ヘクターとレイナと…
文法破壊な文章をめげずに読んで下さる皆様
ブクマ・評価・リアクションありがとうございます。
誤字脱字報告様のお陰で文がまともに修正され助かってます!
感謝です(^人^)
感想嬉しいです。ですが返信に手間取ってしまうので(汗)
あまり返信できない方向で(>人<;)
フラム一家を見送る為、家族全員でハーミット公爵邸の玄関ホールまで見送りに出ている。
「こんな遅くまでお邪魔して申し訳ない」
「いえ、こちらがお引き留めしたのですから」
そんな風に別れの挨拶をし合う家長の二人は握手を交わしている。
夫人同士は抱擁を交わし、エタンセルはヘクターと両手で握手を交わす。
エタンセルは思い出したようにヘクターに尋ねる
「今レイナ様は王妃宮にいらしてて、明日伺う事になってるんですが…何か言伝はありますか?お伝えする相手はレイナ様ですが」
エタンセルの言葉にヘクターは公爵を見る。
その力強い眼差しから容易に察せられる。クレアに会いに行きたいのだと…
「……はぁ、学園を欠席するとウィリアム殿下に勘繰られるかも知れない…午前休ならいいだろう。私に頼まれた用事で王妃宮に伺ったとしなさい。エタンセル嬢との事は発表していない今、対外的にはまだ婚約者だ。一緒に行動しても不自然ではないしな」
「ありがとうございます!」
◇◇◇
王妃宮の客間
扉の所でアニタが王妃宮の侍女から託けを受けている。
「レイナ様。エタンセル様が訪問されたそうですが…ヘクター様もご一緒だそうです」
「ヘクター様が?」
◇
ヘクターとエタンセルは王妃宮の応接室に案内され、レイナが来るのを待っている。
開けられた扉からアニタとキャロルを伴い入って来たレイナにヘクターは瞠目した。
ヘクターはクレアの障害についての書類を読んだ時『クレアの中に複数の人格が居る』と言う部分に、クレアの中に誰かが入った様なものかと想像した。全く別の誰かが…と。
いざレイナを前にして、ヘクターは捉え方が根本的に違った事に気づく
(俺は彼女を知っている)
ヘクターは呆然とレイナを見続ける
(学園で何度か会ったのか?)
クレアだと思って接したのが実はレイナだった…と言う事があったのかも知れない
そう思う一方で、心の中に甦るのはあの時
クレアがウィリアムの婚約者として紹介された夜会の…
中傷の言葉に青ざめていたクレアは一転、スッと胸を張り凛とした笑顔を顔に乗せた。
『…なんて…(綺麗なんだろう…)』
そう感じた時のクレアと重なる。
「お久しぶりですヘクター様」
「…俺の事が分かるんだ?」
声に出すつもりはなかったのにポツリと呟いてしまった
その呟きはしっかり拾われて、レイナは笑顔で答える
「もちろん。自我が目覚める前の事はクレアと同じ思い出を共有してます。でも私の事はレイナとお呼び下さい」
(つまり…)
[自我発現後の記憶の共有は無い(確証無し)]と書いてあったのをちゃんと理解できていなかった事に気付いた。
(彼女もクレアなんだ…)
「では、私はヘルミナ様とクラリス様の手伝いに行って来ますね。」
そう言ってエタンセルは明日の『お茶会』準備の指示しているだろう王妃と夫人の元へと応接室を後にした。
侍女が給茶をする間応接室には沈黙が広がる
「「………………………」」
給茶が整い先に口を言葉を発したのはレイナだった。
「今日いらして下さったのは、クレアを心配してですか?」
レイナに問われヘクターは口を開く
「うん…心配したんだ……クレアが自らと聞いて……どうしてそんな事になったか、君は知らないんだよな?」
「はい。……ただ、多分ウィリアム様絡みじゃないかと…」
「……そうだろうな。月曜にクレアが欠席と聞いた時、ウィリアムは一瞬バツの悪そうな顔をしたんだ…」
「そうですか…」
また沈黙が流れた
再び口を開いたのはやはりレイナだった
「それで…ヘクター様の心配は少しは晴れましたか? クレアは出てきませんが…体の方の心配はありません」
その言葉にヘクターは定まりきっていない気持ちを溢す
「書類を読んだ。クレアが出て来ないと言うのも読んで知ってる……体が大丈夫なのも……俺が今日来た目的は……ただ確認したかったのかも知れない」
「確認?」
ヘクターはコクリと一つ頷き、エタンセルの言葉を思い出す
『私は、クレア様にはもう会えないと覚悟を決めました。
そこに重点を置いては第二王太子妃としてブレが生じると思うので……もしも再びお会いできた時…クレア様に恥じぬ自分で居たい』
そして自分も『…そう覚悟するよ』と答えた事を
(クレアが居ない事の確認か?クレアが居ないと言う事実を受け止める覚悟か?)
