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「彼女は死にました。」私はあなたの子を産みません。  作者: Kurakura


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30/49

初めての口付けは…


「申し訳ございません……クレア様は、高熱を出されており…今は、お会い出来ません……」


ウィリアムはドケーシス公爵家の執事の言葉を思い出しながら、王城の廊下を歩いていた…

(…高熱……大丈夫かな…()()()は元気そうに見えたけど……)


そこまで考えて、()()()のクレアの絶望が浮かんだ表情を思い出す


(……やっぱり()()()()だったな……)


学園の中庭での己の行動を振り返る


(リール嬢との口付けは何も良くなかった……()()()()()とは全然違う。)


ウィリアムの胸に、幼い自分の行いが蘇る


◇◇◇


子供の頃

王城にドケーシス公爵夫人に連れられてクレアは遊びに来ていた。

 昼食後「食べたばかりなのだから、大人しく読書にしなさい。」と言われて

図書室にクレアと二人で図書室に行く


暖かい日差しが差し込む窓際の床にラグを敷きクッションを沢山並べて、クレアは座って本を読んでいた。

目当ての本が中々見つからなかったウィリアムが遅れて窓際に戻ると

午前中、散々中庭で遊んだ後だったせいか、昼食を食べた後だったからか…

クレアはクッションを枕に横になって、スヤスヤと眠っていた


(……かわいい…)

ウィリアムは小さな柔らかそうな唇から目が離せなくなる。


 数日前

クレアと出掛けた時、馬車の窓から結婚式を挙げている教会が見えた


(うわぁ  結婚式だー  花嫁さんキレイ!とっても素敵!

聞いて!ウィリアム様! お父様とお母様は、お互いの()()()()()()()が結婚式なんだって!)


 (初めての口付け…)

ウィリアムはクレアの側に四つん這いになってクレアの顔を覗き込む


(素敵でしょう …私も()()が良いなぁ〜…そうだ!

もしも!もしもよ!…私とウィリアム様が婚約出来たら  私達も()()()()()()()を結婚式でしましょ!)



ウィリアムはクレアの唇に、指先でそっと触れる

 (………柔らかい…)


(約束よ!ウィリアム様  )


 (……クレアの初めての口付けは()()()


ウィリアムはクレアに()()()口付けをした

クレアの唇は柔らかく…香りは甘く…寝息がウィリアムの鼻を擽ぐる

ほんの数秒の甘い時間


「ごめんねクレア…約束破っちゃった 。」

ウィリアムは小さな声で謝った。


その後もウィリアムは何度か()()()口付けをした

チャンスは少ない、クレアには決してバレてはいけない

(初めての口付けは結婚式)と約束したのだから。


最後に口付けたのは、十五歳の頃

王城でのダンスレッスンを終えて、ドケーシス公爵家まで送る馬車の中


疲れていたのか、クレアは深く眠っていた


「クレアが眠ってしまったから、揺れない様に速度を落として。」

そう御者に言い渡し、クレアの隣に移動する


(どうか…そのまま眠ってて…)

祈りながら頬に手を添えて、慎重に角度を変える

そして何度目かの()()()口付けをする


(もどかしい…深く口付けたい…頭が焼き切れそうだ…)

クレアから香る甘い匂いにクラクラしながら

ウィリアムは理性に鞭打って()()を抑え込んだ。


◇◇◇


(…口付けって相手が誰でも気持ちが昂ぶるって訳じゃ無いんだな……)


 リール嬢との口付けは、触れた瞬間ウィリアムの体が勝手に止まりそうになった。

不自然にならない位に、口を真一文字にして、それなりの口付けをしたのに

 リール嬢は薄く唇を開いた、その瞬間ウィリアムには微かな不快感が芽生えた。

中庭の入り口にクレアを見付けたから、演じられたが


 クレアに()()()口付けを繰り返したせいで、ウィリアムの中で()()()と言う行為は酷く()()物になっていた。

 クレアに向けるのと同じ熱は感じなくとも、普通に合わせ(口付け)られると思っていたのだ。


(気持ちの無い口付けは…あんなにも嫌な物なのか…)


そんな事を考えて歩いていると

向かいから、ヘクターの父、ハーミット公爵が歩いてくる。


「殿下。今、学園からお戻りですか?」

ハーミット公爵も、ウィリアムに気付いてそう言った。


「ドケーシス公爵家に寄ってたんです。今日、クレアが欠席したから見舞いに…熱が高いとかで会えなかったけど…」


ウィリアムがとても心配そうに、そして会えなかった事を酷く残念そうにしている


「………そうですか………」

そう言いながら…ウィリアムの様子を見てハーミット公爵は思う。


(こんなに()()()いる様子なのに()()…………クレア嬢を自死にまで追い込む程の()()したんだ?この方は…)


「ハーミット公爵は帰る所ですか?」


「いいえ…急な案件が入り……明日の議会の為に調整しなければならない事が多岐に渡りまして…今日は王城に泊まりです。…ああ。それと…陛下と王妃殿下も、急ぎに取り纏める公務が入ったので…おそらく、夕食はご一緒出来ないでしょう。」


「…それは大変だね…分かったよ。教えてくれてありがとう。」


そう会話を交わした後、二人は分かれた



 ハーミット公爵は王城の通路を、自分用の執務室に向かいながら考えを巡らせていた


(まさか…あそこまで大変な症状とは……)


