第137話
階段を上り地下牢から無事に抜け出せた。地下牢は水路から侵入するプレイヤーの妨害で設置されていたのかな……
城の内部は珊瑚に海藻があちこちに貼り付き、豪華であっただろう城を侵食していた。
「ジュリリリリ!!」
そして城内を徘徊しているのは武器を持ったクラゲ人間。恐らく兵士が元……今まで出てきたクラゲ人間と比べて好戦的で動きのキレが良い。また、武器にビリビリと電撃を纏わせていてかなり厄介。クラゲ兵士って呼ぶべきだね。
「ビリリリ!」
「ジュリリリリ!」
電撃を操るからかレモンの放電の効きが悪い。武器や髪のような触手が何割か吸収してしまっている……
「戦闘慣れしている個体は持っている能力も強化されてるみたいだね……」
そして1番辛いのは……動きが読めないこと。理由は単純で人間の使う武術のような攻撃をしてくること。
このMEOで武器を扱えるのはゴブリン系や一部の種族。それ故に武器を持った相手との戦闘はあまり無い……そしてそれらのモンスターは野生的な動きで武器を扱ってくる。
第1回公式イベントで戦ったスケルトンにも武器を持っていた個体が居たけど、あいつらはただ振り回したりするだけだったし、聖水で弱らせられたからね。
(だけどこのクラゲ兵士は洗練された武術のような動きをしてくるんだよね)
武器を持った相手との戦闘経験があまり無い私たちにはかなり重い相手。とは言え1体だけなら対処できる。
「ヒヤァ」
「ジュリリ!?」
プルーンの凍結液がクラゲ兵士の足を止める。すぐさまクラゲ兵士は槍を叩きつけて氷を砕こうとするが、その隙を逃さずアセロラの火炎弾が胸を貫く。
「ジュリ……リ……」
胸に焼けた穴を作ったクラゲ兵士は光へと変わる。1体だけでも結構大変だね……でもここにはこいつ以外にも面倒な相手がいる。
「ジュリリ!」
「今度は神官か……」
次に現れたのは神官のような服を着て、手に錫杖を持ったクラゲ人間。こいつはクラゲ神官って呼んでる。ただ、やってくることは神官じゃない……
「ジュリリ!」
クラゲ神官は杖を振り上げると紫色の雷撃を放ってきた。こいつ神官服着てる癖に魔法使いみたいな攻撃をしてくる……あの雷は呪いも含んでいるようで厄介な代物。ルベリーが居たら良かったけど、雷に含まれてるせいで無傷では受けれない。
「ライムが居るから治療は容易いけど……ならない方が良いからね」
ちなみに呪いの効果は防御力低下と行動制限。範囲も広いし集団戦で出てきたら厄介どころの話じゃない……クラゲ兵士を倒しておいて良かった。
「あいつの杖も雷を吸収する……アセロラ、燃やして」
「メララ!」
バリバリ!と電撃を放ち続けるクラゲ神官にアセロラが火炎を放つ。クラゲ神官はそれに対して電撃を止めると結界のようなものを作り出して炎を防ぐ。守りも万全とか本当に面倒……初見ならね。
「1回見てるし……対処法も分かってるからね。スチン」
「ドロォ……」
アセロラの火炎放射が終わった瞬間、スチンが水を作り出して結界を覆う。ジュゥゥゥ……と音がすると結界がパリン!と割れた。
あの結界、急激な熱変化に弱いのか燃やしてから一気に冷やすと破壊できるんだよね。そして破壊した後は大きな隙ができる。
「メララ!」
「ジュリ……!」
結界が壊れた瞬間、アセロラの放った火炎弾がクラゲ神官の頭に穴を開けた。クラゲ神官は杖を落としてユラユラと後ろに数歩後退りして倒れた。
「なんか中盤から雷属性が使いにくくなってきたよね……」
「ビリリ……」
雷属性が効きにくい相手は久しぶりだしね……とは言えうちのアタッカー枠ってレモン、アセロラ、チェリモの3体ぐらいで、意外とバリュエーション無い。
(一応プルーンとレンシア、ドランはサブアタッカーになれるけども)
