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天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記  作者: ムネミツ
第五章:西街道北上編
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第三十七話:若様、イットウオーと再戦する

 「ここが秋山、隣は北天とここまで来たか」


 晴れた朝、太郎が丘の上から秋山の地を見下ろし物思いに耽る。


 「ここより北だと、北神威島(ほっかむいとう)かあ」


 楓も呟く。


 「さらに北はピロシキ王朝ですのね?」


 山吹姫が続く。


 「ヒノワだけでも広いのに、世界は更に広いのですね」


 月夜も丘の上から宿場町を見下ろす。


 「空の上にも世界はあるし、世に果ては無しだな」


 太郎も感慨深く呟く。


 「まあ、物思いはおしまいにして秋山と言えばうどんに米にと食い所だよ♪」

 「毎度ですがまたですか楓姉さん?」

 「お約束のご当地の美食ですわね♪」

 「最早川(もはやがわ)と言う名水の地ですからね♪」

 「月夜も乗って来たな」


 ワイワイ語らいながら丘を降りて、宿場町へと向かう太郎達。


 行き交う旅人達に見られたり、驚かれたりヒソヒソ話をされたりする。


 「皆様♪ 民に寄り添う正義の味方、軍配党が秋山の地にやってきました♪」


 楓が周囲に声をかけて手を振る。


 「皆の衆、俺は民の為に力を振るうぞだから恐れないでくれ♪」


 太郎も笑顔で手を振れば、旅人達が足を問えんて拝み出した。


 「ニチリンオーは太陽の神、万民を漏れなく照らしますわ♪」


 山吹姫も幟を振り回してアピールする。


 「道祖神様ですわ、お供えをして行きましょう兄様♪」

 「ああ、皆の旅の無事の祈願だ♪」


 道沿いに立つ祠に握り飯を供えて、太郎達は周囲の皆の旅の無事を祈る。


 民衆への好感度アップを図りつつ、宿場町へと入る太郎達。


都会ほどの賑わいではないが、宿屋や商店の活気は良い明るい宿場町であった。


 「あれ? まさか、杏さんか?」

 「うん、と言う事は葵もいるね」

 「面白い事になりそうですわね♪」

 「葵ちゃん、すぐ刀を抜こうとするから苦手」


 街に入った太郎達、目の前の通り沿いの茶店を見て驚く。


 店の外の長椅子に座り、あんこマシマシの団子と茶を楽しむ知人を見つけた。


 「あら、太郎様♪ 月夜様もお仲間にされたのですか?」


 太郎を見てあざとく微笑む杏。


 「ええ、杏さんが自由時間なら葵は寝てるのか?」

 「そのような所でございます♪」


 従姉妹のお供がのんびりしてるとあらば、寝てるか何かであろうと予想する太郎。


 「太郎様♪ ここは私達もご一緒しましょう」

 「うん、お団子を食べつつ情報収集だね♪」

 「葵ちゃん、食あたりじゃなければ良いのだけれど?」


 太郎達も杏と同じ茶店で休息をとる。


 「あらあら皆様、ご活躍は存じておりますよ♪」


 杏も店内に入り太郎達と同席する。


 「まあ、杏さんが情報収集担当だろうからな」

 「葵様は、戦闘特化だと思われますの」

 「そうだね、あの子は剣の申し子みたいなものだから」

 「体動かすこと全般は得意かな?」


 茶と団子を頼み、飲み食いしながら語り合う。


 「ええ、なのでその武を活かす将が必要なのですよ太郎様♪」


 杏子が太郎に振る。


 「俺が神君になればそうするさ、悪いようにはしない」

 「では、私も葵様も側室希望でございます♪」

 「いや、そこはちょっと待って!」

 「ええ、私もクガニちゃんも太郎兄様を諦めてませんから♪」

 「月夜も勘弁してくれないか?」

 「私も側室になるよ、若様♪」

 「正妻は私ですから♪」

 「山吹姫は良いとしてなあ?」


 仲間や親戚から好意を寄せられて、戸惑う太郎であった


 「まあ、その件は太郎様が即位されてからでも遅くはないと言う事で♪」

 「いや、大事な事だから勝手に決めるな!」

 

