最終話:若様、結婚する
北天の闘技場での一戦は、ヒノワの歴史を動かす勝負となった。
「太郎よ、現時点でもはやそなたが次代の神君となる事は確定した」
「ははっ、ありがたきお言葉です」
「クガニ姫とも合流し、五大のスーパーロボット全機揃えて日戸へ参るが良い♪」
「かしこまりました」
「娘達もようやく落ち着くと言うものだ、頼んだぞ太郎♪」
「慎重に検討を重ねて、前向きに善処いたします」
当代の神君である家長と、北天城の天守の間にある巨大モニターで通信を交わす太郎。
上下姿で正装して平伏しながら応答する太郎。
山吹姫に楓、月夜に葵に杏、青葉もきちんと着物を着て正装して並び平伏。
通信を終えて頭を上げる太郎達。
「太郎様、家の山猿姫を何卒よろしくお願い申し上げます!」
「いや、ご家老殿言い方っ!」
「うっきうき~♪ 私は兄者の可愛い小猿~♪」
「ていうか、青葉も俺の肩に乗っかるなっ!」
猿のように太郎に肩車状態になる青葉。
「あらあら、青葉様にもお灸が必要ですわね♪」
「ああ、盛大に熱い灸をすえてやろう」
「わからせは必要ですしね」
「若様の独り占めは駄目だよね♪」
「クガニ様も加わると、大所帯になりますわね?」
青葉の行動にやきもちを焼く山吹姫達。
「正妻は私ですから♪」
山吹姫は静かに燃えていた。
太郎は太郎で、これからの事を思いげんなりしていた。
「はいた~~~~い♪ あおちゃ~~ん♪」
太郎が溜息を吐いたそばから、元気な声が響き渡る。
「むむっ! クガニちゃんが来たよ兄者っ!」
「ああ、わかってるよ」
探しに行く前に向うから来た、やがてクガニも天守へと招かれる。
「皆久しぶりさ~♪ 太郎にーにが、次の国王に決まったって聞いて,来たさ~♪」
クガニが笑顔で語る。
「そうだ、だから次は神君として我らを倒した者として太郎に責任を取らせるんだ」
葵が立ち上り拳を握る。
「姫? 太郎様の事を好きだと言わないと嫌われてしまいますよ?」
「い、嫌だ! 私は太郎が好きなんだ!」
杏の言葉に慌てる葵。
「だから、俺には山吹姫がいてだなあ?」
「私は構いませんわ、これも神君たる者の務めですもの」
「若様、年貢の納め時だよ♪」
「いや、親御さん達がどういうと思う?」
頑張って抵抗して見る太郎、あっぷあっぷな状況をどうにかしたかった。
「太郎様、私の事を愛して下さるように皆様も愛して下さいませ♪」
山吹姫が太郎を諭す。
「そうそう、若様なら皆文句は言わないよ♪」
「楓姉さん、マジですか?」
「太郎様、皆マジですわよ♪」
「杏さんまで」
楓と杏には詰められてたじろぐ太郎。
「神託が来ました、五大分家の神々が皆許すとの事です♪」
瞳を閉じて黙っていた月夜が、目を開いて告げる。
「にーに、心配ないさ~♪ 皆でまる~く収まるよ♪」
クガニが太郎の肩を叩く。
「わかった、責任を取るよこうなりゃ皆一緒に生きて行くぞ!」
慕ってくれている仲間達の面倒も見られなければ、国の面倒なぞ見られない。
「任せろ太郎♪ 私達でお前を守るし担いで支えるからな♪」
葵が笑顔で自分の胸を叩く。
かくして、太郎の恋愛問題は全方位からのフルボッコで太郎が陥落した。
ニチリンオー、イットウオー、ホクテンオー、ナンカイオー、ギンゲツオー。
五大分家のスーパーロボット全員が集結した状態で、北天を旅立ち一同は日戸へと向かう。
「久しぶりの日戸だなあ♪」
「若様、お寿司食べたい♪」
「姉上は食いしん坊だな、ヒノワ晴れだぞ太郎♪」
「兄者、ロボを呼んで練り歩きましょう♪」
「四体で騎馬を組んで、ニチリンオーを担ぐのもいいですね♪」