ヘクターはクレアに会いたいと言う想いを消化したかった。
だが来てみて。レイナに会ってみれば…
レイナは別人では無く、別人格で…彼女もクレアだと知った。
クレアには会えないが、クレアは居る。
クレアに会いたいと言う望みが中途半端に叶い。心の置き場にただ困惑するしか無かった
「確認は出来ました?」
そう言ってコテンと首を傾げるレイナに、よく見る癖だと。ヘクターは懐かしさが募る
「……出来てない……出来てないけど、俺のやる事に変わりが無いって事は確認できた」
「?……そうなんですか?」
「ああ」
(最側近としてウィリアムを支える…そして王太子妃になるレイナとエタンセルも支える。支えて行く事が俺の役目だ。)
やっと気持ちを固める事が出来たヘクターが見つめる先のレイナが一つ瞬きをした。
開いた瞳は強い…とてつもなく強い眼差しだった
それを見てヘクターは固まる
「え?」
瞬間…強い眼差しだった瞳が驚きに見開かれた
「ヘクター様?」
そうポツリと溢したかと思うと、両手で顔を覆って立ち上がった。
(何だ?)
ヘクターは困惑で動けない
レイナは顔を覆ったまま周りを見て扉を見つけるとその方向へ駆け出す。
扉の前にいたキャロルが向かって来るレイナの両肩を押さえるようにして止める。
「フュリアス様!落ち着いて」
「どいてーーーーーー!!!!!」
あまりにも強い引き裂く様な悲鳴にも聞こえる声に、キャロルはたじろいでしまった。
その隙を突いて扉を開けて出ていくフュリアス
我に返ったヘクターが後を追おうと立ち上がった
(フュリアス?…あれがフュリアス…)
部屋を飛び出せば、通路を走って行くフュリアスが見える
(俺は…知ってる)
フュリアスの後ろ姿に幼い頃のクレアが重なる
ウィリアムが別の令嬢とファーストダンスを踊ったのを見て、ホールを飛び出し庭園を走って行くクレアの後ろ姿…
(クレア!クレアだ!クレア…クレア…)
ヘクターが走って追いかければ直ぐに追いつき、両腕を伸ばしてフュリアスを抱きしめる様に捕まえる。
「クレア!」
「違う!!!クレアじゃ無い!クレアじゃ怒れない!フュリアスって付けてもらったもの!!!うーーー!フュリアスなの!うぅ!」
フュリアスは暴れながら叫び…涙を溢しだした
「私はフュリアスなの!だからヘクター様は駄目!!嫌!うぅーー!ヘクター様は嫌!見ないでー!!うわあぁあぁあ〜」
その叫び声にヘクターは涙が滲む
(俺に怒ってる所を見られたく無い…幼馴染だから…だから仕切りにフュリアスだと…フュリアスはクレアの姿が怒ってるのを俺に見せたく無いのか……)
フュリアスの気持ちが分かっても、ヘクターは抱きしめる力を緩められない。
「うわああぁああぁぁぁーーー………」
泣き声が止まった。
「…………けほっ」
フュリアスが一つ咳をした
「?」
その様子にヘクターは少し力を緩める
「んん!今回はいつも以上に喉が痛いわね……」
「………レイナ?」
ヘクターはおずおずと尋ねる
「はい。レイナです。んんっ…離してもらって大丈夫ですよ」
その言葉でヘクターはパッと手を離した。
「…………」
「驚かせてしまってごめんなさい」
「レイナ様!申し訳ありません。私が止めきれず」
キャロルは追いついてはいたが、手を出せずに傍観するしかなかった…
「良いのよ。ヘクター様が止めてくれたみたいだし。何も壊れてないみたいだし…誰も怪我が無いみたいだし?…そうよね?」
「はい」
レイナのあっさりとした返しにキャロルはホッとする。
アニタが追いつき、手に持つハンカチでレイナの頬を拭う。
「レイナ様、身だしなみを整えましょう。随分乱れてしまいました」
その言葉にヘクターが重ねる
「じゃあ…俺はこのまま失礼するよ……」
「え?」
「このまま学園に行く。レイナ会えて良かった」
「ではお見送りを…」
「いやいいよ。ここで…また君達に会いに来る。エタンセルにもよろしく伝えておいてくれ」
「……はい」
レイナの笑顔にヘクターも笑顔を返し、応接室に置いてある上着と鞄を取りに向かった。
(……俺のやる事は何も変わらない)
だが、その決意は何倍にも固まった。
◇
その日の午後
レイナは王妃宮の客間でウィリアムからの手紙を受け取った。
一度ドケーシス家に届いた手紙を侍従が届けに来てくれたのだ。
〜〜 クレアへ 〜〜
具合が悪いと聞いている。
見舞いに行った時は会えなかったが、その後調子は如何だろうか?
君に会えなくて寂しいよ。
また、見舞いに寄らせてもらうね。その時は会えると良いけど…
一日も早い回復を祈っている。
〜〜〜ウィリアム〜
一緒に届いた小ぶりのアレンジメントは黄色いガーベラと霞草。香りが少なく元気が出る色味のアレンジ。
クレアを思い遣る気持ちを感じる。
手紙の内容はクレアを心配するものだけで、自死の原因になる様な事は見受けられなかった。
「……本当に…あの日何があったのかしら…」
レイナは小さく溜め息をついた。
◇◇◇
気を失ったリールが運ばれて行く…
「リール嬢には後で説明する事になるわね……」
突然言葉を発したクレアに二人はビクリと肩が跳ねる。
「では、トリステス様とティア様はこちらをご覧下さいな」
そう言ってクレアは『解離性同一障害』について書かれた資料を其々に手渡す。
「どうして貴方がたが側妃候補に選ばれたのか。経緯をご説明致しますね」
クレアはパンッと一つ手を叩いてそう言った。




