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天下成敗ニチリンオー 転生若様異世界ロボット英雄記  作者: ムネミツ
第三章 西国南下編
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第二十話:若様、城下町を救う

 「あれは、香松家(かまつけ)のロボ、鉄釜王(てつがまおう)かっ!」

 「奮闘されてますが、多勢に無勢ですわ!」

 「若様、下知を!」

 「よし皆、まずは全機で敵の数を減らすぞ!」


 太郎達が城下町に辿り着けば、香松の城下町は戦場となっていた。


 大きな釜に手足と頭を付けた、三十メートル程のスーパーロボットが城を守りながら数体のハニワ魔人と交戦している。


 大釜ロボは、領主の機体だと調べていた太郎は加勢すべく仲間達と機体を召喚する。


 「城下の皆様、ご容赦くださいまし! わお~んですの!」


 山吹姫の操るコガネマルがダッシュからのジャンプで、鉄釜王の背後を狙う敵を突き飛ばす。


 「さあ、私もヒスイマルでケンケンと機銃を撃って行くよ~っ!」


 楓のヒスイマルも、足の裏から出した機銃で空の上から攻撃して敵の目を自分へと引き付ける。


 「俺はニチリンビーム三段射ちだっ! ご城主殿、軍配太郎が助太刀いたすっ!」


 太郎がニチリンオーでビームを小出しに発射して、ハニワ魔人達を撃破して行く。


 「ご、五大分家の方か! かたじけない、ぬおおっ蒸気熱パンチッ!」


 鉄釜王も負けじと、肘から蒸気を発し赤熱化した拳でハニワ魔人の胴を貫き撃破する。


 巨大なハニワ魔人達が倒れるなか、機体を捨て小型ボートサイズの脱出艇で空を飛んで逃げる者達もいた。


 ヒスイマルが機銃で撃ち落とそうとするも、敵の脱出艇は虚空に穴を開けて消えて行った。


 「しまった、奴らは次元を越えられるのか!」

 「若様ごめん、撃墜できなかったよ!」

 「いや、楓姉さんも良い仕事してくれたよ♪」

 「楓様、大丈夫ですわ♪ ひとまずは、ご城下の後始末をいたしましょう!」

 「ああ、若様も姫もありがとう♪ 了解だよ♪」

 「皆様方、ご協力よろしくお願い仕る」


 ひとまず敵を退けた太郎達は、戦いで荒らされた城下町の片づけを始めたのであった。


 香松家の城に招かれた太郎達は、城主と対面する。


 「此度の加勢、誠に感謝いたす」


 武士の正装の上下姿をした、熱血漢タイプの青年男性が会釈する。


 「お言葉恐れ入ります」


 太郎達は正座から平伏して礼をする。


 「ああ、すまないな? 面を上げていただこう武家の礼儀は省略だ、家格もそちらが上であるし」


 城主である香松上成(かまつ・かずなり)氏の言葉に頭を上げる太郎達。


 礼は大事とは武家の倣いであるが、格式ばかりでは手間がかかり過ぎる。


 「では失礼して、この地にはびこるハニワ教団とは何者でしょうか?」

 「すまぬが奴らに関しては、こちらは古代の呪術で悪事を為す邪教と言う点までしか判明しておらん」

 「では、我らの方でも調査を入れましょう可能ならば討伐で」


 太郎が上成に提案する。


 「かたじけない、こちらは奴らの所為で増えた領内の仕事にかからねばならん故にお任せいたす」

 「わかりました、それではハニワ教団の件はこちらで」

