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150.雑貨屋クローバーの一日


翌日の朝。俺は町の雑貨屋クローバーの店内で寝転がっている。



「旦那。そろそろ店を開けるぜ」



リオン君が店の錠を外し、開店の看板を店の外に置く。

彼もあれから成長し、何と掛け算が出来るようになった。

俺が暇な時に、算数をコツコツ教えた甲斐があったというものだ。


ちなみに店の計算には、そろばんを使うようになった。

前は植物紙にいちいち計算式を書いていたが、市場にそろばんがあったのを思い出し、購入したのだ。

使いこなしてくれているようでなによりだ。


リオン君が店を開けると同時に、外で待機していた客が入ってくる。



「氷! 氷を3つだ! もちろん容器付きで!」


「まいどー」


「注文していたガラスの像は、どうなったかね?」


「こちらになりまーす」


「ふむ! 近衛兵、馬車に運べ!

くれぐれも丁寧に、傷を付けたらどうなるか分かってるな!」


「旦那が作ったガラスは、市場の物よりずっと頑丈ですので、問題ないですよ」



そりゃ、純度が高い石英ガラスだからな。

100円ショップのガラス皿に使っているような、空気や不純物たっぷりのソーダガラスとは訳が違う。

まあ割れる時は割れるが。



「それでは、代金はこちらになります。

ではこれで」


「まいどー」



最初は大金を見てビクビクしていたリオン君も、白金貨(1000万G)を見ても動じなくなった。

人間やはり慣れだな。


その後、氷と鉛筆もどきが売り切れ、残りはエルフ達の手作り小物(一律500G)。

こちらはゆっくりと売れる。


開店1時間後、客足がようやく落ち着いた。

次は昼飯時に売るスィーツが山場だ。



「ふー、にしても、旦那はこんなに金を稼いで、何を企んでるんだ?」



誰も客が居なくなり、リオン君は尋ねる。



『友人に頼り切った金銭事情をどうにかしたかったから、ヨツバの話に乗ったんだ』と書く。


「詳しく聞かせてくれよ」



タイプライターを取り出し、マック君のことは人に内緒だぞと、最初に前置きする。

最初に森で迷子の彼……じゃなくて彼女を送った話、森にまた会いに来てくれた話、宿でまた会った話、勉強を教えた話……。


ああ、思えばもうこの世界で暮らして4年経つのか。

早いなぁ。



「旦那の友人のことはよく分かったけど、ますます旦那のことが分からなくなったぞ」



っと、もうすぐ昼飯時か。外に淑女(方便)の皆さまがぞろぞろ集まっているようだ。

オバサ……げふんげふん。淑女の声が聞こえる。


俺は森のエルフ達の特製シュークリームを取り出す。

一応、外の連中には見られないようにしている。

ついでに冷蔵用氷も取り出す。


リオン君はパン屋の挟むやつ(俺制作)……確かトングだったか。

それを使ってガラスケース(俺制作)にシュークリームを並べる。


並べ終え、元気よく店を出たリオン君。

そして、



「さあ淑女の皆さま方! ただ今よりシュークリーム販売でございます!」



外の中ね……永遠の17歳の女性の方々に呼び込みを開始するのだった。


シュークリーム1個500G。

高すぎると思うのだが、リオン君いわく2000Gでも安いくらいだそうだ。

さすがにそんなボッタクリはしないぞ。


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