第156話
「植物の試練……の筈だよね?」
試練の場所に来た私は困惑で首を傾げた。部屋は直径20mくらいの円形の部屋、奥には既に出口と思われる大扉が見えている。いつもの説明が書かれた石碑も無いし……どういうこと?試練無し?
「とりあえず扉に向かおうか」
「プラァ……」
私はメロンの手を引いて扉へと向かった。そして部屋の中心辺りまで来た時、ガコン!と部屋が揺れて床が下がり始めた。
ゴゴゴ!
床はどんどん下がっていき50mくらい下がったところで止まった。その後、壁からズズっと足場が出てくる……今回はそういう感じか。
「と、石碑も出てきたね」
足場が出てき終えると試練の内容が書かれた石碑が床から出てくる。説明を確認すると私が思ってた感じの試練の内容だった。
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植物の試練
① 上へと登っていき大扉へ辿り着け
②最初の足場に足をかけた瞬間からスタートし、スタートと同時に毒の煙が発生する
③ 煙は下から発生し、時間経過と共に上へと上がっていく
④煙を吸い込むほど受けるダメージは増加していく
⑤大扉を通った時点でクリアとなる
※この空間では称号、装備、アイテムの効果が制限される
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要するに毒の煙を吸わないように上へと登って行けば良い。半分辺りで足を滑らせて落ちたら多分死ぬね……仮に生き残っても毒の煙で死ぬ。普段は装備のおかげで毒は無効にしてるから大丈夫だけど……今回も装備はただの服になってるしね。
(問題はメロンと一緒ってことかな……)
のんびり家のメロンと時間制限付きの試練……頑張って引っ張っていこう。私は既に船を漕ぎ始めているメロンの頬をミョイーン!と伸ばして意識を覚醒させる。まぁ、あんまり長持ちしないけど……
「上まで頑張るよ。メロン」
「プラァ……」
私はメロンの手を引き階段上の足場に乗った。それと同時にプシュー!と床から紫色の煙が吹き出し始めた。あれが毒の煙……思ってたより勢いが強いね。
「ちょっと急ぐよ」
「プ、プラァ……」
足元の毒煙に注意しつつ上へと登っていく。ただ下に突き落とすための罠とかは今のところは無さそう……壁から棒が突き出たりとか、足場が急に引っ込んだりとかね。
(それでも足場の大きさがバラバラで少し登りにくい)
歩幅がズレるからね。それに私1人なら兎も角……メロンと一緒だと中々に辛い。メロン、運動神経?が私のパートナーの中で1番低いからね。
「プ、プラァ……」
「メロン。辛いだろうけど頑張ろう」
まだ5分の1も登っていないのにグロッキー状態のメロンを支えるように私は足場を登っていく。メロンの方が身体が大きいから支えるのが難しい……
そうしている間も足元の毒煙はどんどん溜まり私たちへと向かってくる。ジワジワと焦らされる。
(これは……焦って足を滑らせないように気をつけないとだね)
それに追いつかれたとしても、少しなら吸い込んでもすぐには死なない筈。私はチラッと足元の充満していく紫色の煙を見つつ1段また1段と登る。
そうしてなんとか3分の2程まで登ることができた。ただ毒煙は既に足のすぐ下まで来ている……このままだと扉に着くまでに毒煙に飲み込まれるね。
「ゲホ!ゲホ!」
毒煙から漂う刺激臭に咳き込む。目もほんのり痛くなってきた……煙本体を吸ってないのにこれとはね。臭いだけでも毒になりそう。
(思っていたよりも難易度が高い。この漂う臭気も吸わない方がいいね)
私は袖で鼻と口を押さえながらも上へ上へと進んでいく。メロンは既に限界を超えていて一言も発しない。掴んでいる手も力が抜けそうになっているけど、離さないように力を更に入れて掴めば良い。
「あと少しだから……頑張って登るよ」
「…………プラァ……」
メロンに発破をかけつつ私は目の痛みに涙を浮かべながらも登っていく。涙のせいで視界が少しボヤける……拭いたいけど片手はメロンの手を、もう片方は鼻と口を押さえているので拭えない。
(瞬きを増やしてどうにかするしか……)
そう思いながら次の足場を踏もうとしたその時、涙のせいで距離感を誤ったのか足場に乗せた足が空を切った。そしてバランスを崩して毒煙が充満した穴の方へ身体が傾く。
「しまっ!?」
なんとかバランスを立て直そうとしたけれど、ここまで登ってきた疲労が溜まっていて素早く動けない。私の身体はもう1人では立て直せないほど傾いた。
(やば!落ちる!!)