 「申し訳ないが、国を荒らされて上に納める年貢も危うい状況では神君家のお慈悲にすがるしかない」

 「承りました、伯父上にもこちらから伝えておきますので民を泣かせぬように務めをお願いいたします」


 太郎と上成でやり取りを行い。領内での行動の自由や捜査権などを得た軍配党は城を後にした。


 「大変な事態になりましたわね、太郎様?」

 「父上には事情を伝えておいたよ、援助の準備はするから太郎は頑張れってさ」

 「楓姉さんはありがとうございます、こうなりゃ乗り掛かった船だ!」


 太郎はハニワ教団の退治に、闘志を燃やすのであった。


 「では、どう手掛かりを探しましょうか?」

 「そうだな、手分けして探そうか?」

 「人に聞くのと文献の両方で調査だね」


 無事だった区画にある茶店の中で席に着き、相談する三人。


 「うん、では文献は楓姉さんに城の書庫でお願いするよ」

 「では、私と太郎様は聞き込みですわね」

 「了解、じゃあまずは夕刻まで別れて調査だね♪」


 作業の分担を決めた三人は、茶と団子で腹ごなしを済ませる。


 支払いをして茶店を出ると、太郎達は街へ楓は城へと散開した。


 楓の方は色で許可を貰い書庫に入ると、歴史や神話など関連がありそうな資料を探す。


 太郎と山吹姫は、敵が暴れていた区画に戻り聞き込みをして敵の目論見を探る。


 「化け物、ロボットですか? 壊された場所にあったのは老舗のうどん屋さんですね」


 付近にいた赤い着物の中年の主婦らしい女性が太郎達の質問に答える。


 「ですか、他に言い伝えなどはありませんでしたか? 小さい社があったとか?」

 「ああ! そう言えば、うどん屋さんで小さな神社をお祀りしてましたね!」


 太郎の言葉に思い出したように主婦が答える。


 「ありがとうございますの♪」


 去っていく主婦に礼を言う山吹姫。


 「壊された所には祠程度の神社か、結界の破壊かな?」

 「恐らくそうですの、神々の守りを壊して街を滅ぼそうとしているのですわ!」

 「だとすれば、次はもっと強い戦力で攻めて来るな」

 「全力で迎え撃ちますの、その後新たに街の各所に社を建てて神々を祀り守りとしますの」

 「ご城主に進言しておこう、神様達にもお越しいただけるようにお願いしないとな」

 「うどん屋さんも必要ですの、うどんは神饌(しんせん)として供されていた由緒ある神の食事ですのよ」

 「つまり、うどん屋さんは結界を張る神様へのエネルギー供給係でもあったのか!」

 「ですの、神も力を発揮する為には食事は必要ですわ」

 「色々繋がって来たが、ひとまずは防衛と再建か」

 「まずは楓さんとも合流して、ご城下の防衛ですの!」

 「ああ、城へ行こう!」


 太郎と山吹姫は城へと戻った。


 「ふむふむ、古の世に佐知の国に異界の獣を崇める邪教ありか」


 一方、楓は城の書庫で見つけたハニワ教団に関する古文書を読み解いていた。


 どうやらハニワ教団は元は隣国の佐知藩が発祥らしい。


 「まじないを用いて民に害をなすハニワ教団、神君これをロボにて平定するも度々甦り?」


 楓は仲間達に話す為に音読しながら、頭の中で情報を整理する。


 ハニワ教団は異界獣を崇める邪教、頭目に異界人もしくはその血を引く者がいる。


 奴らは異界より、ロボットなどの兵力を呼び出して暴れている。

 

