第80話
この作品では珍しいリアル回
あと今日は2本立てです
文化祭。高校生や大学生……場所によっては中学生。学生の青春の場としてはメジャーな行事……ただし私や渚のようなインキャにはちょっと辛い場所。
「疲れる……コスプレしてたら視線集まるから他のクラス行けないし……」
「zzz……」
クラスの端っこに作られた休憩スペース。私は例の改造シスター服を着て溜め息を吐いた。渚は巫女服姿で持参してきた寝袋で寝てる……文化祭前だからといってゲームを控える子じゃないからね。
去年、体育祭の前日に朝3時までゲームしてた時もあったし……寝不足+暑さで開会式の途中で保健室行きになってたけど。あの時は他クラス、他学年からの注目を集めてたよ……なんで始まってもないのに担架で運ばれてるんだあの人?って感じで。
「心ちゃん。交代お願い」
「了解」
私は立ち上がり、カツラがズレてないか鏡でチェックしてから休憩スペースを出た。うわー、さっき出てた時よりもお客が増えてる……今日は学生だけなんだけど、今日でこれとか明日ヤバそう。
ちなみにここのルールとしてはまず受付で300円払うと100チップ貰える。次に好きな賭け事……ブラックジャックかテキサスポーカーを選択して3ゲームしてもらう。人数足りない時はクラスメイトが数合わせでゲームする。最後にルーレットで大勝負……そして手持ちのチップによって景品を渡す。ちなみにゲームは自分とお客の2人でのタイマン。人数増えると大変だからね……文化祭の出し物だから楽しなきゃやっていけない。
賭けるときは10単位で倍率はガチ過ぎると計算が大変なのでカードゲームは一律3倍。ルーレットだと赤、黒は5倍。数字指定は10倍、大穴の0は20倍にしてる。あと全賭けして負けても50チップは返却。最後のルーレットで大勝負できるようにね。
「景品の在庫どんな感じ?」
「予測してた通りだから問題無いよー。思ったより男子が全賭けしてボロ負けしてるかな?全賭けはロマンなんだとか」
「将来ギャンブル中毒になってそう……」
景品はチップが0〜100でお菓子1個。101〜300でお菓子2個。301〜500でお菓子2個に缶ジュース1個……って感じ。お菓子とジュース以外にも色々用意してある。景品用に家にある読まない本や漫画を持ち寄ってきてもいる。その辺はチップ数1000からになるね。
(さーて、仕事しよう)
私はゲーム台に座ってポーカーの進行をしていく。練習がてら休み時間とかで遊んでたからカードを配るとかも慣れたね……
(この手札強いな……これなら大丈夫か)
相手男子だし手加減は無しで良いでしょ……こいつなんか私の胸ガン見してるし。視線でバレてんだよ。
(サラシで潰せば良かったかな……)
でも苦しくなるからダメか。とりあえずこいつからは容赦無く搾ろう……私はスケベ野郎には厳しいのだ。その全賭けしたチップを根刮ぎ奪ってやろう。
「はい、私の勝ちです」
「ぎゃぁぁぁ!!?俺のチップがぁぁ!!」
憐れ、スケベ野郎は全賭けして爆発四散したのだった。ザマミロ……
◇
文化祭は2日目を通り越して3日目になった。一般のお客さんも入り学校内は混雑……うちのカジノも大盛況でてんてこ舞い状態。
「今日何回カードシャッフルしたんだろう……手首痛い……」
「…………」
渚から寝息すら聞こえない……働き過ぎて気絶するように寝てる。私は軽く痛みだした手首をグルグルと回しながら脱力する。あー、しばらく休める……うちは後夜祭とか無いから今日を乗り切れば終われる。
「あっ、居た。心ちゃん、ちょっといい〜?」
「ん?何ー?」
私がぐてー……としていると桜柄の着物を着た桜に呼ばれた。焦ってる様子は無いから何かトラブルでも起きたわけではなさそう。
