ご理解頂けたかしら?
相変わらず文法破壊な部分が多々あると思いますが、読んで下さる皆様ありがとうございます(^^)
ブクマ・評価・リアクション励みの糧にしております
誤字脱字報告様の活躍で文がまともに修正され感謝です(^人^)
感想嬉しいです。ですが返信に手間取ってしまうので(汗)
返信できない方向で(>人<;)
ティアは伯爵邸のカーテンを閉めた真っ暗な自室で椅子に座り頭を抱えている
同じ頃トリステスは王都邸の自室で窓の側に椅子を置き、夕暮れの景色を見ている。その方角にあるのは故郷の辺境伯領。
其々がお茶会での事を思い出していた。
▽
「資料を読んで、私の障害について理解していただけたかしら? ちなみに今話している私はレイナです」
笑顔で話すレイナにティアとトリステスは困惑の表情を浮かべる。
レイナは続いて衝撃的な言葉を放った。
「この障害が発覚したのは、先週クレアが自死未遂を起こしたからなの」
(は?)
トリステスは危うく声に出すところをかろうじて堪えた。
ティアは息を飲んだ瞬間、喉がヒュッとなってしまった
「それ以来クレアは現れなくなってしまって…」
(自死?……そんな……)
トリステスの頭の中にグワングワンと大鐘が響く様な渦が巻く
ティアは青褪めて見開いた目をレイナに向けたまま動けない
レイナは二人の様子に構う事なく続ける
「この障害があってはウィリアム様との婚約の継続は難しいと言われたの、当然よね。でも私はクレアの頑張りを無駄にしたく無いのよ。それに王家側にとってもクレアを外すと言う選択は」
(そんな…自死だなんて…なんでそんな…まって…待って待って…)
「ま…待って下さぃ…」
トリステスがやっとの思いで声を絞り出し、レイナの言葉を止める。
ティアは小刻みに震えながら横目でトリステスを見た
「……早かったかしら? 何かご質問が?」
「……自死を?……どうして…」
その言葉にエタンセルの冷めたい視線が二人に刺さる。
静かに紅茶を飲んでいる王妃と夫人…一切表情を変えない王妃と違い夫人は微かに眉間に皺が寄った。
レイナはチラリと夫人の様子を窺い、夫人に寄り添いたい気持ちを押し込めて口を開く。
「明確な理由は分からないの。でも多分「ウィリアムのせいでしょうね」
レイナの言葉を遮り王妃が口を開いた。
「クレアの関心を引きたいと言うだけで繰り返したウィリアムの愚かな行為が、クレアへの中傷と嘲笑を生み、それら全てがクレアを追い詰め続けて限界を迎えてしまったのよ」
そこまで言って王妃は隣の席に座る夫人の手にそっと手を添える。
王妃はレイナからは言いにくいウィリアムの愚行の部分を引き取って話した。
そんな王妃に夫人とレイナは驚きの目を向けた後、小さく悲しく微笑んだ。
「「…………………………」」
王妃の言葉にティアとトリステスは青褪めたまま固まる。
二人の様子から自死未遂についての説明は十分と判断して王妃はレイナが話そうとした言葉を続ける。
「クレアの障害は公表しません。自死未遂の影響で虚弱になったと公表されます。そこで問題になるのがウィリアムとの婚姻です。虚弱になった事を原因に婚約解消した場合、婚約者を自死に追い込む行動をした上に切り捨てる王太子と醜聞が立った上、王家はドケーシス公爵家の支持を失う」
ティアとトリステスは『公爵家の支持』と言う部分に王族と高位貴族の婚姻の重さに気付く。
そして自分達が結婚や家の都合に対してどれだけ自由を与えられていたのかも。
その自由から貴族の立場を軽んじてしまった事にも気付いた。
「また次の婚約者を探そうにも、今現在年齢と家格が合う令嬢は国内には居ない。当然醜聞が邪魔をして外国への打診も難しい」
そこまで話した王妃に続いて、次は夫人が口を開いた。
「全てを隠して両者同意で婚約を解消させる事も出来ます。でもその場合…解消の原因はクレア一人に被さり殿下から捨てられた令嬢と噂され。ドケーシス公爵家含めて軽んじる者も出てくるでしょう。そうなれば公爵家から王家への支持・忠誠にヒビが入る。どんなに多大な保障を王家がしてもね。そんな事態は王家も公爵家も本意ではないのです」
次を引き継いでレイナが口を開く
「陛下は公爵令嬢がこのまま王太子妃になると言う私の提案が最善と判断されました」
ティアとトリステスは困惑の中聞こえた『クレアの頑張りを無駄にしたく無いのよ』と言う言葉が蘇る
「でも障害のある公爵令嬢が王太子妃に就くためには補強が必要なの」
レイナは敢えて無機質な言葉を使う。それはエタンセルの薦めだった。
『第二妃や側妃が国にとってどう言う役割なのか明確に理解してもらう為、部品の様に扱って下さい。そこに悪感情も愛情も無いと言う様に』
「滞るであろう公務の補佐に第二王太子妃を、御子を得る為に側妃をウィリアム様には娶って頂きます」
爽やかに微笑んでレイナは告げ、手をエタンセルに向けて紹介した。
「第二王太子妃候補はこちらのエタンセル・フラム侯爵令嬢に打診して、快く受けて頂いたの」
