第二十一話:若様、ハニワ教団と決戦する!
ヒノワ西国地方から、四島へと渡った若様こと軍配太郎と仲間達。
兎の神様を助け、幸先よくやってきたのはいいいけれど。
まずは阿島からと歩んでみれば、狸の親子と漁村を救う為にひと騒動を起こしてしまう若様。
次に訪れた香松の地にて、これまで退治した敵とは毛色の違う悪党のハニワ教団と遭遇する。
これは捨て置けぬと若様達はハニワ教団の謎を追い、佐知藩へとやって来た。
「一応、佐知藩はハニワ教団に対応しているみたいだね若様?」
「ああ、けど暗示や洗脳に入れ替わりとかもあり得るから領内に探りは入れないとね?」
「とりあえず、この店には連中の臭いはありませんわ♪」
佐知藩の領内で立ち寄った峠の茶屋。
三人で敵を警戒しながら席に着き、茶と団子と軽い注文をして相談する太郎達。
「お茶も団子も何もなし、むしろ美味しい位だよ♪」
「すみません、みたらし団子をそれぞれもう三皿追加でお願いいたしますの♪」
「うん、姫の食いっぷりは清々しいな♪ 腹が減っては戦にならないから俺も食うか♪」
「そうそう♪ こういう時こそ名物のみたらし団子をしっかり食べないと♪」
「カツオだけじゃなかったんだ、名物」
楓が、みたらし団子はこの地の名物だと太郎に教える。
山吹姫が笑顔で団子のお替りを頼む姿に、太郎も笑顔になる。
緊張し過ぎてもいけないなと、自分も追加で来た団子を食べて気分を切り替える。
店内を見回せば壁には、情報提供の報酬は三千円ほどでハニワ教団の兵士の人相書きがあった。
太郎達が公儀の側であるという身分を隠さずにいても、店内で敵襲がない事から安堵する一行。
団子を食い終え茶を飲み干して皆で席を立ち、勘定を済ませて店を出る一行。
城下町を目指して、あれこれ語りながら再び街道を進む三人。
青の着物の上に赤い陣羽織と桃太郎のような、武者姿の太郎は自分の腰の刀を見る。
敵が出現する気配は、太郎に力を貸す古代の刀の神コダイオーブレードが太郎の刀に宿り教えてくれる。
「そう言えば、コダイオーブレードは奴らと戦っていたのかな?」
太郎は自分の武器と敵の関連性を想う。
「恐らくはそうですわ、古の世も神々や人が覇を競っていたと聞いておりますの?」
ピンクの着物の上に金の胴丸鎧を着て、腰に二本差しで帯刀した姫武者。
狼の神と、古代の流れを汲む巫女の娘である山吹姫が語る。
「古代でもやられて懲りずに、今の世に迷惑をかけないで欲しいよね」
度世人姿の緑髪の美少女、天狗の忍者の姫にして太郎の従姉妹にあたる楓が溜息を吐く。
「まあ、城下に着いたら印籠を見せて神君家の権力を使って協力を頼むか」
太郎も溜息を吐きながら呟く、権力側の人間だからこそ使い時が悩ましい。
「それで敵が正体を現して襲って来たら、部位を持って返り討ちですわ♪」
「そうそう、ズバッと成敗しちゃて良い案件だよ♪」
山吹姫と楓が微笑む。
「そうだね、そう言う時は仕方ないよなあまり褒められる考えじゃないけど」
武闘派の仲間二人にどう指示を出すかも、リーダーである太郎の頭の使い所であった。
「皆様、大きな川がありましてよ!」
山吹姫が目の前の巨大な川を指さす。
「おお、これが十万川だよ♪」
楓が嬉しそうに語る。
「大きい川だと治水が大変そうだな」
太郎は川の広さや綺麗さよりも治水の方が気になった。
「うん、若様が言うように川の氾濫に備えて佐知藩はこの先に大きな堤を作ったんだって♪」
「なるほど、それは気になりますの♪」
「うん、ハニワ教団が堤を壊さないか心配だな? 見に行こう!」
大河が氾濫すれば城下町や農村は大惨事だ。
太郎達は、川に沿って堤のある上流へと進路を変更した。
一行が辿る着いた先には、日本の城とダムを合成したようなデザインの建物が建てられていた。
「まるで西洋のお城ですの!」
「川を抑える石垣が壮観だねえ」
「堤も気になるけれど、奉行所へ行こう」
太郎が仲間に声をかけて、提の近くにある奉行所へと赴く。