「私今休憩に入ったばっかりなんだけど……」
「大丈夫。仕事じゃないから……ちょっとあってほしい人が居て」
人?誰?疲れ過ぎて頭の回転が鈍ってる私の手を引いて桜は何処かへ連れていく。連れて行かれた先には私たちより年下……中学生くらいの女の子が居た。
(ん?なんかこの子見たことがあるような……)
知らない子の筈なのに何処かで見た気がする……私がムムム?と考えていると桜が女の子に話しかけた。
「連れてきたよ〜。服装も相まって分かるでしょ」
「そうですね……金髪ですけどハーフでしたっけ?あっちでそんな話聞いたことないですけど」
「あっ、これはカツラだから〜。身バレしないように変装中〜」
「……えっ、まさか」
女の子の声を聞いて私は誰かようやく分かった。分かれば見覚えがあったことも理解できる……だって向こうの容姿とあまり変化無いからね。
「もしかしてミリアちゃん?」
「はい、そうです。こっちでは初めましてココロさん」
桜が会わせたのはミリアちゃんだった。本名は西園寺美理空って言うらしくて現在中学3年生。4つ隣の市にある私立中学校に通ってるらしい……学校の名前を聞いた時にびっくりしたよね。なんせ有名な中高一貫のお嬢様学校だったんだから。
「桜さんから文化祭の話を聞きまして、予定も空いてたので遊びに来ました」
「そうなんだ。来てくれてありがとうね……ん?」
ちょっと待て、それって桜がゲーム内で誘ったってことだよね?それって色々とマズいんじゃ?ネットマナー的に……私は美理空ちゃんにちょっと待っててと言って、桜を物陰に引きずっていった。
「ねぇ、桜?何私の許可も取らずにリアルの私のこと教えてるのかな?てか文化祭のことをゲーム内の何処で話した?」
「ぴっ!?」
私の追求に桜はヒヨコみたいな悲鳴を出す。その後、圧をかけながら聞き出すと文化祭のことは飲食店の貸切部屋(防音仕様)で話しているから他のプレイヤーには聞かれていない。私のことはどうせ会うから別にいっかって感じで教えたらしい。私へのサプライズも兼ねて……
(それ美理空ちゃんが口の軽い子だったらヤバかったんですけど?)
預かり知らぬところで私のリアル情報が拡散してたかもしれなかった。私はそのことも踏まえて桜に注意した。桜も今そのリスクに気づいたのか今後はちゃんと私に許可を取ってから教えると言質を取った。これで大丈夫なはず……
「あの……何かありました?」
「いや大丈夫だよ。このポンコツまな板がやらかしただけだから」
「うん……」
普段はキレる私のまな板発言もやらかした自覚があるから何も言ってくることはなかった。そのあと美理空ちゃんから文化祭を一緒に回りませんか?と聞かれた。丁度、休憩時間だったので一緒に回ることにした。桜?桜は勤務時間だったけど休んでたメンバーと交代して一緒に来た。
忙し過ぎて今日は回れないかな?って思ってたけど、色々見て回れて楽しかった……今までの文化祭で1番になるくらいね。
ただ、1つ言いたいことが……美理空ちゃん。私たちに奢ろうとしないでくれ。年下から奢られるのは色々マズい。あとキャッシュレス決済は出来ないから!
「(もしかして……美理空ちゃんって意外と世間知らず?)」
美理空ちゃんに軽く振り回されるとは思わなかった……ゲームでは常識人枠だったのに。
「「お嬢様……面白いなぁ……」」
私と桜はそんな感想が口から溢れた。個性として面白いしね。とりあえず今は文化祭を楽しもう……美理空ちゃん。現金を使うのは良いとして万札はやめてあげて。文化祭の屋台にはオーバーキルだから。
文化祭もう終わりです
長く書くようなもんじゃないしね……
そもそも書けん




