第158話
「「「カタカタ……!」」」
「「「ヴォォォォ……!」」」
「「「キヒヒヒヒ!」」」
黒いモヤを纏ったアンデッドの軍勢が私たちを飲み込もうとする。それに対して物質系の神殿の神官たちが前に出てパートナー……様々な材質のゴーレムたちが立ち並んだ。
「行くぞー!1匹も後ろに行かせるなぁ!!防御最強の名を見せるぞー!!!」
「「「「ゴォォォ!」」」」
ゴーレムたちは大きな身体で壁になりアンデッドたちを受け止める。アンデッドの波がぶつかりゴーレムたちが後ろに下がりそうになるけれど、その後ろに更にゴーレムが組み付き壁になった。
「「「「キヒヒヒヒ!」」」」
しかし防げるのは実体のあるゾンビやスケルトン。幽体かつ飛べるスペクターたちはゴーレムたちを無視して進もうとし……炎や雷、風の刃によって迎撃された。
「スペクターたちは精霊の神殿が対処するよ!♪〜!」
精霊の神殿のキラリさんの声と歌が響き渡ると更に無数の攻撃がスペクターの群れへ放たれていく。それをサポートするように鳥系のパートナーがスペクターたちを撹乱していく。
ゾンビやスケルトンの方も動きがあり、ゴーレムたちの隙間を抜けるように小型の獣系や鱗系のパートナーたちがアンデッドたちに攻撃をしかけていき、武器を持った鬼系のパートナーたちが連携して仕留めていった。
「「「「カタカタ……!」」」」
「「「「ヴォォォォ……!」」」」
「「「「キヒヒヒヒ!!!」」」」
しかしアンデッドたちの数は目に見えて減っては居ない……更には身に纏う呪いにより接近戦をしているパートナーが蝕まれていった。そろそろ出番だね。
「ライム。《慈悲の祝福》」
「メキュ!」
私はライムに頼んで浄化液を出してもらう。これをそのまま振りかければ大抵の呪いは解除できる……でもそれだと非効率。だから今回はスライムの神殿の力を合わせる。
「じゃあ、打ち合わせ通りにお願いね」
「「「「「はい!」」」」」
後輩たちに私は浄化液を小さな瓶に入れて渡した。後輩たちはそれを聖水で希釈し、パートナーのスライムを使い散布し始める。
浄化効果によりアンデッドたちの黒いモヤが薄れ、呪いに侵食されてきたパートナーたちの動きが良くなっていく。
(これがうちの神殿の作戦……上手くいって良かった)
うちはあまりにも人数少ない上に神官になったばかりのプレイヤーが多い。だからスライムの神殿は私を主軸とした作戦が多くなった。幸いなことに後輩の子たちのスライムは水属性と風属性、光属性が多いからね。希釈用の液体や散布の方法は準備できてる。
「呪いの浄化は後輩に任せて……こっちはHPの回復やっていこうか」
「メキュ!」
私はパートナーを連れて前線へ。攻撃が飛んでくる可能性がある前線での回復は私の担当……こっちの前線が崩壊したら私らも死ぬから意地でも治していく。
「ゴーレムはちょっとどうしようも無いけどね……」
物質系は薬効かないからね。身体に合う素材があればそれでHP回復できるから早々死ぬことは無いはずだけど……物質系の人って素材集め大変そうだよね。
そんなことを思いながら私は傷ついたパートナーたちを治療していった。呪いが残ってる子は手持ちの聖水で治療しとく。前線だから呪いのモヤが凄く漂っているけれど、ルベリーが空気清浄機よろしく吸収していっている。
「キヒヒヒヒ!」
「カタカタ……!」
「ビリリ!」
「メララ!」
治療中の私とライムを狙ってスペクターとスケルトンが近づいてきたけれど、レモンとアセロラによって処理される。やっぱり数が多くてゴーレムたちを抜けてくるやつが居るね。
(レモンの代わりにチェリモを連れてこようか悩んでいたけれど……護衛役多めで良かった)
レモンとアセロラはどっちも範囲攻撃持ちだから前線崩壊しかけたら手伝えるしね。私は撃ち漏らしに気をつけながら治療を続けていき、後輩たちに慈悲の祝福を渡していく。
そうしてサポートをし続けてしばらく……アンデッドの軍勢は減る気配を見せず、呪いと傷でこちらが消耗していくだけだった。
「「「「カタカタ……!」」」」
「「「「ヴォォォォ……!」」」」