 ちょっとマジで怒る太郎。


 「失礼いたしました」


 太郎の気迫に驚いて詫びる杏。


 結論として、茶店では特に情報は得らえなかった。


 杏と別れた太郎達は、宿場を後にして街道を進む。


 「杏さま、肝心な所ははぐらかしてましたの」

 「あっちも忍びだからね」

 「兄様へのお気持ちには偽りは無しかと」

 「その話は、今の俺の要領を越える」


 恋愛事は苦手な太郎であった。


 「待て~~いっ!」

 「先ほど振りでございます♪」


 後ろから葵と杏が太郎達を追いかけてきた。


 「来たか、食い過ぎで寝ていたんじゃなかったのか?」

 「食い過ぎでも食あたりでもない! 月夜もいたとは!」


 葵に呆れる太郎。


 「葵ちゃん、女の子らしくした方が良いよ?」

 「何を言う、私こそ天下一の剣術乙女だ!」

 「うん、剣なら家の山吹姫や桜鹿の薫子姫と世にはまだまだいるぞ?」

 「噂には聞いている! いつか試合を挑む予定だ!」


 ぐだぐだなトークになる太郎達。


 「それでは、改めてイットウオーとニチリンオーで勝負なさればいいのでは?」


 杏子が提案する。


 「そうか、乗ったぞ杏♪ 私が勝ったら太郎は家の婿に貰う!」

 「断る、俺は山吹姫以外を娶る気はない!」

 「葵ちゃん、我儘はいけませんよ? 兄様は皆の夫です!」

 「月夜も大概だな! 大体、葵は俺のどこが好きなんだよ?」

 「それは、優しい所っ! きちんと私と向き合てくれる所! お前の全部が欲しい!」


 葵の太郎の好きな点に同意する仲間達。


 「葵様のお気持ちは共感できますが、渡せませんわ♪」

 「私も若様の事は嫌いじゃないしね♪」

 「独り占めはさせませんよ!」

 「葵様、私も太郎様の事はお慕いしておりますので♪」

 「いあ、お前らなあ?」


 前世で縁がなかった、ラブコメ展開に参ってしまう太郎。


 「勝負だ太郎! 私が誰より一番だって、わからせてやるっ!」

 「うん、断固としてお断りだよ!」


 女心は苦手な太郎、周囲に村や畑などがない平野でロボ勝負を挑まれる。


 夏の風が吹き出した平野、イットウオーとニチリンオーの二体のスーパーロボットが向き合う。


 立ち合いと被害を防ぐ結界役として、ギンゲツオーが間に立っていた。


 「天下両断イットウオー参上っ!」

 「天下成敗ニチリンオー見参っ!」

 「それでは、始めっ!」


 ギンゲツオーの合図で動き出す二体、お供ロボも加護武装もなし素の勝負。


 「ヒカリオオタチ壱の太刀、真っ向下ろし!」


 巨大ロボが巨大な刀を大上段に構えて踏み込み、振り下ろす。


 「基本は極意か、ならば破って見せる! ダイグンバイアッパーッ!」


 対するニチリンオーが取った策は、全速力で前に突っ込み巨大な軍配を振り上げる事。


 激しい衝撃音が鳴り響き、振り下ろされた大太刀が跳ね上げられる!


 「こっちだって、剣術は学んでるんだ! お返しだっ!」


 ニチリンオーのダイグンバイが、胴を打ちに行くがイットウオーの大太刀が防ぐ。


 「胴を防がれたら首だっ!」


 胴を防がれて跳ね返された勢いで切り返し、反対側から横面を討ちに行く。


 山吹姫から学んだ野風流が唸るり、イットウオーが弾き飛ばされ転がる。


 生身では苦戦するであろう葵だが、ロボ勝負では太郎に分があった。


 「これしきで負けないっ! イットウビ~~~ムッ!」

 「ならばこっちも、ニチリンビームだっ!」


 武器でのぶつかり合いの次は、ビーム対決。


 両者共に兜の飾りから必殺のビームを発射し、ぶつけ合う。


 青白い光線と金色の光線が押し合う、ビームの相撲とも言うべき力比べ!


 エネルギーの消耗と意地のぶつかり合いを制したのは、ニチリンオー。


 ビームを切り、再度の白兵戦に持ち込もうとしたイットウオーに対して連射に切り替えて光の弾でその動きをけん制する。


 「そらっ、組み合って相撲で決めようぜロボ相撲だ♪」


 白兵戦が望みならと突進し、ニチリンオーをイットウオーに組み尽かせる太郎。


 「挑まれたなら受けて立つ!」


 葵もイットウオーを操り、相撲勝負に乗っかる。


 互いに退かずに組み合い、背部のブースーターを噴射して押し合う。


 これが太郎の策であった、剣と馬術と弓では葵の方が上だが相撲なら太郎の土俵。


 ニチリンオーが先にブースターを切り、力を抜いてくるりとイットウオーのサイドに回る。


 バランスを崩したイットウオーの足に足をかけて跳ね上げて、首に手を回して掛け倒した。


 「決まり手は、河津掛けだ♪」


 太郎が叫ぶと同時にイットウオーが転倒する、ここでギンゲツオーが手を挙げた。


 「勝者、ニチリンオー!」


 ギンゲツオーがニチリンオーの名を呼び、勝負はついた。


 ロボを送還し、生身に戻って向き合う太郎と葵。


 「負けた、太郎に負けた」

 「そうだ、だから俺について来い!」

 「え? それって、もしかして結婚か♪」

 「それに関しては色々問題があるから取り敢えず、お供からだ!」

 「うん、太郎のお嫁さんに相応しいと証明して見せる♪」

 「特大な面倒事だが、放置できねえだけだ!」


 負けたら素直に太郎緒に懐きだした葵、溜息を吐く太郎。


 「太郎様が認めたなら受け入れますが、私の正妻の座は揺るぎませんの♪」

 「若様、背負い込んじゃったなあ♪ 私も背負ってもらお♪」

 「兄様、これは私もチャンスがあると言う事ですね?」

 「太郎様、私は側室で構いませんので喜んでお仕えさせていただきます♪」


 太郎が葵を仲間に入れた事で、恋愛のチャンスを見た楓や月夜達。


 「いや、お前らなあ? 俺の恋愛の要領は低いんだぞ?」


 クガニ達に知られたら、自分達もと来そうなのが怖い太郎。


 だが、面倒を見ると言った以上は捨て置けない。


 かくして軍配党の郎党に、葵と杏が加わったのであった。

評価など、応援のほど宜しくお願い申し上げます。

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