「ロボでお神輿は面白そうさ~♪」
「人数が増えたから、ツッコみ切れないな」
日戸へと入るなり騒がしくなる仲間達。
どうどうと大人しくさせつつ、目指すは日戸城。
日戸の民達は、大爆笑で太郎達を迎え入れた。
「皆様、太郎様を歓迎してくれてますわ♪」
「そうだね、ありがたいよ」
増えようとも太郎の正妻の位置は渡さずと、常に隣に立つ山吹姫。
改めて、太郎達は正装に着替えて天守の間で平伏する。
「皆の者、良くぞ戻った♪ 顔を見せよ♪」
家長が現れて、太郎達に頭を上げさせる。
「さて、通信でも伝えたが太郎よ良くぞおてんば娘達を手懐てくれた♪」
「恐れ入ります」
「各家からも、娘の面倒はそなたに今後も頼むと言われておる」
「謹んでお受けいたします」
「今後そなたには、様々な責任が課せられる事になるが皆で支え合うのだぞ♪」
「ははっ! 肝に銘じます!」
太郎の言葉に、家長は微笑むのであった。
ヒノワの全土に向け、瓦版の号外や緊急ニュースが発信される。
太郎が次代の神君に決まった事が全国各地に告知され、各地に祝いの餅や菓子が振舞われた。
「お立場が確定した所で、祝言と参りましょうか♪」
「そうだね、まさかこういう形になるとは思わなかったけど
幽世屋敷に戻り居間で話す太郎と山吹姫。
突如襖が大きな音を立て開き、葵達が現れる。
「私はいつでもいいぞ、太郎♪」
「我等、兄者をしっかり支えてまいります♪」
「皆、にーにの事が好きすぎさ~♪」
「兄様、ずっと一緒ですよ♪」
「結婚後は、家庭の運営は寄合で決めましょうね太郎様♪」
「その寄合、俺には承認の義務しかなさそうだな」
寄合と聞けば、合議制で民主的に聞こえる。
だが、太郎にはその寄合での発言権はなさそうな未来が見えた。
嫁達の尻に敷かれ続ける未来からは、太郎は逃れられなかった。
挨拶やら根回しなどの準備で時間はかかったが、一週間後。
ニチリンオー、イットウオー、ホクテンオー、ナンカイオー、ギンゲツオーが集った富桜山の山頂。
お共ロボット達も注連縄が飾られてお祝いモードで全機集合だ。
太郎は黒の紋付袴、山吹姫達は白き花嫁衣裳に身を包み神前での結婚式を挙げた。
「太郎様、末永く宜しくお願いいたします♪」
「こちらこそ、宜しくお願いします♪」
最初に山吹姫と夫婦杯を交わす太郎、彼女がいなければ旅は違っていただろう。
「えへへ♪ これからは旦那様だね♪」
「楓根さんも宜しく♪」
次に杯を交わしたのは軍配党のムードメーカーの楓、彼女とヒスイマルには助けられて来た。
「太郎、これからも全力で行くからな♪」
「姫、手加減を覚えましょうね♪」
「いや、二人ともお手柔らかにな?」
軍配党の二人の次はイットウオー組の葵と杏と杯を交わす。
「にーに♪ かなさんど~♪」
「うん、かなさんど~♪」
ナンカイオーのパイロットのクガニとの夫婦杯。
「兄様、いえ貴方様♪ 今後の人生の旅もお供させていただきます♪」
「ああ、月夜も宜しくな♪」
「ええ、スッポンの噛み付きが如く千年万年経ても離れません♪」
ギンゲツオーのパイロットの月夜が瞳を輝かせて語り、杯を交わす。
「兄者、大好きですよ♪」
「ああ、ありがとうな♪」
最後に杯を交わしたのはホクテンオーのパイロットの青葉。
中二病の暴れん坊な青葉も、しおらしく振舞っていた。
万雷の拍手が巻き起こり、桜の花弁が吹き荒れる。
ロボ達に見守られながら祝福され、一つのチームとなった軍配党。
太郎達の新たな門出が始まるのであった。
天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記 完