「たのもう、河川奉行殿にお目通りを願いたい!」
太郎が印籠を見張りの武士に見せれば、仲間達と共にすんなりと通される。
面会に応じてくれた奉行は、水色の上下を着た誠実そうな顔つきの中年男性であった。
「お初にお目にかかりまする、拙者は河川奉行の島本と申します」
「こちらこそ、急な面会ありがとうございます」
「若様は、ハニワ共を追われておるとか?」
「ええ、この堤は連中に狙われておるのではないでしょうか?」
奉行の島本氏と面会した太郎が直球で尋ねる。
「はい、度々連中の手の者に攻められております」
「では、我らに奴らの討伐をお任せ願いたい」
「五大分家のスーパーロボットが動いて下さるなら、願ってもありませぬ」
「奴らの根城になりそうな場所に心当たりは?」
「これ、地図をもてい!」
太郎が島本氏に尋ねると、四万十市が部下を呼び地図を持って来させる。
「部下の話ではこの奉行所から西にある山中で、奴らの空飛ぶ船が消えたとの事で」
「なるほど、ありがとうございます」
地図を広げて話してくれる島本氏に礼を言う太郎。
「我らでは堤を守るのが関の山、何卒お頼み申し上げます」
「いえ、それが民と国にとっては大事なのです我らにお任せ下さい♪」
島本氏から情報を得た太郎達は、奉行所を後にすると話し合う。
「取り敢えず、堤が襲われれる前に敵を叩きたいですの」
「うん、姿を消すと言う事は敵は幽世を使っているんだと思う」
「そうだね、渡された地図の印の当たりが入り口だと思う」
「じゃあ、空から攻めようか?」
「良いね、ヒスイマルにお任せあれ♪」
ハニワ教団も自分達のように、本拠地は異空間である幽世にあるのではと考えた一行。
楓のヒスイマルに全員で乗り込み、空から怪しい山へと向う。
「うん、魔術センサーに感あり! あそこの空間が敵の幽世の入り口だよ♪」
自分達の考えが当たりだったと、ヒスイマルに搭載された魔法センサーで証明された。
「ニチリンオー達は召喚しておこうか?」
「覚悟はできておりますの!」
「いやいや、まずはしっかり席に着いて私の腕前をご覧あれ♪」
「ちょっと待った! 姫、シートベルトはしてますか?」
「はい、しっかり巻いておりますの!」
楓も脳筋思考な所があり、体当たりで敵の幽世への侵入を決意した。
太郎達のシートベルトを確認すると、楓が機体を加速させる。
「うんうん、シートベルトは大事だね♪ それじゃあ皆、敵の幽世に突っ込むよ~っ♪」
「突撃ですの~ッ♪」
「ジェットコースターの類を思い出した~っ!」
地球で言う、戦闘機形態のヒスイマルが出した猛スピードに耐える太郎達。
コックピットの外では、巨大なキジ型ロボットが猛スピードで虚空へと突進し姿を消した。
虚空を突き抜けたヒスイマル、出た場所は黄色い空の世界。
空を飛ぶのはハニワ教団の船、地上には巨大ロボットのハニワ魔人が巡回する都市を擁する巨大な島。
当然ながら侵入者であるヒスイマルは、空を見張る敵の船からビームを撃たれる。
「ケンケーン♪ 当たらないよっと♪ お返しのキジブラスター♪」
ヒスイマルも口からビームを撃って反撃し、空中戦が始まる。
「楓姉さん、地上からも撃って来た!」
「大丈夫、お姉さんとヒスイマルにお任せ~っ♪」
「太郎様、私達も支度を!」
「おっし、俺と姫の射出を!」
「はいな♪」
楓がスイッチを押すと、機体の屋根が開き太郎と山吹姫がヒスイマルの外へと射出される。
太郎が山吹姫を空中でお姫様抱っこしながら叫ぶ。
「来てくれ、ニチリンオー!」
「コガネマル、お出でなさい!」
太郎緒と姫の叫びに応じて空が割れ、黒い石垣に緑の屋根の城と金色の狼型ロボが現れる。
城は太郎を牽引ビームで吸い込めば人型のニチリンオーへ変形。
狼ロボのコガネマルも、口を開けて山吹姫を飲み込むように収納する。
三対のロボットは、揃うや否や素早く空中で合体しトライニチリンオーへと変化した。
「よし、全員再集合だな」