「えっ…でも」
「はい。このお話をお受けする為に、ハーミット公爵子息との婚約は解消されました」
トリステスが発した言葉を打ち消す様にエタンセルが告げた。
再び王妃が口を開き
「貴方達が選ばれたのは、ウィリアムと頻繁に交流がある令嬢として名前が挙がったからよ。いずれも婚約者がおらず、家格も側妃なら相応。……全てではなくても、クレアが貶められる原因の一端を担っていた事から、クレアへの贖罪を科される立場にある。貴方達が居るのに他の令嬢に重い責務を背負わせる訳にはいかないでしょう?」
ティアとトリステスは王妃の言葉が重圧となって体を締め付けられる感覚に襲われる。
王妃の圧とは対照的に優しい声音でレイナが言葉を引き継ぐ
「私の一番の望みはクレアが中傷や嘲笑に晒されない事。だからクレアが王太子との婚約にしがみ付いてるなんて思われない為に『本当はクレアは婚約破棄したいけどウィリアム様が望まれるので継続する事になりました』と言う事で。 クレアは寵愛を、エタンセル様は能力を、あなた方は血を繋ぐ役目を任されます。……ご理解頂けたかしら?」
二人は小さく頷く事しか出来なかった。
「それとこの話は、ウィリアムの知らない所で進められています」
王妃はティアに目線を向けて言ったあと
「ティア嬢とトリステス嬢は何も手を付けられなかった様だけど、お茶会はこれでお開きにしましょう」
とお茶会の終わりを告げた。
その言葉に夫人とレイナとエタンセルは静かに立ち上がり礼の姿勢を取る。
一瞬遅れてティアとトリステスも立ち上がり礼を執った。
王妃が退室するのを見送ってからレイナが口を開く
「それでは私達も下がります。お二人は付き添いの方が迎えに来るまで、こちらでお待ち下さい。先程の資料は回収させて頂きますね。それと私の障害については口外なさいません様に」
レイナは笑顔で一本指を口元に当てて念押しした。
三人が去り応接室に残された二人は静かに着席して、完全に冷めた紅茶でカラカラに渇いた喉を潤した。
しばらくして、トリステスの叔母とティアの父ラクリマ伯爵が迎えに来た。
その二人の蒼白い顔にティアとトリステスは、同じ話を聞いたのだと確信する。
そうして各々が護衛という名の監視人を付けられて、邸宅へと帰って行く。
付き添い人には、次の王城への登城は日曜の午前八時にと予定が組まれた事を告げられている。
△
ティアの頭の中を巡る数々の言葉。
『クレアが自死未遂を起こした』
『クレアの関心を引きたいと言うだけで繰り返したウィリアムの愚かな行為』
『醜聞』
『御子を得る為に側妃』
『補強』
『重い責務を背負わせる』
『血を繋ぐ役目』
『それとこの話は、ウィリアムの知らない所で進められています』
ティアは一瞬…もしかしたら側妃はウィリアムが希望しての話かと思ったのだ。
(なんて浅ましい…)
恋愛感情のみでそう思ってしまった自分が恥ずかしく、自分の貴族にあるまじき行動がクレアを自死未遂に追い込む原因の一端である後悔…
(後悔しているのに…恥じているのに…)
ウィリアムの側妃に成れると言う事にどうしても愉悦を感じてしまう自分の浅ましさに苦しみ、一人カーテンを閉めた真っ暗な部屋で頭を抱えていた。
そんなティアにいつの間にか部屋に入っていた侍女が声を掛けた
「お嬢様………お嬢様大丈夫ですか?」
その言葉にティアはゆっくり顔を上げる
「ああ…モネ…どうしよう……私…クレア様に対して酷い事を…なのに私…私、ウィリアム様が好きだから…どうしても浅ましい考えが…」
細々とした声で心の内を溢すティアをモネがそっと抱きしめる。
「浅ましくなんかありませんよ。人を想う気持ちは抑えられないものです。どんな形でもお嬢様の願いが叶ったんです。それを喜んでいけない理由はありません」
「でも……でも、ウィリアム様が私を望んでる訳じゃ無い…」
「大丈夫です。誠心誠意愛情を持って尽くせば、きっと愛を返してくださいます。肌を合わせれば情も芽生えます。私の大切なお嬢様が愛されないなんて事ありません」
「………そうかしら…でも、ウィリアム様の愛を望む資格が私には…」
「大丈夫です。御子を産む資格が与えられたんです。いずれ愛は付いてきます。大丈夫です。モネが側に居ます。お守りします。大切なお嬢様」
「………………うん。私…頑張るわ…」
モネの言葉にティアは、誠心誠意尽くす道を歩む自分に酔う様に微睡んだ。
一方のトリステスは夕日が沈み、夜に塗り替えられた空をまだ見ている
(私の浅はかな行為が人を死に追いやる事に繋がった…未遂とはいえ、追いやったのは事実…一端とはいえ関わったのも事実。…故郷に帰る資格を失った事で、償うチャンスを頂いた。誠心誠意努めなければ…私の存在価値はそれだけになったのだから………クレア様への贖罪を…努めを果たす事を…)
腿の上で握りしめた手に、パタパタと涙が落ちる。
トリステスは故郷に別れを告げた。
◇
王妃宮の客室でリールが目覚めた、側には祈る様に手を組んだ子爵がいる。