年頃の令嬢を取り押さえる事になってしまったハーミット公爵の耳には

ドケーシス公爵令嬢(フュリアス)の悲痛に泣き叫ぶ声が残っている


宰相を務め、この婚約の今後を采配する事に深く関わる立場な為、事情は全て明かされている


自分の息子の幼馴染で、幼い頃から見知った娘が、あんなに重く苦しく生きていたのかと

胸が痛くなる


(ヘクターにどうやって伝えるか…)


 ハーミット公爵は息子の恋心に気付いていた

気付いていたがどうする事も出来ない。

クレアは既にウィリアムの婚約者で、 何よりクレアの気持ちがウィリアムにしか向いていなかった


 ヘクターは聡い子で、早々に自分の気持ちに蓋をした様子だった。

その後は公爵家とあって、ヘクターへの婚約の打診が何件も来るが

家督を継ぐとか血を繋ぐなどの束縛のない三男なので、急ぐ必要がなかったから

ヘクターの気持ちを優先してヘクターが望むまで婚約を薦める事はしなかった。


 いつまで経ってもクレアへの想いを胸に秘めて、新しい恋を探せないヘクターに

ハーミット公爵は(一生独身を貫くかも知れないな…)と思い始めていた頃


 ヘクター自ら、『婚約したい相手が出来ました。』と言われた時、ハーミット公爵は本当に驚いた。

その相手が、麗しい容姿に秀才と名高いエタンセル・フラム侯爵令嬢という事に、二重に驚かされた。


(エタンセル嬢が第二王太子妃候補という事も話さなくては…)


ハーミット公爵は

エタンセル・フラムは面白い令嬢だな…と思っていた

 どうやらクレア嬢に憧れているそうで、話してみればそれはもう()()に近いものがあった。


(なるほど…これはヘクターに似合いの令嬢だ…)

家格も容姿も成績も申し分無い。子が出来ない事も、家を継がないヘクターには些末なことだった。

 何よりも、想いがヘクターと同じ方向を向いている。

この二人なら良い夫婦になり、いずれ国王と王妃になるウィリアムとクレアを、支えてくれるだろう。と


そんな未来は来なくなった。



(御二方の憔悴も酷かった…)


 ドケーシス公爵家の面々が退城した後、王妃は床にへたり込んでしまった


 クレアの様子にショックを受けて、卒倒してもおかしく無かったが

王妃として、ウィリアムの母として。なんとか毅然とした態度を保った。が、限界が来てしまった。


「…どうしましょう……あんなに()()()状態だなんて……何を…ウィリアムは()()()()()()……私達が追い込んだの?…私達がクレアを()()()の?……」


カタカタカタカタと震えながら、涙をこぼす王妃

陛下は押し黙ったまま、しゃがんで王妃を抱きしめて背中を摩っている。


リッター医師が鎮静剤を持って来る。

それを王妃に飲ませて


ブレイブ(ハーミット公爵)……先に、私の執務室へ行っててくれ…ヘルミナを休ませて来る…」


そう言って、陛下は王妃を抱き上げた。


「はい。」


「あぁ…それと。明日の議会に参加するよう、フラム侯爵に召喚状を書いてくれ。」


そう言い付けて陛下はリッター医師を引き連れ、赤の応接室を出る


「…畏まりました。」

ハーミット公爵は深く頭を下げた。


国王の執務室で一時間程

ハーミット公爵は陛下を待ちながら、フラム侯爵に出す召喚状を書いていた。


ガチャリと扉を開け、陛下がやって来た。


ハーミット公爵は立ち上がり、自分用の執務机の横に出て頭を下げる。


陛下は手をヒラヒラと振って

「いいんだ、()()()()…少し息を抜きたい…」


 陛下のその言葉で、ハーミット公爵はかしこまるのを止める。


「そうか…ヘルミナ様は大丈夫か?」

そう尋ねたハーミット公爵は、部屋の壁際に備えてある水差しの元へ移動する。


「……あまり良くないな…薬で良く寝てるが……随分、責任を感じてる……」

陛下は自分の執務机から椅子を引き、ドカリと腰掛ける。


「お前もだろう?……あまり思い詰めるな。」

 そう言いながら…水差しからコップに水を注ぎ、陛下の元へ持って来る


陛下は、それを受け取りグイッと飲み干す。


「………………そんなのは無理だ。」

空になったグラスを見ながら陛下は呟く


「…そうだな。…」

少しの間、沈黙が訪れる


「では…やるべき事をしよう。」

ハーミット公爵は陛下の手から、空になったグラスをスッと取り上げてそう言った。


「………分かってる。」

そう答えた陛下の肩を、ポンポンと叩いてから

グラスを置きに壁際へ

それから自分の執務机へ移動して、出来上がった召喚状を手に取る。


「俺はコレを出してから、自分の執務室に戻って…明日の議会に向けて準備する。」


「…苦労を掛けるな。」

「若い娘が()()()()を決めてるんだ。大人は応えてやらないとな…」


そう言いながら執務室の扉を開けて、ハーミット公爵は陛下の方を振り返り

「では陛下。御前を失礼します。」


深く頭を下げたあと、静かに扉を閉めた。



◇◇◇


フラム侯爵は王城の会議室の扉の前に立っていた


(…本当に…第二王太子妃候補……なんて話が出るのかな……)


現実離れした展開の速さに、フラム侯爵は付いて行けなくなっている。




ハーミット公爵に名前が付きました。

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