「どうどう若様? 私の空戦の腕前は~♪」
「楓様は芸達者ですの♪」
「うん、流石忍者」
合体により再度集った三人、敵の航空戦力はトライニチリンオーが出たと見るや逃げていく。
「逃がしはしないぜ、台場キャノン!」
太郎がトライニチリンオーを操作すれば機体の腹部から火の玉が発射されて、空飛ぶ敵船を撃破する。
地上を守るハニワ魔人が弓で射て来るがこちらは山吹姫が動いた。
「オオカミハウリングで撃破ですの!」
山吹姫による機体の操作で、トライニチリンオーの胸の狼の頭が口を開けて衝撃波を放ち矢を破壊する。
激しい衝撃音を建てて着地したトライニチリンオー。
地上戦に移行すればハニワ魔人も弓から鉾に持ち替え、鬼の形相で四方八方から負い来る。
「何の、コダイオーブレードとダイグンバイの二刀流だ!」
機内でシートが変形し、山吹姫と楓が後ろに下がれば太郎が軍配と蕨手刀を手に持ち立ち上がる。
トライニチリンオーも、巨大軍配と蕨手刀を片手に持ち迫る攻撃を打ち払い受け流しつつ反撃しながら進む。
チャンバラの様な立ち回りで、敵兵を打ち倒してハニワ教団の本丸御殿を目指すトライニチリンオー。
巨大な高床式の神殿入り口に近づけば、神殿から恨めしい呪文が聞こえてきた。
「オンゴロゴロ、オンゴロロ! おのれ忌々しい、我らのヒノワ征服の野望を阻むか?」
問いかけと共に現れたのは巨大な巫女装束の女、だがその顔は牙を剥きだした灰色の肌の悪鬼であった。
「当たり前だ、貴様が何者だろうとヒノワの平和を乱す者はトライニチリンオーが許さん!」
ダイグンバイを送還し、コダイオーブレードを突き付けるトライニチリンオー。
「忌々しいその刀、ヒミコとコダイオーの跡継ぎか!」
巨大な巫女が怯みつつも恨めしそうに叫ぶ。
「そうだ、古代の王権を継いだ現代の王候補としてコダイオーブレードで成敗する!」
「ならば貴様を倒し、この女王ヤマコがヒノワを滅ぼしてくれる! オンゴロ~ッ!」
太郎の叫びに女王ヤマコは呪文を唱える。
するとヤマコは、背後に佇む茶色い神殿を鎧の如く纏った般若面の巨大武者と化した。
「オンゴロロ~! 怨みの雷をくらえ~っ!」
ヤマコの叫びと同時に空を暗雲が覆い、黒い雷が降り注ぐ。
「ぐわ~っ!」
「く~ん、これは痺れましたの!」
「結構来たね、これは?」
不可避の一撃に初の大ダメージを受け、その身を焦がすトライニチリンオー。
それはニチリンオーの神威の守りを越えて、機内の太郎達にもダメージを与えて来た。
「オンゴロ~ッ! 我が怨みはこの程度では終わらぬぞっ!」
「黙れ、悪の亡霊の恨み言なぞ知るかっ! ニチリンビーム!」
闇箍に怒りのニチリンビームを発射するトライニチリンオー。
「ぎゃ~っ! おのれ忌々しい太陽の光よっ!」
両手の爪を伸ばして襲いかかる寸前に、ビームを喰らい吹き飛ばされる女王ヤマコ。
身を焼かれ焦がされ、転倒するも立ち上がる。
「ニチリンオーの輝きは負けない! 全力の金環日食崩しだっ!」
「私達の力をニチリンオーに注ぎますの!」
「この一撃で決めちゃって、若様!」
機内で太郎達が全身から闘気を燃やしてニチリンオーに注ぎ込み、太郎が刀を振るう。
ニチリンオーがコダイオーブレードを振るい、光り輝く金環を描いてヤマコへと飛ばす。
ヤマコは避けようとするが、金環の輪が広がり逃さない!
「ぎゃあ~~っ! おのれ、おのれ~っ!」
金環が直撃し動きを封じられ,神威の炎で身を焼かれるヤマコに断罪の刃が振るわれた。
斬撃を繰り出して敵の体を切り抜けたトライニチリンオーの背後で、女王ヤマコが爆散する。
「やりましたけど、幽世が揺れて崩れだしましたの!」
「これにて一件、と言う前に脱出せねばっ!」
「勝ったけれど逃げろ~っ♪」
トライニチリンオーが、残る力で飛び立ち虚空をコダイオーブレードで切り裂いて脱出する。
かくして、太郎達はハニワ教団の野望を砕く事に成功したのであった。




