第60話
今回短めです
多分、次のはめっちゃ長くなる……
イスティリア。淘汰の大森林に飲み込まれるように作られた町で、町の中には太い木がいくつも生えている。建物の多くは木をくり抜いて作られたものや、ツリーハウスと木を利用したものが多い。木々間に吊り橋なんかもあって横に縦に広がっていて探索のしがいがあるね。
「ファンタジーらしい町だけど……火事になったら怖いな」
とりあえずテイマーギルドに行ってみよう。まずは情報収集……ついでにクイラさんの情報もあるかも。絶対爆発させてるから……
(ここのテイマーギルドは……木を丸々1本使ってるんだね)
ビルみたいな感じ……これくり抜いて腐らないのかね?まぁ、ゲームだしそういうものか。私はそんなことを思いつつ中に入った。
中は薄暗く光源は光を放つ花や苔が照らしている。くり抜いて作った窓からの光もあるけれど、他の光源が蝋燭とかじゃないのは火事対策って気がする。
「アセロラ。炎出さないようにね」
「メラ」
私は念の為にアセロラに注意をした。恐らくだけどこの町……火の使用に何かしらの制限があるはず。その辺についても調べないと。
「すみません。この町に初めて来たんですけど……何かルールや注意することってありますか?」
私はテイマーギルドの受付の人にそう聞いてみた。結果として割と重要なことを聞くことができた……簡単にまとめると。
①町中は無許可の火気厳禁。火事になった場合は大きな罰則が発生する。
②植物に関するスキルの無許可による使用の厳禁。枯らすや寄生などのスキルの使用は大きな罰則が発生する。
③木登り禁止。落下して怪我しても自己責任
結構アウトなことが多いね。特殊な町だから仕方ないんだろうけどね……とりあえずメロンも気をつけなきゃだね。まぁ、この子は寝かせておけば問題無いか。
「あっ、それと人探しで……調薬士のクイラって人の情報ありません?この町に居るって聞いたんですけど……」
「調薬士のクイラ……あー、あの人ですか」
クイラさんのことを聞いた職員はなんとも言えない表情を浮かべた。えっ、何?私が不思議に思っていると職員の人がコソコソと教えてくれた。それを聞いて私が思ったことは……
(何してんのあの人?)
という呆れを含んだものだった。クイラさん……あの人は今このイスティリアの牢屋に入れられていた。
◇
「おっ、ココロじゃん。久しぶりー」
「『久しぶりー』じゃないですよ。牢屋に居ること自覚してます?」
イスティリアの外れにある刑務所。その中の牢屋の1つで私はクイラさんと久しぶりの再開を果たした。クイラさんはちょっと薄汚れてはいるけど、ヒラヒラと手を振って気楽そうにしていた。この人は相変わらずだね……それがこの事態を引き起こしたとも言えるけど。
「聞きましたよ。こっちでファストロンのようにドカンドカン爆発させて捕まったって……本当に何してるんですか?」
「あー、それはしょうがなかったんだよー……ココロなら分かるでしょ?私の実験は爆発とセットって」
「嫌なセットですね……」
クイラさんが捕まっている理由。それは実験の爆発のやり過ぎ……何十回も爆発させた結果、反省させるために形だけ収監されてる。じゃなかったら町中で爆発させるヤバい人に面会なんてできない。まぁ、牢屋内でも爆発されるとあれだから実験はできないみたいだけど。
「実験できなくてちょっと手が震えてるよね……あと3日は入ってなきゃいけないとか辛い」
「これに懲りたら自分の実験室以外で爆発するような実験をしないことですね…………ところでクイラさんは何でイスティリアに居るんですか?」
「あー、それはね……」
クイラさんの話によるとここに来る要因になったのは湯治で訪れていた町である人とあったから。その人はこの町の管理をしている貴族の人で……その人に頼まれてこの町に来たんだとか。
「貴族の人がバックに居てなんで牢屋入ってるんですか?」
「そりゃ爆発のせいでしょ?2週間ほど毎日10回以上爆発させてたらねー」
「自覚あるなら直してください」
貴族でも庇えないレベルでやらかしたってことだからね……しっかりと反省してほしい。
「頼まれたということは調薬ですよね。何を作ってたんです?クイラさんに頼むってことは複雑な薬なんですか?」
「いや?そんなに難しくは無いよ……私の方法だと面倒だけどね。まぁ、私の作り方の方が成功さえすればパートナーとかに頼らない分、誰でも作れるからね」
笑いながらクイラさんは薬について教えてくれた。その薬とは石化回復薬……石化という状態異常を回復するための薬だった。
「理由は言えないんだけど……ココロならこれだけで察することができるでしょ?」
「まぁ、大体は」
大方、その貴族の家族が石化で苦しんでるって感じだろうね……このパターンは割と王道だし。てか石化って初めて聞く状態異常だからちょっと気になる。
「石化関連ならこの町にある色彩の迷宮に行けば手に入るよ……結構危険だから気をつけてね」
「わかりました」
色彩の迷宮……名前的にダンジョンかな?情報収集したら行ってみよう。明日以降にね。
「ところでさ。ココロ随分と破廉恥な服装になってるけどどうした?気でもおかしくなった?」
「おかしくなってないですから……その言い方はやめてください」
その後、私はクイラさんと世間話をして別れた。とりあえず元気そうで良かった……境遇に関しては自業自得なので、私に刑期を減らさせるように交渉しろと説得しないでください。




