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111.夢オチ

・新魔王視点


「グルルルル!(魔王様! おはようございます!)」



ここは、森へ向かう途中の砂漠。

余と兵は、昨晩ここで野宿した。


余は夢を見ていた。

余が死に、大切な余の兵が全滅する夢を。

ご丁寧に、火葬されて石像まで建ててもらったな。


余の夢はただの夢ではない。

【予知夢】というスキルで、実際に起きる未来を見ることが出来るのだ。


もっとも、余が好きなタイミングで見られるわけではなく、気まぐれで発動するスキルであるため、万能ではないが。


ともかく、なんとしてもこの未来は避けなければならない。

余だけならともかく、余の兵まで無駄死にする必要はない。


【予知夢】で知った未来を変えるためには、余のもう一つのスキルである【予知回避】を使うしか方法がない。

さもなくば【予知夢】通りに体が勝手に動き、未来を再現してしまう。

ただし、【予知回避】には相応の代償を伴う。


今回の代償は、余と兵500体の命と等価の物を払わなければならない。

何が取られるだろうか。

レベルにスキル全てに称号、両腕両足くらい取られそうだ。


だが、それでも。


余はスキルを使う前に、兵を並ばせて言う。



「余とお前達が敗北し全滅する予知夢を見たああああ!

余が負けた! 負けたのだあああああ!」



ざわざわと騒ぐ兵。

皆、余の【予知夢】を知っている。

知っているからこそのざわめきだ。


これだけの勢力を投入して負けた未来が見えたことが信じられないのだろう。



「今から余は【予知回避】を使用する!

余とお前達の命を救う代償として、余はあらゆるスキルと称号を失うだろううううう!」


「グルル!(いけません魔王様! せっかく1年前にようやく魔王の称号を手に入れたというのに……)」


「ガウガウ!(俺達の命は良いので、魔王様だけが助かってください!)」


「ならぬうううう!」



余はスキル【予知回避】を使う。


空気が歪み、気味の悪い音が頭に響く。

未来が変わった。



「……」



余は自分の体を見る。

変化なし。


自分を【鑑定】する。


――――――――――――――――――――――――

名前:ゴルン

Lv:1(193歳)

種族:デビル

スキル:【鑑定Lv1】【予知夢Lv46】【予知回避Lv30】

ステータス:

HP 20/20 MP12/12

ATK23 DEF32 MAT20 MDF28 SPD17 INT32 LUK10

称号:【エセ魔王】


短気で怒りっぽい悪魔。

だが部下思いであり、部下からも慕われている。

魔王だったが、【予知回避】で称号を失った。

――――――――――――――――――――――――


「ふふふ、ふはははははは!」



この程度の代償なら安いものだ!



「ガルルル!」


「済まぬ! 【翻訳】スキルを失ったから、何を言っているか分からぬうううう!」



この日、余はレベルやスキル、称号などほとんどの物を失った。

だが、問題ない。


ここに居る余の兵が、余を慕ってくれるのなら。


何も問題ない。


余は撤退命令を出す。

兵を無駄死にさせないために。

余の頭を冷やし、再び力を蓄えるために。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ(猫)視点



「キュオオオオオン!(何だか、我の体が竜に戻った夢を見たのである!)」


「にゃー(はいはい、良かったな)」



言いつつ、俺は自分にいつの間にか付いている称号を鑑定する。


――――――――――――――――――――――――

鑑定結果

【魔王】

説明:魔王に送られる称号。

生きる者の恐怖と絶望、悪夢を力に変える。

――――――――――――――――――――――――


なぜか【エセ魔王】が【魔王】になっていた。

訳が分からない。


2章はここまでです。

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