しかもこのままだとメロンごと落ちる。ヘトヘトのメロンに私を引き上げることなんてできないだろうし……せめて一緒に落ちないように。
(初デスが毒煙を吸いながら転落……笑い話になるかな?)
逆にヤバすぎて顰蹙買うか。死に直面しているけれどゲームだからかネタみたいなことしか思い浮かばない。そうしてメロンの手を離そうとした……が、手が抜けそうになった時に逆にメロンにガシッと掴まれて引き上げられる。
「え、メロン?」
「プラァ……」
私がメロンを見ると、いつもの眠たげな目をカッ!と開けているメロンが居た。え、なにその表情……初めて見たんだけど。
「プ、プラァ……!!」
「わっ!?」
私が驚いているとメロンは雄叫びのような声を上げ、勢いよく足場を登って行った。私が逆に引っ張られるくらいで完全に覚醒していた。
「わわわ!?」
「プラァ……!」
覚醒したメロンは勢いそのままでゴールの大扉まで辿り着いた。そして電池が切れたかのように急に倒れた。ゴン!と音が鳴りそうな勢いで扉に頭をぶつけながら。扉はその衝撃で開いていく。
「ちょ!?大丈夫!!?」
「ZZZ……」
私がメロンの様子を確認すると完全に爆睡中。エネルギーを使い果たした?とりあえず中に入ろう……毒煙はまだまだ出ているからね。
「よいしょ……よいしょ……」
私は爆睡しているメロンをズルズルと引き摺って大扉の中へ。そして毒煙が入ってくる前に扉を閉めた。こうしてなんとか植物の試練をクリアすることができた。
「ZZZ……ZZZ……」
「無事にクリアできたけど……この後も大変だね」
扉の先は通路。この先に例の水晶があるんだろうけど……1人でメロンを運ぶの大変なんだよね。試練での疲労もあるし。
私がどうしようかと考えていると通路のおくから物音が聞こえてきた。目を凝らして見てみると通路の奥から木の根のようなものが伸びてきていて私とメロンを優しく掴んだ。そして伸びてきた方へと戻っていく。
「勝手に連れて行ってくれるの楽で良いね……そういえば水の試練でもそうだったっけ?」
よくよく思うと私、大体の試練でクリア後に気絶して気がついたら水晶の部屋にいることが多かった。今までの試練も気絶してて知らなかっただけでこういうシステムだったのかもね。その後、根に運ばれ続けた私は明るい空間に出た。そこは色々な花が咲いた空間で中央には水晶が浮かんでいる。水晶の横にはここの管理人の深緑色のスライムが居た。木の根はそのスライムの近くから伸びている。
「ユグ……」
木の根は私たちを水晶の近くに下ろすと床へ溶けるように消えていく。深緑色のスライムはミョーンと腕を伸ばすように身体を伸ばした。そうして身体を元に戻すと……
「ZZZ……」
「寝ちゃった」
私たちを気にすることなく寝てしまった。ま、マイペースだね……流石植物属性。
(とりあえず水晶触ろうか)
私はいつも通り水晶に触れた。これで7つ……残りは土、風、金属だね。
「さて後は帰るだけなんだけど……疲れたしメロンは爆睡してる。少し休ませてもらおう」
私は最後に頑張ってくれたメロンに膝枕して休憩した。拠点に帰ったのはクリアしてから1時間後経ってからだった。
植物の試練管理人
ユグドラシル・スライム
植物属性の中でも防衛力に優れたスライム
世界の何処かにある世界樹を守っているという御伽話に登場しており、攻撃能力は低いが守ることに関してはスライムの中でも最強格
基本的に寝ていることが多く、1週間で1時間しか活動しないことも多々あるのんびり屋