まぁ、スライムだとアタッカー枠になれる子少ないだろうけど……どちらかと言うとサポート寄りな種族だし。
「まぁ、無効化される訳では無いし……最悪、ドーピングすれば問題無い」
デメリット有りの薬もいくつか用意してあるしね。あんまり自分で使いたく無いんだけど……最後の手段としては使えるし。
「ジュリリ!」
「あっ、クラゲ兵士……相変わらず来るの早いな」
兵士は鍛えてるからなのか足早いんだよなぁ……そう思いつつもライムたちに指示を出して処理。その後もクラゲ兵士とクラゲ神官を倒しながら城を探索していった。
「それにしても広いね……あと何処に向かえば良いのか分からない」
変なルートで入ったからか若干迷子。とりあえず敵が出てくる方向に向かってるけど……こんなところで迷子とか嫌だなぁ。
「ブワァァァ!」
私がマップを見ながら当てもなく彷徨う中、聴きたくない鳴き声が聞こえてきた。声の方を見ると水道で見た自爆クラゲ……を5倍程の大きさにしたクラゲがフワフワと浮いていた。更にその周りには通常サイズの自爆クラゲが数匹浮いている。
「ブワァァァァ!」
「「「「プワァァァァ」」」」
大きい自爆クラゲの鳴き声に呼応するように自爆クラゲたちがこちらに向かってくる。その身体は自爆すると示すように点滅していく。
「レモン。放電!」
「ビリリリリ!!」
向かってくる自爆クラゲたちに向け制圧放電。自爆クラゲたちは雷に対して耐性を持ってないから、こちらに来る前に各自爆発して散っていった。
「自爆複数とか殺意高過ぎ……」
1匹でも撃ち漏らせば致命傷。あの大きなクラゲは指揮官的な個体なのかな……そう思いながら残った大きな自爆クラゲを見ると。
「ブワァァァァ!」
「「「「プワァァァァ!」」」」
自分の身体から新たな自爆クラゲを生み出していた。あー、指揮官どころかこいつ自爆クラゲを生み出せるのか。
「クラゲ兵士やクラゲ神官以上に厄介だね!」
下手したら自爆クラゲ無限湧き……あの母体クラゲをさっさと始末しなきゃ。幸い、自爆クラゲを生み出している時は隙がある……そこを突く。
「「「「プワァァァァ!」」」」
「ビリリリリ!」
「メララララ!」
生まれて早々に自爆しに向かってくる自爆クラゲたちを放電と火炎放射が襲う。自爆クラゲたちが一掃されると母体クラゲは新たに自爆クラゲを生み出そうとしたが、その瞬間にプルーンが氷の槍を投擲する。
「ブワァァ……」
凍結状態となった母体クラゲは浮力を失ったように地面へと落ちていく。それでも自爆クラゲを生み出そうとしていたが、アセロラの火炎弾が撃ち込まれトドメを刺された。そして母体クラゲは盛大に爆発しながら散っていく。
「やっぱり爆発したね……しかもかなりの高威力で」
あれは近接でトドメを刺そうものなら確実に道連れになるね。やっぱり自爆クラゲは遠距離安定……
「と、なんか聞こえる……爆発音?」
私が母体クラゲを倒して溜め息を吐こうと思ったら、何処かから爆発音が聞こえてきた。近くに私以外のプレイヤーが居るのかな?と思っていると爆発音は少しずつ近づいてくる。それと一緒にプレイヤーの悲鳴も聞こえてきた……それも聞いたことがある声が。
「こ、こんなに沢山は処理しきれないよ〜!」
「はぁ……はぁ……足が死にそうです。げ、限界……」
「誰か〜!助けて〜!!」
そして悲鳴の主が爆発の煙と共に目の前のの通路を横切って行った……それはチェリーとミリアちゃんで後ろからは母体クラゲと自爆クラゲたちが付いて来ていた。
「なんであの2人がこんなところに……って、助けないと」
特にミリアちゃん。息切れしかけてフラフラしてたからね。私はライムたちを連れて2人の救援に向かった。




