ね


兵士を王様から何人か寄こしてもらい、彼らを森の入口に連れてきた。



「何だこの建物は?!」


「いつの間に……」



エルフの建築家に頼んで作ってもらった設計図の通りに、錬金術で人工大理石製の2階建ての家を建てた。

5畳ほどの小部屋が50部屋、60畳ほどのホールが2つある。

ただし外見は四角、内装もそのままの不格好な建物だ。

ここは森の一部だ、という文字が刻まれている。



『ここに患者を連れて来てくれ』と書く。


「連れて来て、どうするつもりだ?」


『治す。患者にはこれを鼻を覆うように口に付けさせること。

これは病原菌を空気中に広めないために付けるんだ。

お前らも付けろ』と書く。



食物繊維と人工ゴムで作ったマスクを渡す。


そして、彼らをポフリと前足で猫タッチ。



「?」


『さあ急げ、早く行け』と書く。



ナンシーさんの結核菌を元に、抗体を彼らの体内で変性錬成で作ってやったのだ。

これで結核に感染するリスクが減り、感染しても軽症で済む。

抗体を数種類作ったが、現代日本で同じことをすれば、目玉が飛び出るほど高額な医療費がかかるに違いない。


さて、彼らが出かけている間に、森の奥へ行って、エルフ達にも同様に抗体を与えるとしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



エルフ達へ抗体を与える作業が終わり、しばらく忙しくて相手出来ないことを伝えた後、隔離施設へ戻る。

少しずつ患者が集められているようだ。

今40人くらいが1階ホールで不安そうにしている。



「にゃー(変性錬成、変性錬成、もう一丁変性錬成)」



ぽふ、ぽふ、ぽふ。

患者達に抗結核抗体を作ってやる。


抗体さえあれば、ある程度、体は結核と戦える。


だが、重症患者だと免疫力が低下しているので、その場合は【ヒール】で治す。



「あー、猫さんだー!」



ネル、ヨツバ、ナンシーさんも来た。

ナンシーさんと濃厚接触したから危険とみなされ、隔離されることになったらしい。


ナンシーさんは隔離患者達と一緒に、運び出された布団を床に敷いている。



「猫さん、首尾はどうですか」


『今のところ上々。だが今回の肝となる最後の実験が残っている』と書く。



そして、彼女達や追加で入って来た患者をぽふ、ぽふ、ぽふっと。


抗体だけでも何とかなりそうだが、それだけでは体内の結核菌が無くなるまで時間がかかり過ぎる。

あいつら、白血球の1種であるマクロファージに食べられても平然と生きているからなぁ。


そこで俺の称号【森の主】の出番だ。


俺は近くの患者の結核菌数を鑑定し、その後声高らかに命令する。



「にゃー(白血球達、結核菌を皆殺しにしろ。

そして、結核菌は今すぐ死ね)」



森で産まれた者にしか通用しない俺の命令。

逆に、森で産まれた者なら誰にでも通用するとしたら?


つまり、この隔離施設は俺にとって森の一部であり、そこで産まれた白血球は俺の手下。

さらにここで産まれた結核菌も俺の命令で自殺するとしたらどうか。


命令を30分おきに繰り返すこと5回。

鑑定結果は……成功だ。

結核菌の数が激減している。


この調子だと、隔離患者は1週間、いや3日以内に完治するぞ。

頑張ろう。



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