「「「「キヒヒヒヒ!」」」」
戦闘班が倒しても倒しても減っている様子が見えないアンデッドたち。倒しても倒しても黒いモヤの漂う地面から湧き出してくる。
反対側もドラゴンが大暴れして減らしてるけれど前線を押し上げられていない。ヘルゲート・ガーディアンにまだ一撃も喰らわせられていないし。雑魚相手に押されてる現状……大分マズいと思う。
「こいつらどんだけ居るんだ!!」
「知るか!文句言う前に押し返せ!」
「呪い重過ぎ……持ってきた聖水持つかな?」
他のプレイヤーも雑魚敵の多さに戦意が削がれ始める者が出てきた。無限に思える程の雑魚敵……第3陣で始めた神官には重過ぎるか。
(獣系は人数は多いけど第3陣のプレイヤーが多いからね……)
クラゲ神との戦闘に参加してないプレイヤーも多い……あれに関しては私もうっかり巻き込まれた感じではあったけれど経験したおかげで絶望的な状況には慣れた。できれば慣れたくなかったけれど。
「マシロさんのあれはヘルゲート・ガーディアン用だし……こうなると作戦Bに移行かな?」
私がそう思っていると上空にパン!と青い花火が打ち上がった。あー、やっぱりそうなったか……私は溜め息を吐きつつ前線へ移動する。
作戦Aが防御力のある種族を壁としてその後ろから攻撃して数を減らす作戦。そして作戦Bは範囲攻撃や火力に優れた火、雷などの属性で一気に数を削る作戦。私も参加しなきゃなんだよね……後ろでサポートさせて欲しかった。
「レモン、アセロラ。燃料(MP回復薬)は沢山あるから……好きに暴れて良いよ」
「ビリリ!」
「メララ!」
私の言葉を聞いたレモンとアセロラがやる気を漲らせた。そして私はゴーレムたちの壁まで来ると隙間からレモンとアセロラに攻撃をさせる。
バリバリバリ!!
ゴォォォォォ!!
電撃と火炎がアンデッドたちを飲み込む。電撃はアンデッドに効果薄いように思えるけど、スペクターは雷で倒せるし肉のあるゾンビは動きを止められる。スケルトンは効果無いけれど炎で溶かされて消えていってる。
「倒しても呪いのモヤは残る……置き土産面倒だからルベリー吸い取って」
「ノロォ!」
私は残された黒いモヤをルベリーに吸引させる。黒いモヤはルベリーの身体に吸収されて消えていく……ついでに地面も白く変色している。あ、これ地面も呪われてたのか。しかも変色した地面からはアンデッドが湧き出してこない。
「あー……これモヤの後始末もしなきゃダメなのか。後始末しないと湧きを止められない」
攻略方法が間違っていたってこと……彼此20分は無駄にしてたのを分からされた気がする。でもおかげで少しゴーレムの隊列が前へと進みヘルゲート・ガーディアンへと近づけた。
あと試しにライムに地面を浄化して貰ったらこっちでも地面を塗り替えることができた。今までも聖水とかを振り撒いていたのに効果が出ていなかったのは、薄めて散布していたのとすぐアンデッドたちの呪いで塗り替えされてた感じっぽい。要するに陣地の取り合いで負けてた。
「この地面、強めの浄化じゃないと消せないのか……光属性のパートナーで消していけー!」
「陣地を塗り替えないとダメとか罠じゃない?」
「まぁ、早めに分かって良かったわ……無限湧き潰せるの大き過ぎる」
その後は広範囲攻撃でアンデッドを潰し、その間に地面を浄化して隊列を進める。湧ける範囲が減ったアンデッドたちの数は少しずつ減っていく……戦況が少しずつ好転していった。
(反対側も大丈夫そうだね……やっぱりドラゴンは強い)
あの元王族さんが絶対的な自信を持つ理由が分かる気がする……単体性能が高過ぎる。でも味方だととても心強い。
(リュカちゃんも活躍してるのかな?)
ここからだと姿が見えない。まぁ、ヘルゲート・ガーディアンまで辿り着けば見えるかな?そう思っている間も陣地戦は進んでいき……やっとヘルゲート・ガーディアンへと辿り着いた。
「…………」
地獄の門番は静かにこちらを見つめる。しかしその雰囲気は穏やかなものでは無く、ただただ冷たい殺意を放っていた……そしてその殺意が暴れ始め、ボス戦がようやく始まった。




