第110話
「ビリリリリ!」
「いいよレモン。その調子でガンガンいこう」
光の試練をクリアした翌日、私はレモンの進化を目指して大砂丘に来ていた。光の試練……多分、属性的に弱い部類の光であの難易度ってことは、強い雷や火は相当な難易度なはず。
第4進化を迎えていたライムでもギリギリだったし。仲間にした順で試練に行くなら次はレモンの番だからね。
「イベントまで時間もないし……とりあえずレモンとドランの進化を目指そう」
経験値の調整もあるため編成はライム、レモン、スチン、レンシア、ドラン。あと今回はこの大砂丘の攻略も視野に入れてる……そろそろ新しい町に行きたいからね。ある程度は自分で地図埋めてたんだけど、百鬼夜行の人から薬と引き換えにマップデータを貰った。この広大なマップを1人で攻略はキツい……広いし面倒。
(ナギに頼むのもありだったけど……借りが増えすぎるのもね)
ちなみにアーカイブから買うのもありだったけど……あそこに顔を出すと根掘り葉掘りスライムのこと聞かれそうで面倒臭い。スライムのこと聞かれても、自分でもよく分かってない部分多いし。神殿関係は話せないことも多いから……
「えーと、今度はこっちに進むのね」
私は貰ったマップデータと方位磁石を見て進んでいく。大砂丘は最短距離を真っ直ぐ突っ切ることはできない……間に大きな砂の丘や流砂、サンドワームの群生地やアントライオンの巣穴だらけの場所がある。なので突っ切るよりは多少回り道をして進む方が良い。
「「「ピルルルルル!」」」
「「「キュイイイイ!」」」
進んでいく道中、サンドワームにアースラプトルの群れが襲いかかってくる。まぁ、こいつらはもう雑魚だけど。
「スナァァァ……」
寄ってきたモンスターたちはレンシアによって動きを止められる。そして今回は更におまけが付いている。
「メタァ……」
ドランの能力《磁力操作》により、砂に含まれている砂鉄同士が引き付け合う。それにより砂はより強く固くモンスターたちを絞めつけていった。
「ドランの能力、使い方が多いよね」
《磁力操作》と《温度操作》。両方とも使い方が多くて器用さを求められる……《磁力操作》もさっきのように砂鉄を引き寄せ強化する以外に、砂鉄を反発させ合い拘束を緩める使い方もある。ドランはうちの子の中で最も手札の多い子と言える……故に経験を積ませることが大事になる。
(結構練習はさせてきたからね……あとは実戦で活かせるか)
ドランの進化先がどうなるか……この実戦経験で変わりそうだからね。それはそうと……
「スチン。しばらく仕事無いだろうけど……いつでも動けるようにね」
「ドロォ……」
大砂丘。タンクの仕事無いんだよね……レンシアの拘束で大体片がつくし。砂で壁も作れるからね。それでもスチンを連れてきたのは理由がある。
その後もモンスターたちにちょくちょく絡まれつつも順調に進んでいく。いくつかの安全地帯を経由し、私たちは建物の残骸が転がる場所……ボスの居る場所に辿り着いた。
ズズズ……ザバ!!
「ザラァァァァァ……!」
ボスエリアに立ち入るな否や砂が盛り上がっていき、瓦礫と砂で構成されたトカゲのような外見の化け物が現れる。こいつが惑わしの大砂丘のボス、ロストルーイン・サンドビースト。
「ザラァァァァァ……!」
サンドビーストは咆哮と共に口から砂のブレスを放ってくる。ブレスには砂の他に細かい瓦礫が混ざっていて殺意が高い。
「スナァ……!」
ブレスに対しレンシアが砂をドームのような砂の壁で防御する。ドランが更に《磁力操作》で砂の壁を強化し、瓦礫混じりの砂のブレスを全て受け切った。念の為、スチンの盾も用意したけど大丈夫だったね。
「ザラァァァァァ……!!」
砂のブレスを守り切られたサンドビーストは今度は腕を大きくして叩きつけてきた。しかし予備動作が遅くて全員無事に回避。攻撃後の隙を狙ってレモンが電撃を浴びせるけれど……サンドビーストは痛がることも怯むことも無い。
「情報通りか……先に聞いておいて良かったね」
サンドビースト……こいつは条件を満たさないとダメージを与えることができない。百鬼夜行も最初の挑戦では苦戦を強いられたそう。そしてその条件とは。
「スチン。お願い!」
「ドロォ……」
私の合図を聞きスチンがサンドビーストに向けて水を放つ。そう、こいつにダメージを与える条件は水を浴びせること。水を浴びさせ砂を固めることでダメージを入れられる。
「ビリリリリ!」
「スナァ……!」
「ザラァァァァァ……!!」
水をかけられ固まった部分をレモンとレンシアの攻撃が襲う。水に濡れたことで相性的に不利な筈の電撃でもかなりダメージが入っている……これなら押し切れそう。
「ザラァァァァァ……!!」
サンドビーストは攻撃を受けながらも、抵抗するように腕を振り、瓦礫混じりの砂のブレスを撒き散らす。
しかしその抵抗もスチンやレンシアの守りを越えることはなく。物理攻撃は大振りで回避も容易い。
(無敵ギミックに振り過ぎて攻撃面は抑えられてるのかな?)
無敵で攻撃力高いは難易度が高いだろうし。私はそんなことを思いつつ、ドランを抱えながら指示を出していく。そしてこの戦闘はドランにかなり経験を積ませられた。
「メタァ……」
「ザラァァァ……!?」
《磁力操作》による反発で腕の砂をバラバラに、《温度操作》で染み込んだ水を冷やし蒸発を遅らせる。地味だけど戦闘に貢献し、ボスの弱体化をしている。サンドビーストも突然砂がバラバラになったり、水が蒸発しないことで戸惑っている様子。その間にもレモンたちの攻撃が叩き込まれていった。
「ビリリリリ!」
「スナァ……!」
「ザ、ザラァァァァァ……」
その後、しばらくして攻撃に耐えきれなくなったサンドビーストは粉々に砕け散り光へと変わった。この戦い、スチンとドランのおかげで楽に戦えたね。
『個体名:ドランのlvが一定値に達しました。進化が可能となりました』
おっ、ドランが進化できるようになった……だけど進化は後にしよう。ここ暑いんだもん……装備の暑さ耐性でマシにはなってるけど、プルーン居ないから長く居たくはない。
「進化は次の街でやろう」
私はライムたちを引き連れて新しい町へと向かった。




