147.ハーディス像
現在、俺が落っこちた洞窟を探索中。
「にゃー!(ヤッホー!)」
にゃー、にゃー、にゃー……。
俺の鳴き声が木霊する。
この洞窟、思ったよりも深かった。
探索開始して1時間、やっと奥までたどり着いた。
奥には、ぽつんと人間大の石像が1つ設置してあった。
修道服に身を包む、とある女性の像。
これ、女神ハーディスだよな。
石像を【四次元空間】で仕舞い、俺は帰るべくUターンすることにした。
◇ ◇ ◇ ◇
「キュオオオオン!(ふむ、おそらくそれは冥王ハーディスの像である!)」
夕食後、石像について心当たりがないか尋ねると、フランベルジュが答えた。
「にゃー(冥王?)」
「キュオン!(死後の世界の王である)」
「にゃー(女神じゃないのか?)」
「バステト様、儂にも分かるように、書いて喋ってくだされ」
俺はタイプライターを取り出す。
『ハーディスって、女神じゃないのか?』と打つ。
「キュオオオン!(我の【鑑定】によれば、ハーディスは冥王である。
普通の者なら【鑑定偽装】や【鑑定阻害】によって女神と認識するようである)」
まあハーディスさんが女神か冥王か、というのはどうでもいい。
『で、この石像は何を思って作られたんだろうな?』と書く。
「昔の信者が、気まぐれで作ったのかもしれんのう」
「キュオオオオオン!(まあ、そんなところであろうな)」
それにしては、随分と本人そっくりだが。
俺は石像をごしごしと布で拭く。
すると、何故か気が遠くなった。
「バステト様?!」
「キュオオオオン!(不思議猫よ?! いったいどうしたのである?!)」
二人の心配する声を聞きつつ、俺の視界が暗転した。
◇ ◇ ◇ ◇
床が白い光を淡く放っている。
それがどこまでも続く空間。
「お久しぶりですね」
「にゃー(あんたは……)」
「はい。女神ハーディスです」
女神か冥王か知らないが、黒髪の女性ハーディスは修道服っぽい恰好をして、祈るようなポーズをしていた。
ハーディス「冥王だと、閻魔大王みたいな恐ろしいイメージを与えるので、私は女神を自称しているのです」
「にゃー(あっそう)」