 「これは、次の旅は佐知藩に行く必要がありそうかな?」


 文献で得られる情報は得たので、太郎達と情報共有して対策を練るべく楓も片づけをして書庫を出た。


 城にて合流した太郎達は、城主とも面会して情報を共有する。


 「なるほど、神を祀るうどん屋と結界の関係は分かった民にも流布し再建計画を立てよう」

 「神々とひとまずの防衛に関してはこちらで、その後はご城主殿にお願いいたします」

 「ああ、当家も神君家よりこの地を代々任されて来た身ゆえに責は果たそう」


 太郎と上成が手を取り合ったと同時に、太郎の腰の刀がコダイオーブレードに変化する。


 「これは異界獣出現の予兆? ご城主殿、それでは我らは戦いに赴きます!」

 「ではこちらも整備が終わり次第、鉄釜王で出撃いたします!」


 まずは太郎達が城を出て、空が暗雲に覆われた城下町に機体を召喚して乗り込む。


 暗雲から黒い穴が開く、まずその穴から出て来たのは多数の空を飛ぶ古代の戦船。


 弓矢や鉾で武装したハニワ教団の兵士達が、生身で乗っている。


 「空の敵ならお任せ、容赦しないよ♪」


 楓の操る巨大な緑のキジ型ロボット、ヒスイマルが空を飛ぶ。


 敵の船からの弓矢での射撃や体当たりを、風を起こして凌ぎ機銃やミサイルなどで撃破して行く。


 「よし、敵船団撃破だよ♪」


 楓が太郎や山吹姫に通信を入れる。


 「楓様、こちらのセンサーに巨大な影が! 合体をお願いいたしますの!」


 山吹姫が金色の狼型ロボのコガネマルの中で通信機に向かい叫び、走り出す。


 「了解だよ、合体シークエンス開始♪」


 楓が山吹姫の言葉に応じて機体を操り移動する。


 「良し、俺も行くぜトライニチリンオーに合体だ!」


 太郎が乗る、赤い兜に金の鯱が付いた緑屋根の肩鎧が付いた白いボディの城モチーフの人型巨大ロボット。


 合体のコアであるニチリンオーも駆け出して先行するコガネマルに並走し、空のヒスイマルと三機が合体する。


 胸に金狼の頭が付き背中に緑の雉を背負った形で翼を得たスーパーロボット、その名もトライニチリンオーが完成した。


 「天下成敗、トライニチリンオー見参っ!」


 合体して空に舞い上がった、トライニチリンオーのコックピットで太郎が叫ぶ。


 トライニチリンオーの合体に合わせて、空の穴からゆっくりと降りて来たのはこちらも人型の敵。


 灰色の虎の怪物に乗り、赤い鬼の形相に黒の鎧兜を着た古代の武将型ロボットのハニワ魔人だ。


 「若様、どうやらあれが大将みたいだね?」

 「一騎打ちだと言うのに、名乗り返さないのは無礼ですの!」

 「二人とも、敵が動いたぞっ!」


 問答は無用とばかりに、敵が虚空から巨大な金棒を取り出して突撃して来る。


 「ならば喰らえ、ニチリンビーム!」


 トライニチリンオーの頭部にある、金環の兜飾りから金色の光線が放たれる!


 敵は両腕をクロスして、光線を受けて耐えた!


 「ま、まさか耐えられましたの!」


 山吹姫が慌てた。


 「これは、空の暗雲がニチリンビームを弱めたんだ!」


 楓がセンサー類を見て、叫ぶ。


 「敵もやるな、だからこそ燃えるぜっ! なら白兵戦だ!」


 ニチリンオーが腰に帯刀していた金の蕨手刀、コダイオーブレードを抜いて挑む。


 敵も金棒を振るい打ち合いとなるが、敵が乗っている虎も爪を振るい攻撃して来た。


 「くっ! 負けませんのよ! オオカミハウリングですの!」


 山吹姫が操作を行えば、トライニチリンオーの胸のコガネマルの頭が口を開けて衝撃波を発射。


 ビームは軽減できても、衝撃波は防げぬようで悶え苦しむ虎の怪物とハニワ魔人。


 「太郎殿、鉄釜王が加勢に参りましたぞっ!」


 香松城の方から、背中のバーニアをふかして飛んで来たのは城主の操る鉄釜王だ。


 「ありがとうございます、虎の方をお願いいたします!」

 「承知いたした、虎退治はお任せあれ♪」


 トライニチリンオーが正面で敵を引き付ける間に、増援に来てくれた鉄釜王が横から虎の怪物に体当たりをして敵を分断する。


 「化け物め、鉄釜王の蒸気の力受けて見よ!」


 鉄釜王が虎の怪物を引き離して、地上戦に移行して決闘を行う。


 トライニチリンオーも、乗騎を失ったハニワ魔人を掴み、お返しだと、野山へと叩きつける。


 「さあ、暗雲を吹き飛ばすぜ♪」


 トライニチリンオーが巨大な軍配を召喚して振り回せば、空を覆う暗雲を吹き飛ばした。


 「晴れ間が戻りましたわ♪」

 「日光を浴びて、トライニチリンオーも元気満タンだよ♪」

 「ああ、決めて見せるぜ♪ 金環日食崩しっ!」


 トライニチリンオーが、軍配を虚空に戻して再びコダイオーブレードを手に持ちぐるりと円を描く。


 ハニワ魔人が怒り、再び空へと飛び上がり襲い掛かるもトライニチリンオーから放たれた黄金の光の輪をぶつけられる。


 黄金の光の輪に動きを止められ、体を焼かれるハニワ魔人にトライニチリンオーの斬撃が振るわれた。


 「これにて成敗っ!」


 ハニワ魔人を切り、地上へと着地したトライニチリンオーの真上で大爆発が起こり敵は滅んだ。


 鉄釜王と虎の怪物の戦いも、襲い来る怪物を鉄釜王が取り押さえて空高く持ち上がる。


 「怪物め、釜茹での刑に処す! 鉄釜ハードボルド!」


 鉄釜王の全身が蒸気を噴き出して、真っ赤に熱せられれば持ち上がられた虎の怪物にも熱が伝わり燃え上がる。


 異界獣である虎の怪物も、こうして討伐された。


 戦いを終えて、握手を交わすトライニチリンオーと鉄釜王の二大ロボット。


 香松の城下町を守る戦いは、ニチリンオー達の勝利で終わった。

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