第159話
本日、スライムマスターちゃんのVRMMO発売日です
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「《聖なるご加護》を使います。戦闘は任せます……それでは光の神官の皆様、始めますよ」
「「「「はい」」」」
ヘルゲート・ガーディアン戦。まずはマシロさん率いる光属性の神官の人たちが私たちにバフをかける。クラゲ神の時の光のバフがパートナーたちを包み込んだ。
「…………!」
ヘルゲート・ガーディアンはその光が自分にとって不利なものだと判断したのか、蹄で地面を叩き割り怒涛の勢いでこちらに向かってくる。それに対してゴーレムたちが壁として立ち塞がるけれど……
「…………!」
「「「ゴォ……!?」」」
ヘルゲート・ガーディアンが片手で振った槍でゴーレムが3体両断され、その周りに居たゴーレムたちが大ダメージを受けて倒れる。倒れたゴーレムたちには黒カビのようにドス黒いアザが刻まれている。
ヘルゲート・ガーディアンは更にゴーレムたちへと追撃を放とうとしたが、四方八方から飛んでくる攻撃を回避するために距離を取った。その間に倒されなかったゴーレムたちを回復させようとする。
「前線の鉱石製の身体を一撃か……どんな攻撃力してやがるんだ」
「しかもこの呪い……聖水全然効かない。手持ちで足りるか?」
「とにかく急いで治せ!他の奴らが時間を稼いでいる間に!」
たった一撃でゴーレム部隊はほぼ半壊。私も呪いの治療をしたけど、ライムの《慈悲の祝福》でも治すのに時間がかかる……ここまで濃い呪いは初めて見た。
(仮に治し切ったとして……ゴーレムたちじゃあ盾になるぐらいしか)
防御力はあるけど動きの遅いゴーレム。治したところでヘルゲート・ガーディアン相手じゃあんまり意味が無い……何かあった時のために治すけどね。それが役目だし。
でも《聖なるご加護》で呪いに耐性を得ていたのを考えてこの濃度……対策無しで食らったら即死してるレベルの呪いだね。
「…………!」
「ガァァァァ!」
「クェェェェ!」
「シャァァァ!」
私たちがゴーレムを治療している間、ヘルゲート・ガーディアンに向けて多くのパートナーたちが向かっていった。しかし殆どのパートナーがヘルゲート・ガーディアンにダメージを与える前に薙ぎ払われ、貫かれ、蹄で踏み潰された。運良く生き残っても呪いに蝕まれ動けない。
突撃しているのは攻略組のパートナーたちなのに……ヘルゲート・ガーディアンはそれを造作も無いように槍を振り回して蹴散らしていく。
「…………!」
「グォォォォ!」
そんなヘルゲート・ガーディアンに1匹のドラゴンが空から襲いかかった。ドラゴンに向けて迎撃の槍が振るわれる。しかし流石はドラゴン、硬い鱗が割れるけれどそのままヘルゲート・ガーディアンを槍ごと押し込んだ。
ギギギギギ!!
押し込まれる槍とヘルゲート・ガーディアンから耳を劈くような音が鳴り響く……初めての有効打とも言える攻撃。しかし誰も喜ぶことはできなかった……だってあいつ片手で耐えてる。5mは軽く超えてるドラゴンが真上から押し込んでいるのに。
「…………!」
「グォ!?」
押し込まれていたヘルゲート・ガーディアンは空いている方の腕をドラゴンに伸ばし、掴んで地面へと引き摺り下ろした。ドラゴンは地面へと減り込むように叩きつけられ、更には槍を頭、胸へと間髪入れずに二度も突き込まれる。2回の致命傷クラスの攻撃にドラゴンは動きを完全に止めた。
「何こいつ……絶対クラゲ神より強いでしょ」
背中に冷や汗が垂れる感覚がした。ゴーレムを一振りで簡単に砕き、ドラゴンですら力負けする……なんで今戦わせた?運営さん?
