131.開店
開店前日の店にて。
俺はリオン君に商品候補を並べて見せた。
鉛筆もどき、植物紙、ガラスの器、断熱容器。
本当はエルフ達の作った品も並べたかったが、市場を見ると投げ売りされていたのでやめておく。
ガラスの器は砂を変性錬成して作った。
断熱容器は、食物繊維を発泡スチロールみたいに変性錬成で加工して作った。
錬金術まじ便利。
希望価格は、鉛筆もどきは1000G、植物紙は50G、ガラス容器は3000G。
断熱容器は氷付きで1万G、氷だけなら5000G。
あと、ヨツバ原案の取り分の割合についてはさすがに却下させてもらった。
リオン君の給料が不安定なのと、自分の商品の売り上げは自分の物だろうという理由だ。
各自、自分の売った商品の売り上げ分だけ貰うということにした。
リオン君の給料については時給2000Gにした。
これは俺とヨツバの金から折半することとなる。
痛み止めと抗生物質は無料配布、ただし相手が医者の場合のみ。
この国にも一応医師免許っぽいのがあるらしいから、それを提示したら一定数の薬を渡すようにリオン君に言っておく。
薬の適応、作用、副作用は紙に書いておいた。これを守らず患者を悪化させても俺は知らん。
氷はヨツバが用意したのを俺が受け取り、当日断熱容器に詰める。
リオン君にそれぞれの商品の説明をすると、価格を5倍にしろと言ってきた。
「旦那、植物紙以外は市場では見かけない。
つまり独占状態だ。もっとボッタくってもいいくらいだ」
『いや、この価格でいく』と書く。
金もうけに興味が無いわけではないが、暴利を貪るつもりもない。
商品が沢山の人に行き渡る方が俺としては嬉しい。
なので、なるべく廉価で販売することにする。
氷以外の商品を【四次元空間】から次々と取り出し、棚に並べ、在庫は足元に積む。
ガラス容器はレジ近くに置く。
『それじゃ、店の届け出をしてくる』と書く。
「旦那、店の名前は?」
『雑貨屋クローバーで』と書く。
ヨツバが主体の店なので、それでいいだろう。
店の名前が気にいらなければすぐに変えられるし。
木の板を取り出し、爪で加工して店の名前を刻み看板にする。
城の前の役場に書類を書きに行ったが、猫だからか門前払いされた。
仕方ないのでリオン君にバロム子爵から貰った許可書を渡し、代わりに手続きしてもらった。
◇ ◇ ◇ ◇
開店当日。
俺は店で氷を補充した後、宿屋に来た。
ヨツバももちろん宿に居る。ナンシーさんに抱っこされている。
ヨツバいわく、最初は閑古鳥が鳴くだろうから心配ないらしい。
リオン君にもそう伝えているそうだ。
多分暇で仕方ないだろうとのこと。
ま、何かあれば宿に来るように言ってある。
便りが無いのは良い知らせってことで。
俺はネルと昼寝していた。
◇ ◇ ◇ ◇
・リオン視点
どこぞの貴族様が叫ぶ。
「店主! このガラス製品はどこの錬金術師の作だ?!
透明で美しい! そしてこの大きさ!
是非、制作者を紹介してくれ!」
どこぞの精肉屋が叫ぶ。
「うぉぉおおお! 氷がこんな価格で手に入るとは!
それにこの容器! 狩人や商人に持って行かせれば、肉や品物が痛みにくくなるぞ!
もっとだ! もっと売ってくれぇえええ!」
どこぞの学者さんが叫ぶ。
「これは猫さん作の鉛筆もどきに違いない!
店主! ここにある鉛筆もどきを全て購入するよ!」
他にも、客がわらわらと店に入って叫んでいた。
旦那! ヨツバ姉さま!
話が違うじゃねーか!
助けてくれー!