「…………!」
ドラゴンを仕留めたヘルゲート・ガーディアンは再びこちらへと突撃する。精霊系を中心とした遠距離攻撃持ちのパートナーたちが迎撃するけれど、槍で振り払われヘルゲート・ガーディアンは目前へと迫る。そして無慈悲な攻撃が再び振るわれそうになった時、突如ヘルゲート・ガーディアンはバランスを崩した。
「…………!?」
ヘルゲート・ガーディアンは横に倒れそうになるのを槍を地面に突き刺して耐える。ヘルゲート・ガーディアンの足には白い花の咲いた蔓草が幾重にも巻きついている……あれは。
「せ、セーフ……なんとか間に合いました」
「ここ寒過ぎて成長時間かかったねー。やっぱり寒さは植物の敵」
空気が軋むような雰囲気の場にそぐわない声がする。それは植物の神殿のリーダーたちの声……私たちスライムの神殿の反対側の支援担当の神殿から。そういえばヘルゲート・ガーディアンの少し前辺りから姿を見てなかったね。
なお、植物系の神殿のリーダーは2人。確か双子の姉妹のプレイヤーだったかな?植物系の神官は生産一筋の人が多い中、珍しい戦闘特化の双子ということでそこそこ知名度があるらしい。私は掲示板あんまり見ないから知らなかったけど。
「い、今動きを止めている草はうちの神殿特製の拘束用の植物です。硬くて呪いにも強いのでしばらくは大丈夫です……一応、実験では大型の亜竜も倒すまで完全拘束できました」
「ただまぁ、硬いとっても限度はあるしー。寒いからまた成長させるのも大変だからねー。貴重だから数もそんなに無いし……切られたら多分もう拘束出来ないよー?」
双子の説明の合間にもヘルゲート・ガーディアンが槍で蔓草を攻撃した。一撃で切断はされなかったが傷は入っている……一撃でも耐えてるの凄いね。でも双子の片割れの言うようにあんまり持たなそう。プレイヤーたちは即座に攻撃を放つ。
「…………!」
ヘルゲート・ガーディアンは向かってくるパートナーたちを見ると蔓草を切るのをやめ、全身から呪いのモヤを吹き出しながら迎撃し始める。あのモヤの使い方はクラゲ王に似てるね……となると対処法は。
「皆、《慈悲の祝福》を薄めず散布して。無くなったらまた渡すから」
「「「「了解です」」」」
私は後輩たちに頼んで《慈悲の祝福》を散布する。薄めずに風に乗って散布された《慈悲の祝福》は呪いのモヤに触れると互いに打ち消し合うように消えていった。
「…………」
「呪い使えなくて残念だったね。でもそれでもそっちが強いんだからさ……」
蔓草拘束による機動力の低下。浄化による呪い阻害……これだけやって勝機が見えないんだから笑えない。今も動けず呪いもまともに発動できないのに槍1本でパートナーたちと戦っている。
「…………!」
呪いを纏っていないが一振りで命を刈り取る槍。蔓草や浄化以外にも鱗系や虫系が毒や糸でデバフを与えてるけど、それでも止めきれない。
(デバフだと死霊系が1番強いんだけど……今回相性悪いからね)
デバフするなら最強の死霊系。手段が呪いなせいでヘルゲート・ガーディアンに対して使えないんだよね……吸収されて強化とかされそうだからね。
なので死霊系の神殿はデバフじゃなくて攻撃として参加。呪いが効かないのはこっちも同じ、相手の火力高過ぎて耐性関係無い感じになってはいるけれど……
(まぁ、向こうの弱点?も分かってはきたしね……現時点ではだけど)
ヘルゲート・ガーディアン。あいつ遠距離攻撃や広範囲攻撃を持ってなさそうなんだよね。今のところ見せてきたのは雑魚敵召喚に呪い付与、あとは槍による攻撃だけ。
遠距離攻撃や広範囲攻撃持ちなら使ってくる場面でも使ってこなかったし、この考えは間違って無いはず。なお形態変化は考慮しないものとする。それ考慮したら仮説全部意味無くなる。
(ま、そういう訳だから基本的に遠距離攻撃で攻めてる訳だけど……効きが悪い)
多分、光属性以外の属性耐性ガチガチ。マシロさんたちのバフで多少光属性が乗ってる程度じゃ軽度のダメージしか入ってない。物理攻撃なら光属性マシマシでダメージも入るだろうけど、近づく=槍の攻撃範囲になる。
「近づかなければやられない……近づかないとまともなダメージが入らない」
拘束から外れたら自由に動き回るあいつ相手にそれをやらなくちゃいけない。仕事増えるなぁ……さっさと他のレイドボス行ってる人たちが合流しに来てくれないかな?攻略勢求む。
パートナーの治療、MPの回復をやりながらそう思っていた時だった。ヘルゲート・ガーディアンの様子が変わった。
「…………!」
ヘルゲート・ガーディアンから黒いオーラが噴出する。周囲の地面が黒く変色……更にはドロドロに溶け始める。ヘルゲート・ガーディアンはそのまま自分の槍を両腕で掴むとバキッ!と半分にへし折った。
折れた槍をそれぞれの腕で持つと地面のドロドロが纏わりついていき2本の槍に変化する。長さ自体は短くなったが……それでも1m以上の長さがあること。そして攻撃範囲は減ったけど攻撃回数自体が増えたことがかなりヤバい。ドロドロのせいか拘束していた蔓草も消えてしまったしね。
「第2ラウンド……こっち不利なの変わらないね」
これはまた地獄絵図になりそう……私は2本の槍を構えるヘルゲート・ガーディアンを見つめた。




